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税理士法人 今井会計事務所

2017年から始める不況対策  2016.09.29

1.景気後退の準備を始める年

 

 「現在の好景気」 と言うと ・・・
 多くの経営者の方から、お叱りを受けるかもしれません。

 しかし、2008 年のリーマン・ショック後、2012 年までの期間より、はるかにマシ な状況です。
 特に雇用については、素晴らしい結果が出ています。

 

 これが アベノミクス効果であることは、疑う余地がありません。
 アベノミクスの 「第一の矢」 の仕組みについては、2013 年の景気対策 で述べました。
 前政権と前日銀総裁の最悪コンビがまねいた、最悪の事態を改善したのは、このアベノミクスです。
 アベノミクスの中心は、安部総理と黒田日銀総裁、ブレーンの浜田宏一教授などの方々でしょう。

 

 しかしアベノミクスの効果が、もっと現れなければ、景気は下降に向かいます。
 前述の最悪コンビが、もっと早く辞めていれば、ここまで苦しむこともなかったはずですが。
 好景気は東京オリンピックが開催される 2020 年まで、と言われています。
 2017 年は、それを前提に経営を進めるべき ではないでしょうか。

 

 

2.予測されていたリーマン・ショック

 

 2008 年 9 月 15 日に起きたリーマン・ショック。
 実は、この 2 ヶ月前に、その情報を手に入れることができました。

 書店で、偶然、手にした 副島隆彦著連鎖する世界恐慌 に、書かれていたからです。
 早速、8 月 15 日に、米ドル建て生命保険を、1 ドル 110 円で解約しました。

 

 信じる決め手になったのは、会社法に関する記述。
 会社法に限らず、グローバル化の本質は、米国のルール押しつけです。

 その中で、三角合併だけが、なぜか 1 年遅れ になっていました。
 職業柄、会社法 (旧商法) に関わるので、不思議に思っていました。

 

 本書によれば、この法律は 「米国金融機関による、日本金融機関乗っ取りのため」 だったそうです。
 トヨタ主導の経団連が、この施行を 1 年遅らせたとか。
 さらに、リチャード・クー著日本経済を襲う二つの波」 にも、サブプライムローンに関するリスクが書かれていました。
 これらの情報のおかげで、リーマンショック以後の経済変動を、冷静に傍観することができました。

 

 

3.景気後退の時期が読めない時代

 

 リーマン・ショック前と比較すると ・・・
 良い点は、政府と日銀がしっかりしていること。

 悪い点は、以前と比べて、世界経済が複雑化 していることです。
 リーマン・ショックは、低所得者向けの住宅ローン、サブプライムが主な原因でした。

 

 しかし、現在、不安視されているのは、中国経済、欧州経済、中東・アフリカ情勢など。
 いつ、どこから、どんな経済変動が始まるのか、ほぼ予測が不可能な状況です。
 このような時に、企業のリーダーは、どうすればよいのでしょうか。
 それは、「いつか確実に起きる」 という前提で、行動する ことです。

 

 世界的な名著、ジム・コリンズ著ビジョナリーカンパニー ④ 自分の意志で偉大になる」。 
 本書のテーマは、厳しい経営環境において、偉大な業績を残した企業のリーダーの共通点 です。
 その第 5 章 「死線を避けるリーダーシップ」 に取るべき行動が書かれています。
 非常に正しいことが書かれています。

 

 

4.資金さえあれば、企業は生き続ける

 

 それでは偉大な経営者たちは、どのような姿勢で過ごすのでしょうか。
 ① 未来を予測することは、不可能と認識している
 ② 突如として悪い出来事が、次々と発生し、いつ飲み込まれるかわからない
 このようなことを前提に、平常時から過ごしています。

 

 それでは事前にどんな行動を起こすべきでしょうか。
 ① 資金繰り悪化に備えて、手元資金を十分すぎるほど蓄えておく
 ② 手元資金は通常企業の 3 〜 10 倍、多く
 ③ 「資産を運用していない」 などの批判は無視する

 

 長期借入によって、お金を借りて、これを普通預金として残しておく。
 これによって資金繰りにも余裕ができますが、財務諸表分析上、流動性比率が高まります。
 金融機関から見て、好ましい財務諸表になります。
 不安定な時期は、安全を最優先させるために、微々たる運用益には囚われないことです。

 

 

5.身近なリスクへの備え方

 

 偉大な経営者たちは、未来のリスクに対して、まったく無関心な訳ではありません。
 身近なリスクであれば、事前に察知することが可能 です。
 私でさえ、リーマン・ショックを 2 ヶ月前に知りえたように。
 方法をマスターすれば、被害を最小に抑えることも可能です。

 

 具体的な方法としては、ズームアウトとズームインと言う言葉で、説明されています。
 ズームアウトとは、少し離れた位置から、客観的に状況を分析する。
 ズームインとは、リスクに対して準備したことを、実際に行動に移す。

 この ズームアウトと、ズームインを繰り返します。

 

 またリスクを 3 つに区分します。
 それぞれのリスクによって、対応は異なります。

 さらに、自動車運転で習う 「認知」 「判断」 「操作」 のように、必要なスピードと結果を分析 します。
 詳しくは、本書をご一読下さい。

 

 

6.事業規模拡大は慎重に

 

 最も避けるべきこと。
 それは、その時点の業績が、長期間、続くという思い込み です。
 この思い込みによって、事業を拡大させたものの、やがて景気は失速。
 これが原因で、多くの企業が経営危機を迎えます。

 

 バブル崩壊の前には、必ずバブルがあるように ・・・
 不景気の前には、必ず好景気があります。

 好景気が長く続くことを前提に、事業規模を拡大すると、倒産危機が高まります。
 これは、お決まりのパターンなので、学習すべきでしょう。

 

 事業規模拡大のうち、特に慎重を期すべきは ・・・
 ① 大型の設備投資

 ② 店舗の拡大・人員の増加
 ③ 新規事業への参入など

 

 

7.「良い結果をまねく行動」 と 「悪い結果をまねく行動

 

 本書には結果を分ける行動が列挙されています。

 

 ■  良い結果をまねく行動
 ① 警戒心が強く、常に変化に注意して、早期に脅威を認識する
 ② 闇雲に急がず、必要に応じたスピードで判断を下す
 ③ 用心深く事実に基づいて判断、規律に従って考える
 ④ いったん決断したら、妥協せず完璧に行動する

 

 ■ 悪い結果をまねく行動
 ① リスクに無関心・過小評価するため、脅威の認識が遅れる
 ② リスクではなく、自分のペースで動くので、遅すぎたり早すぎたり
 ③ 衝動的に判断するため、規律もなく、過剰反応になる
 ④ あわてるため、完璧な行動を取ることができない

 

 

8.「不安」 ではなく 「事実」 に基づいて行動する

 

 心配性の人の中には、常に 「対策は早いほどよい」 と、考える人がいます。
 何も起きていないのに、不安から逃れるために、行動してしまう 人もいます。
 また不安を打ち消すために、リスクを否定して、寸前になっても動かない人もいます。
 何れも、リスクではなく、自分の不安に動かされています。

 

 「不安」 とは心の中に発生する妄想の一種ではないでしょうか。
 妄想に基づいて行動すれば、失敗は目に見えています。

 だから、判断は 「不安」 ではなく、「事実」 に基づく べき。
 この習慣を身につけたいものです。

 

 もし不安が大きな時は、どうすればよいのでしょうか。
 それは、最悪の事態を想定することです。
 すると大したことではないことがわかります。
 人間が不安を抱く原因は無知 (知らないこと) だと、哲学者カントも述べていました。

 

 

9.平常時に緊急時の準備をする

 

 偉大なリーダーは、驚くほど心配性 なのだそうです。
 たとえば、ビル・ゲイツ。
 1987 年、IBM 社からパソコンの OS 供給を打診されました。
 当時は OS / 2 が業界標準になると、予測されていました。

 

 しかしゲイツは、不安でたまりません。
 もし OS / 2 の開発に すべてをかけて、異なる結果が出たとしたら、当社は ・・・
 ありとあらゆるリスクを想定して、ひそかにウィンドウズの開発も続けました。
 その後、事態が大きく変わり、大成功に終わったのが、ウィンドウズ 3.0 です。

 

 このように、あらゆるリスクを想定すること。
 どちらに転んでも、大けがを負わないように、対策を練っておくこと。
 どのリスクが発生したら、どんな行動を取るべきか計画を立て、発生したら果断に実行します。
 余裕のある平常時こそ、リスクの準備が大切です。

 

 

10.2017 年から始める不況対策

 

 2017年に入ると ・・・
 景気のピークと予想される 2020 年まで、残り 3 年になります。

 そろそろ、今の景気の終わり、次の不況の訪れに、警戒し始めるべき時期 です。
 2020 年まで攻めるにしても、その後の撤退を忘れないように。

 

 ま資金集めを、始める時期 でもあります。
 目標の資金量は、同レベルの企業の 3 〜 10 倍。
 微々たる利回りに惑わされることなく、貯蓄しましょう。
 もちろん、主たる事業では、コストダウンと生産性向上を進めます。

 

 もし不況の予想が外れれば、儲けモノと考えましょう。
 アベノミクスを続けると、国の借金が増えます。
 もしそれに見合う経済回復が見込めなければ、この政策は終わる可能性があります。

 そろそろ次の不況を、警戒したい ものです。
 

 

 ※参考文献

  ジム・コリンズ著 ビジョナリーカンパニー④自分の意志で偉大になる

偉大な企業が実践した「飛躍の法則」  2016.09.22

1.自分の可能性を否定しているのは自分自身

 

 私は 50 代半ばの人間です。
 若い人たちに伝えておきたいアドバイスは何か。
 もし、このような質問を受ければ、次のように答えます。

 「自分の可能性を否定しているのは、実は自分自身であることに気づいて欲しい」  と。

 

 これは自らの人生に対する反省でもあります。
 もちろん、誰もがスーパーマンになれる訳ではありません。

 しかし 自分の可能性を否定することなく、目標に対して努力を続けた方が、よりよい人生が高い確率で実現 します。
 20 代後半、この事実に気づいて以来、まずまずの成果に恵まれたと思います。

 

 これはこれでよかったのですが ・・・
 つい最近、これだけでは足りないことに気づきました。
 「もっと早く気づけばよかった」 という後悔と、「気づくのに遅すぎることはない」 という言い訳。
 30 年経ちましたが、人間の本質は変わらないようです。

 

 

2.短い人生、「日常的な成長」 だけでは遅すぎる

 

 私は年間 100 冊程度、ビジネス書を購入します。
 直ちにすべて読む訳ではなく、将来、読む可能性があるものまで購入し、書棚にストック しておきます。
 今回も、ある日、突然、読みたいという衝動にかられ、書棚を確認しました。
 それは世界的名著 「ビジョナリーカンパニー」 シリーズです

 

 全部で 4 部作。
 レビューを確認すると、「 ② ④ ① ③」 の順に、評判がよい。

 また 「① から順に読まなくてもよい」 と、書かれていました。
 ④ だけ足りないので、閉店前の大型書店へ、早速、駆け込みました。

 

 私は人生に必要な成長を、2 つに分けて、考えています。
 1 つ目は、経験から学ぶ「日常的な成長」で、日常生活などから得られます。
 2 つ目は、知識や歴史などから学ぶ 「飛躍的な成長」 で、賢人の著書などから得られます。

 「日常的な成長」 だけでは遅いので、「飛躍的な成長」 も求めて、本の多読を習慣としています。

 

 

3.善良な会社ほど偉大にならなければいけない

 

 翌朝から ジェームス・C・コリンズ著 「ビジョナリーカンパニー ②(飛躍の法則) の読書を開始。
  第1章のタイトルは「時代を超えた成功の法則」。
 次に内容。

 そこに 30 年ぶりに、大きな反省をうながす言葉がありました。

 

 それは ・・・
 良好 (good) は偉大 (great) の最大の敵。
 「そこそこよい」 で満足してしまうから、「もっと上の偉大」 を目指す気になれない。
 まさにこれまでの自分そのものでした。

 

 ここで誤解していただきたくないのは ・・・
 自分の欲望を実現させるために、偉大を目指すのであれば、社会に害を為すので、やめるべきです。

 しかし 自社の方向性が、社会貢献につながるものであれば、偉大な存在を目指すべき でしょう。
 この 2 つの違いは、明確に区分されるべきです。

 

 

4.成功や成長を決めるもの

 

 50 代になって、わかったことがあります。
 「仕事の成功」 や 「人間的な成長」 に関して、20 代前半で止まる人もいれば、亡くなる直前まで進む人もいます。
 根本的な原因はどこにあるのかと推定してみると ・・・

 「志 (こころざし) の大きさ」 ではないでしょうか。

 

 志の大きな人ほど ・・・
 仕事でより大きく成功することができ、人間的により大きく成長することもできます。
 つまり 「自分の可能性を自分で否定することなく、自分の可能性を信じ続けた人」 と言えます。

 そこで  陥りやすい落とし穴が、「良好 (good) 」 です。

 

 このレベルに甘んじる日本人は少なくないのですが、「自分の可能性を自分で否定している」 の中年版と言えます。
 志を大きくするためには、「生きる目的」 や 「仕事の目的」、つまり理想を成長させること。
 次に理想と現実を比較すれば、今の自分に足りない部分が、浮かび上がってきます。

 このままではまずい ・・・ この思いが強ければ強いいほど、再び立ち上がる原動力になる のではないでしょうか。

 

 

5.偉大な会社になる方法

 

 筆者は次のように述べています。
  ほとんどの組織が、この調査から導き出された 「枠組み」 を適用 して、努力を続ければ ・・・
 地位と実績を大幅に向上させることができるし、おそらくは偉大な組織になることすらできる。
  それでは手順に進みましょう。

 

 ① 第 5 水準のリーダーシップ
 ② 最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
 ③ 厳しい現実を直視する
 ④ 針鼠 (はりねずみ) の概念
 ⑤ 規律の文化
 ⑥ 促進剤としての技術

 

 まとめると・・・
 ① と ② は 規律ある 「人材」、③ と ④ は 規律ある 「考え」、⑤ と ⑥ は 規律ある 「行動」。
  つまり 「良好」 と 「偉大」 の間には、「規律」 というハードルがあるようです。
 また、規律ある 「人材」 を集めるのが準備、「考え」 によって飛躍し、「行動」 で偉大を実現させるそうです。

 

 

6.第5水準のリーダーシップ

 

 特徴としては ・・・
 万事に控えめ、物静か、内気、恥ずかしがり屋。
  反対にダメな人の特徴は ・・・
  派手、マスコミ好き、有名人。

 

 あの世界のトヨタでさえ、経団連の会長は1994年の豊田章一郎さんが初めてで、事業に専念していました。
 またプロ野球、DeNA 球団のラミレスさんは、監督就任後は地味な仕事に徹して、チームの成績を上げました。
 反対に仕事そっちのけで、派手な活動をする社長さんはどうでしょうか?

 自分個人と、組織全体、何れを重視するのかで、判断すればよさそうです。

 

 第 5 水準のリーダーシップの本質にあるのは ・・・
 「個人としての謙虚さ」 と 「職業人としての意思の強さ」 という、一見、矛盾した組み合わせ なのだそうです。
 謙虚さは 「驚くほどの勤勉さ」 、意思の強さは 「成功まであきらめない姿勢」 として表れます。
 最初から、いきなり大変な要件を、突き付けらました。

 

 

7.最初に人を選び、その後に目標を決める

 

 私たちは最初に目標を決めた後、その目標を実現させるために必要な人を集めます。
 しかし偉大なリーダーたちは、まず人を選びます。
 本書では 「バスに乗せる」 という表現を用いています。

 バスに必要な人を乗せて、バスから不要な人を降ろす。

 

 手順は 「人を選ぶ → 適材適所に配置 → 新しいビジョンと戦略を設定する」。
 よい人材を確保しておけば、勝手によいビジョンを生み出します。
 経営者はそれに従い、形にしていくのが、仕事と言えます。
 また規律のある人を雇えば、利益を生まない管理コストも、大幅に減少します。

 

 職種、職場に合わない人を育てる、という発想ではありません。
 それは公的機関の仕事だというのが、諸外国の方針です。
 しかし資金に余裕もなく、ブランド力もない中小企業にとっては、難しい課題に思えます。

 ただし 人を見る目を養えば、意外に多い のだそうです。

 

 

8.厳しい現実を直視するが、勝利への確信は失わない 

 

 厳しい困難に遭った時、必要なことは ・・・
 ① 現実を直視すること。
 ② 最後には必ず勝つという強い確信を持ち続けること。
 この2つなのだそうです。

 

 反対に やってはいけないこと が、ビジョナリーカンパニー ③ 衰退の 5 段階 で述べられています。

 

  ① 成功して高慢になり、過去の成功要因を見失う
  ② 更なる成功を求めて、規律のない拡大路線に走る
  ③ リスクに対して鈍感になり、議論しなくなる
  ④ 地道な努力を避けて、一発逆転を追求する
  ⑤ 大幅な衰退、会社の身売り、倒産などを迎える

 

 困難に直面して、開き直る人もいますが、現実逃避にならないように、注意したいものです。
   実は 偉大な人物は、驚くほどの心配性で、このシリーズでは 「建設的パラノイア」 と呼ばれています。
  ビジョナリーカンパニー④自分の意志で偉大になるの中で、代表的な人物としてビル・ゲイツが紹介されています。
 困難と対峙 (たいじ) すれば、 それなりの成長を果たせるものです。

 

 

9.針鼠 (はりねずみ) の概念

 

 世間には 「針鼠型」 の人と 「狐型」 の人がいる。
 もし賢い狐に、何度、襲われても、冴えない針鼠は身を丸めるだけで、難を免れる。

 つまり、たくさんのことを知る狐は、肝心要の 1 点しか知らない針鼠に、勝つことができない。
 これはギリシャの寓話に基づいたものなのだそうです。

 

 肝心要なこととは、下記の3つの要件をすべて満たすことなのだそうです。
 ① 「情熱」 をもって取り組めるもの  ② 自社が 「世界一」 になれるもの  ③ 「経済的原動力」 になるもの
 「世界一」 とは、読んで字のごとしではありません。
 「ある地域の顧客に対するサービスなら世界一」 でもよいと考えられます。

 

 肝心要な仕事とは 「やり甲斐のあること」 「世界一になれること」 であり、「儲かること」 でなければいけません。
 ここを目指すのが、最も報われる努力の方向性です。                                                

 偉大なリーダーは、驚くほど単純明快に、この部分のみを追い求めます。
 逆に成果に乏しいリーダーは、他のことが気になって仕方がないようです。

 

 

10.規律の文化

 

 「規律を守れ」 ではなく、規律が文化と言えるレベルまで、高める必要があります。
  規律とは、強制されるものではなく、すでにその人に備わっているケースがほとんどです。

 だから 最も確実な方法は、規律に厳しい人を雇い入れる こと。
 規律があると不要になるものとして、下記の 3 つが挙げられています。

 

 ①階層組織   ②官僚組織  ③過剰な管理 
  階層ができると組織が不透明化し、正しい情報が伝わりにくくなります。
 官僚的組織になると、形式主義がはびこり、生産性が落ちます。
 またどんな状況でも規律を守るため、過剰な管理が必要なくなります。

 

 このシリーズでは、二律背反の克服 (相反する矛盾を同時に満たすこと) を重視しています。
 これは 「AND」 と呼ばれています。

 偉大な業績を達成するためには、相反する 「規律の文化」 と 「起業家精神」 の両立。
 上記 8 では 「厳しい現実の直視」 と 「継続的な勝利への確信」 の両立でした。

 

 

11.促進剤としての技術

 

 何かが流行ると、すぐに飛びつく人がいます。
 その理由は 「取り残されるかもしれない」 という恐怖感 からなのだそうです。
  もちろん内容を深く理解した訳でもありません。
 当社の事業に本当に必要かどうかも、検討した訳ではありません。

 

 偉大な企業は新技術に対して、どのようなつき合い方をしているのでしょうか。
  変化を起こす主要な手段としては使っておらず、無視することもしばしば。
 ただし、選ぶ場合は、本当に必要なのか、慎重に検討を重ねます。

 もし採用することになれば、その技術に関しては、先駆者としてフル活用しているそうです。

 

 これ以外に、「弾み車 (はずみぐるま) 」 という概念があります。
 手で押して動かす、大きなリヤカーみたいなものでしょうか。
 偉大な指導者は、ゆっくり弾み車を押すように、着実に進むそうです。

 逆に一発逆転などの行動を好む傾向にあると、成功は短命に終わるそうです。

 

 

12.偉大な企業とは何か?

 

 偉大な企業とは、ある時点を境に 15 年 以上、株式の平均運用成績が市場の 6.9倍以上。
 その条件を満たすのは、フォーチュン誌に登場した、米国大企業 500 社のうち 11 社。
 この調査には、多くの人の手により、延べ 1 万 5 千時間かかったそうです。

 さらに ビジョナリーカンパニー②(飛躍の法則)だけで、世界 400 万部を売り上げたとか。

 

 経営者を、長年、続けていると、必ず、中だるみが訪れます。
 成長を怠る期間が長引くと、時代の変化に気づかず、経営危機を迎えます。
 どうすれば、緊張感を取り戻すことができるのでしょうか。

 旺盛な意欲を復活させるためには、明確な動機と方法が必要 です。

 

 このビジョナリーカンパニーシリーズは、その助けになりそうです。
 実は、まだ ③ の大部分と ① の全部に、目を通していません。
 今回は簡単にご紹介しましたが、この本は希な名著と思います。
 皆様にも、ぜひ、ご一読をお勧めします。
 

 

 ※参考文献

  ジェームス・C・コリンズ著 ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則」 「ビジョナリーカンパニー③衰退の五段階

   ジム・コリンズ著 ビジョナリーカンパニー④自分の意志で偉大になる

コミュニケーションとマーケティング  2016.07.03

1.コミュニケーション力の重要性

 

 近年、コミュニケーション力の重要性を、つくづく感じるようになりました。
  その理由は、個人の自由と、関係がありそうです。

 古い社会では、多くの人が、同じような価値観を、持っていました。
 だから、以心伝心、言葉が足らなくても、コミュニケーションが成立しました。

 

 しかし近年は自由社会になり、人々が様々な価値観を持つ ようになりました。
 1 つの出来事に対して、異なるとらえ方をするのが、当たり前になりました。
 おかげで、相手に伝えることが、難しくなりました。
 正しく伝えるためには、コミュニケーション力が、求められるようになりました。 

 

 コミュニケーション力は、他人と関わるあらゆるシーンで、求められます。
 だから、コミュニケーション力が高まれば、人生の多くの部分で、改善が見られるはずです。
  逆に、コミュニケーション力が足りないと、人生の多くの部分で、成果が得られにくいはずです。

 コミュニケーション力の有無は、人生を大きく左右する のではないでしょうか。

 

 

2.コミュニケーションは、どこからスタートするのか ?

 

 P.F.ドラッカー著仕事の哲学 は、名言集の1つ。
 第 9 章は、コミュニケーションがテーマです。
 そこにはコミュニケーションの本質が、端的に述べられています。

 まずは、① コミュニケーションは、どこからスタートするのか ?

 

 それは、話し手が 「受け手に対して何かを要求する」 ことから、スタート します。
  小売店で店員が顧客に声をかけるのは、店員が 「顧客に商品を買って欲しい」 から。
 小売店で顧客が店員に声をかけるのは、顧客が 「店員に商品の説明をして欲しい」 から。
 これらの要求から、スタートします。

 

 しかし、何れかが、話しかけただけでは、コミュニケーションは成立しません。
  単に 「言葉を発しただけ」 と、言えます。
 さらに、話し手と受け手の間で、会話が続いたとしても、それだけでは、コミュニケーションに成功したとは、言えません。
 単に 「話をしただけ」 と、言えます。

 

 

3.コミュニケーションの成功は、誰が決めるのか?

 

 それでは、何をもって 「コミュニケーションの成功」 と、言えるのでしょうか。
 それは、「話し手の要求を、聞き手が満たしたこと」 による のではないでしょうか。
 つまり、話し手側から見て、自分の要求が、実現したこと。
 それでは、ここで、馬鹿げた質問ですが、② コミュニケーションの成否を決めるのは、誰でしょうか。

 

 もちろん、それは、聞き手です。
 話し手が、いくら要求しても、結果は受け手で決まります。
 受け手が聞かなければ、コミュニケーションは成立しません。
 受け手が理解していなければ、コミュニケーションは成功しません。

 

 ここに最も重要なコミュニケーションの本質があります。
 この部分がわかっていないと、一方通行で終わります。
  重複して、恐縮ですが ・・・

 コミュニケーションの成否は、受け手によって決まります。

 

 

4.コミュニケーションに主体性を持つ

 

 ここまでの内容を、まとめると ・・・
 ① コミュニケーションは、話し手の要求から、スタートします。
 ② しかし、コミュニケーションの成否は、受け手で決まります。

 話し手の立場から見ると、自分の意思に関係なく、結果は受け手次第 です。

 

 このままでは、よほど幸運に恵まれない限り、自分の要求は実現しません。
 運まかせの人生から、抜け出すためには、どうすればよいのでしょうか。
 それは 「主体性を持つ」 ことです。
  つまり、コミュニケーションの成功率を高めるために、自ら改善を目指すことです。

 

 主体性を発揮して、自ら人生を改善したいとき ・・・
  採るべき方法は、人それぞれです。

 重要なことは、自分が得意とする方法を、人生の早い段階で見つけておくこと。
 さらに、人生経験を重ねながら、その技術を高めていくことでしょう。

 

 

5.受け手に合った 「言葉」 を使う

 

 人生を改善したいとき、私は、賢人の知恵を利用します
 コミュニケーションを成功させるために、賢人なら、何をすべきと、考えるのでしょうか。

 まずは、「受け手に合った言葉を使うこと」 と、ドラッカーは述べています。
 たとえとして、「大工と話すときは、大工の言葉を使え」 という、ソクラテスの説。

 

 いつの時代だったか、茶髪の新入社員が、問題になったことがあります。
 通常、企業に就職すれば、その企業の顧客に合わせなければいけません。
 多数の顧客が、好ましいと感じる格好をする べきです。
 しかし、茶髪がよいと感じていたのは、同じ考え方をする、若者たちだけでした。

 

 自分の言葉や外見などを、相手の好みに合わせる。  これが 「コミュニケーションの基本」 ではないでしょうか。
 もし、わからなければ、無難なものを選択する。
 多数の人から、嫌われない程度でもよいのではないでしょうか。

 

 

6.受け手の 「期待」 を利用する

 

 コミュニケーションを成功させるために、話し手がすべきこと。
 1 番目は 「受け手に合わせること」 でした。

 2 番目は 「受け手の期待を知ること」 と、ドラッカーは述べています。
 さらに、その期待の利用方法は、2 つあります。

 

 1 つは、相手の期待に応える こと。
 もし自分が、服の小売店の店員だったとします。
 ある日、顧客が商品を求めて、来店しました。
 つまり、「求めている商品があること」 を、期待しています。

 

 ここで、店員としてすべきことは ・・・
 会話の中から、その商品をつきとめ、顧客の目の前まで運ぶ ことです。
 また、選んだ服に対して、顧客は 「お似合い」 と言われることを、期待しています。
 そう感じたら、「お似合いですよ」 と、応えるべきでしょう。

 

 

7.受け手の 「期待」 を破壊する

 

 受け手の期待を利用する、もう 1 つの方法とは ・・・
 それは 「受け手の期待を破壊する」 です。
 これは、少々、高等な技ではないでしょうか。
  私自身は好みませんが、結果的にこうなることが、多々あります。

 

 税理士の場合、顧客が期待しているのは 「節税」 です。
 しかし 税金をたくさん支払った方が、結果的に得をするケース もあります。
 このようなことを、数字を使って、わかりやすく説明すると、顧客は納得します。
 コミュニケーションは成功した、と言えます。

 

 ドラッカーの言葉を引用しましょう。
 受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを、強引に認めさせるためのショックの必要を知る。
 ポイントは、顧客の期待に対して、より深い本質に、気づく ことではないでしょうか。
 表面的な期待は 「節税」 だったとしても、深層にある 「損得」 を知ることです。

 

 

8.コミュニケーション と マーケティング

 

 ドラッカーは、マーケティングの本質 について、次のように述べています。
  マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。
 顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるようにすることである。
 販売とは、簡単に言えば、「買ってください」 と、顧客にお願いすることです。

 

 今回のタイトルを見て、変な組み合わせと、感じられたかもしれません。
 しかし、コミュニケーションとマーケティングの本質は、似ている ことがわかります。
 相手を理解することによって、自分の要求を実現させる。
 私たちが努力すべきことは、その仕組み作りではないでしょうか。

 

 ここで、間違いを犯したくないものです。
 それはテクニックに走り過ぎて、「相手の期待」 に反して、「自分の要求」 を実現させないこと。

 あくまで 「相手の期待」 に応えるために、「自分の要求」 を実現 させたいものです。
 
つまり 「Win−Win」 の関係です。

 

 

9.コミュニケーション力を伸ばす

 

 初めて、社会人になる時、コミュニケーションの入門書を、読む人がいます。
 ただし、そこに書いてあるのは、あくまで基本です。
 だから、習熟すれば、自分流にくだけた形に、変えればよいでしょう。

 しかし、「相手に合わせる」 などの基本は、外したくない ものです。

 

 たとえば、名古屋の河村たかし市長。
 名古屋市民が決して使うことのない、ひどい名古屋弁を多用しますが、多くの人に支持されています。

 それは、一見、滅茶苦茶に聞こえますが、実はポイントはちゃんと押さえてある。
 さらに高等な技術も、仕組まれているのでしょう。

 

 また、竹下登元総理大臣も、コミュニケーション力に長けた人でした。
 すごいと感じられたのは、「言語明瞭・意味不明瞭」。

 誠実そうに話しているのですが、何を言っているのかわからない。
 野党議員や国民を煙に巻くためには、優れた技術だったようです。

 

 

10.同意と共感を求める世界から離れる

 

 自分と同じような価値観の人と、群れる人たちがいます。
 その中で、同意と共感を、求めています。

 「あなたは間違っていない」  「私もあなたと同じ」 と言われるのを、期待 しています。
 そして、そう言われると、大いに安心するものです。

 

 これは、かつての旧社会と同じ。
 茶髪の人同士で 「茶髪が正しい」。

 黒髪の人同士で 「茶髪はいけない」 と言っているのと、何ら変わりません。
  若い人なら、まだ許されるのですが。

 

 価値観が近い者同士のコミュニケーションは、実に簡単 です。
 いくら、その中で人付き合いが上手でも、コミュニケーション力が高いとは限りません。
  このような人間関係は縛り合うので、脱出も難しいものです。
 私は 50 を過ぎてから、このような世界は、ご遠慮させていただいています。

 

 

11.自分から離れて傍観する

 

 受け手の期待は、受け手の価値観から生まれます。
 受け手の価値観を知るためには、傍観することではないでしょうか。

 なぜなら、一度、「自分」 を離れなければ、相手の価値観を知ることが難しい からです。
 傍観の 「観」 とは、観察するの 「観」 です。

 

 コミュニケーション力を高めるためには、異なる価値観を理解する。
 そのためには、客観的に観察し、異なる点を導き出したら、理解に努める。
 この視点を利用して、マーケティング力も、向上させる。
 「買って欲しい」 ではなく 「買いたくなる」 仕組みを作ることではないでしょうか。

 

 ここまで書いて、反省することしきり。
 何も、地球の裏側の人の価値観まで、理解する必要はありません。

 まずは身近なところで、平和な家庭、活気のある職場、買いたくなる仕組みを、維持したい ものです。
 最後に、マーケティングに関する引用は、P.F.ドラッカー著経営の哲学 の第 6 章からでした。
 

 

 ※参考文献

  P.F.ドラッカー著 仕事の哲学」 「経営の哲

田中角栄と石原慎太郎  2016.06.08

1.天才が語る天才 

 

 石原慎太郎著 天才を読みました。
 内閣総理大臣を務められた、田中角栄さんに関する小説です。
  私は 1960 年生まれ、お2人のご活躍を、リアルタイムに、拝見してきました。
  この本を読みながら、懐かしい昭和の情景が、何度も浮かんだものです

 

 田中さんが総理大臣になられたのは、私が小学 6 年生のとき。
 それまでは、自民党総裁選の度に、「また佐藤か」 と、父がぼやいていました。
 佐藤とは、ノーベル平和賞を受賞された、あの佐藤栄作さんのことです。
 母は、石原さんの弟、裕次郎さんのファンでもあり、慎太郎さんのことも、高く買っています

 

 田中さんとはタイプが異なるものの、石原さんも天才の一人 ではないでしょうか。
 私は、小説を読みませんので、その分野の才能は、わかりませんが ・・・
 剪断は双葉より芳し (せんだんはふたばよりかんばし)。
 この言葉にふさわしく、若い頃から才気煥発、光り輝いてきた人でしょう。

 

 

2.本書が書かれた目的 

 

 本書について、字が大きい、字数が少ない、新しい内容がない。
 このような批判も、見受けられます。
 石原さんが、熟読したであろう、参考文献は 30 冊を超えています。
 さらに、あの石原さんが、今さら書くのだからと、一部の読者の期待も、相当、膨れあがったに、ちがいありません。

 

 それでは、どのような目的で、この本は、書かれたのでしょうか。
 過去を振り返る回想本でもなければ、専門家やマニア向けの研究本でもなさそうです。
 その目的は、「田中角栄さんに関する真実を、多くの人に伝えておくため」 だったのではないでしょうか。
 だから、主要な内容のみが、わかりやすく書かれているのでしょう。

 

 このように解釈すれば、この本は目的にかなっています。
 田中さんを知らない世代にも、歴史上まれな人物だったことは、伝わったと思われます。
 この本をきっかけに、政治や政治家への関心が高まれば、さらなる目的まで果たされた と考えられます。
 私自身も、この本から、いくつかの反省と、学びを得ることが、できました。

 

 

3.その年齢にならなければわからないこと 

 

 石原さんは、若い頃、田中さんより素晴らしい政治家になれる。
 このような確信を、強くもたれていた、のではないでしょうか。

 ところが、政治家としての人生が終わった今、けっきょく田中さんには及ばなかった。
 その事実を、悟られたのかもしれません。

 

 人間は、その年齢にならなければ、わからないことが、多々あります。
 そのことに気づくことさえ、なかなか難しいものです。
 親の苦労は、子供を持つまでわからないと、言われます。

 つまり、人間は経験しなければ、理解は本物にならないし、経験しても、理解できないことが、さらにあります。

 

 若い時は、世間のことも、人間のことも、自分のことも、わからないまま、他人を批判します。
 しかし、わからないからこそ、未知のことに挑戦したり、新たな可能性が、切り開かれていく ものです。
 人間的に成長すれば、これら両面に気づくことでしょう。
 見かけ倒しで、中身が成長することなく、批判に終始した総理大臣もいましたが。

 

 

4.米国にはめられた田中さん 

 

 田中さんにとって、致命傷になったのは、ロッキード事件です。
 これは、米国が仕掛けた罠 でした。
 当時、日本の独立性を維持するために、田中さんは米国の意にそぐわない行動を起こしました。
 それが原因で、抹殺されたというのが、真相ではないでしょうか。

 

 当時の日本の政界も司法界も、米国怖さに、不公平な裁判によって、田中さんを葬ろうとしました。
 本来であれば、このような時こそ、マスコミがしっかりすべきなのですが ・・・

 それに対して、唯一、見捨てなかった、有権者の人たちは、偉かった と思います。
 この時代には、過去の恩を忘れない人たちも、大勢いた訳です。

 

 しかし、日本を最も愛する政治家を、日本人自身の手で葬ってしまった ことは、確かです。
 日本史上、大きな汚点ではないでしょうか。
 今回、石原さんという、非常にメジャーな方のお力を借りて、再評価の機会を得たことは、日本人として喜ばしいことです。
 私たちはこの史実から学び、今後の諸外国とのつき合い方に、生かすべきでしょう。

 

 

5.かの国の人たちは、なぜ米国に背くのか? 

 

 田中さんの件で、米国は、まったく手を汚していない 点にも、注目すべきです。
  このようなことは、日常的な人間関係の中でも、頻繁に起きているからです。
 つまり、自分が愚かであれば、誰かに操作され、自ら加害者になり、他人を攻撃し、自らも被害者にする、ということです。
  一方では、米国のような存在に刃向かえば、田中さんと、同じ運命をたどることもある、ということです。

 

 今でも、「米国対その他の国」 という図式があります。
 その他の国の中には、しばしば、命までかけて、米国に背く民族がいます。
 米国寄りの国民は、彼らが 100% おかしいと考えがちです。
 しかし、かの国の人たちにも、それだけの理由があり、米国にも必ず否があるはずです。

 

 そこまではわかりますが、やはり、政治は、複雑で理解しがたいものです。
 少なくとも、「何れが正しく、何れが悪い」 といった、短絡的な思考は避けること。
 何故だろうと考えつつも、答を出さずに、延々と保留。
 世の中すべての出来事が、そのようなものかもしれませんが。

 

 

6.「悪人」 より、悪質な 「偽善者」 

 

 世の中には、2 つの世界が存在すると、感じています。
 1 つは、「善悪の世界」、本音の世界でもあり、もう 1 つは、「偽善の世界」、建前の世界でもあります。
 2 つの世界は、人間社会の至るところに、同時に存在し、混沌としています。

 2 つの世界の住人たちは、同じ言葉を使いますが、言葉の意味が違うので、理解し合うことができません

 

 例えば、「バカ」 という言葉。
 善悪の世界では 「相手に対する愛情」 も含みますが、偽善の世界では 「単に人を傷つける悪い言葉」。
 石原さんは、「善悪の世界」 の中の、さらに 「善」 の人です。
 だから、「バカ」 という言葉を、よく使われます。

 

 石原さんは、田中さんのことを、当初 「悪人」 と判断されたのかもしれません。
 しかし、政治家として経験を重ねるうちに、もっと悪質な 「偽善者」 が、星の数ほどいることに気づかれた。
 そして、田中さんは、偽善者たちと戦い、それに破れた。
 田中さん自身が、実は、大きな 「善」 の人だった ことを、理解されたのかもしれません。

 

 

7.田中さんの、何が 「天才」 なのか? 

 

 この本で忘れてならないのが、タイトルです。
 「天才」。
 いくら善人でも、能力が並では、世の中に大きな益を、為すことができません。
 また、石原さんという天才が、大きく反応することもなかったでしょう。

 

 田中さんは、普通の、善意の人や、努力の人ではなく、天から授かった能力に、秀でた人でした。
 中でも、驚異的だったのが、先見力。

 日本の未来像を、ここまで正確に予測されていたとは。
  それ以上と言えば、織田信長くらいでしょうか。

 

 私は、終戦から 15 年後に、生まれました。
 当時の日本は、まだ貧しく、貧弱で、粗末なものばかり でした。
 その後、大きな経済発展の末、日本は世界有数の豊かな国に向かって、ばく進していきます。
 そのレールを敷いたのが、田中さんでした。

 

 

8.田中角栄さんと石原慎太郎さん  

 

 あれだけ多くの人に、裏切られたにもかかわらず、田中さん本人は、誰に対しても、目立った攻撃をしていません。
 反対に、多くの人を、貧困や苦しみから、救い出しました。

 その 愛の大きさには、計り知れないものがあります。
 皮肉なことに、それが弱点になったのかもしれませんが。

 

 私は、田中角栄という、類まれな人物と、同じ時代に生きさせてもらったことを、幸運に思っています。
 田中さんは、どこの誰ともわからない、末端の国民まで、愛していました。
 私自身も、その無数の中の 1 人だったからです。
 政治家とは、本来、そうあるべきものではないでしょうか。

 

 最後に、石原慎太郎さん。
 テレビ番組の中、石原さんが登場すると、その場の空気が、一変します。

 緊張感を伴う安心感と言いますか ・・・ 私には、それが、どこか懐かしいもののように、感じられます。
 今後もお元気で、よい仕事を長く続けていただきたいものです。

理想の人間関係  2016.04.29

1.不毛な人間関係がもたらす 「人生のロス」 

 

 不毛な人間関係に、引きずられている人がいます。
 それによって、莫大な時間が、失われているのではないでしょうか。
 生産的な活動のために必要な時間、幸せを感じるべき時間などが、大量に浪費 されているはずです。

 その結果、自分の中に残るのは、虚しさや疲労感ではないでしょうか

 

 また、今年に入り、プロ野球選手とバトミントン選手が、賭博などで地位を失いました。
 本人もいけませんが、望ましくない相手と、つき合っていたことも、原因の1つ です。
 もし、普通の人とつき合っていれば、一生を台無しにすることも、なかったでしょう。
 いっそ、誰とも深くつき合うことなく、孤独を通した方が、マシだったかもしれません。

 

 人生にとって、人間関係は重要テーマの 1 つです。
 他人の影響を受けやすい人にとっては、最も大きな位置を、占めるかもしれません。

 だからこそ、健全かつ有益な関係を、構築したい ものです。
 今回のテーマは、「 理想の人間関係 」 です。

 


2.6つの人間関係  

 

 成長したい、改善したい、向上したい ・・・
 このようなときは「理想」 「目標」 「お手本」 などを、持つ ようにしましょう。
 理想は、あくまで理想であり、現実と一致することなど、ありえません。
 しかし、それによって、現状から、早く抜け出すことができます。

 

 私は、さらに時間を稼ぐために、賢人の知恵を、拝借します。
 人間関係において、参考になったのは、スティーブン ・ R ・ コヴィー著 「7つの習慣」
 この本は、世界的なベストセラーに、なりました。  
 その中で、紹介されている人間関係が、以下の 6 パターン です。

 

 ① Win−Win    ・・・・・( ○ + ○ ) 自分も勝ち、相手も勝つ
 ② Win−Lose  ・・・・・( ○ + × ) 自分が勝ち、相手は負ける ( 自分本位の加害者タイプ )
 ③ Lose−Win  ・・・・・( × + ○ ) 自分が負けて、相手が勝つ ( 自己犠牲に酔いしれる被害者タイプ )
 ④ Lose−Lose ・・・・ ( × + × ) 自分も負けて、相手も負ける ( いわゆる腐れ縁 )
 ⑤ Win             ・・・・・( ○ の み ) 自分の勝ちだけを考える ( 他人に関心のないタイプ )
 ⑥ No Deal      ・・・・・( 無 関 係 ) 取引をしない ( つき合わない )

 


3.どの人間関係がよいのか? 

 

 著者が勧めるのは、① でなければ ⑥。
 つまり 「 お互いにプラスの関係 」 が、成立しなければ、付き合わない。
  「 ① Win−Win 」 は理解できますが、そうでなければ 「  ⑥ No Deal 」 でよいのでしょうか ?
 実は、この部分が、最も重要なポイントと考えられます。

 

 もし ⑥ を選択しなければ、② 〜 ⑤ のよくない関係を、その後も、続けなければいけません。
 しかし、「 ① 以外の人 」 との、つき合いを避けると、孤独におちいる のではないかと、不安になります。
 実は、この孤独への不安こそが、不毛な関係から離れられない、根本原因なのかもしれません。
 孤独を避けるためには、① のタイプと、出会う必要があります。

 

 その方法としては ・・・
 今のところ、1 つしか思い浮かびません。

 それは、自分自身が、① のタイプになること。
 つまり、「 ① Win−Win 」 でなければ、「 ⑥ No Deal 」 を、実践する ことです。

 


4.よい人間関係と出会う方法 

 

 なぜ、自分自身が 「 ① Win−Win 」 を目指すと、同じ考えの人が、集まってくるのでしょうか。
 それは、相手も 「 ① Win−Win 」 を目指す人を、求めているからです。

 お互いに 「 ① Win−Win 」 でなければ、「 ① Win−Win 」 の人間関係は、成立しません
 相手が、② 〜 ⑤ の関係では、「 ① Win−Win 」 の関係は、成立しないからです。

 

 「 類は友を呼ぶ ( 「 似た者同士が集まる 」 という意味 ) 」 と言われます。
 この関係は、他の関係においても、当てはまります。
 「 ④ Lose−Lose 」 の腐れ縁は、読んで字のごとしです。

 なぜ、お互いに、惹かれ合うのか、理解できませんが。

 

 私は、ビジネス中心の人生を、送っているせいか ・・・
 「 ④ Lose−Lose 」 や、「 ③ Lose−Win 」 に接することが、ほぼありません。
 もし、出会ったとしても、一目散に遠ざかります。
 どちらも、不健全な相手なので、あえて近づく理由がありません。

 


5.類は友を呼ぶ ・・・ 友人は自分を映し出す鏡 

 

 「 類は友を呼ぶ 」ケースで、最も多いのが、「 ②Win−Lose 」 同士 でしょう。
 「 ② Win−Lose 」とは、相手に損をさせてもよいから、自分が得をしたい関係です。
 「 人生とは限られたパイを奪い合うもの 」 という前提が、あるのかもしれません。
 本来、「 ② Win−Lose 」 が求めているのは、「 ③ Lose−Win 」 の相手ですが、滅多に存在しません。

 

 そこで、標的になるのが、同じ「 ② Win−Lose 」 の相手、ではないでしょうか。
 「 ② Win−Lose 」 と 「 ② Win−Lose 」 は、理屈の上では、成立しないはずです。
 しかし、世の中には、多く存在しています。

 なぜでしょうか。

 

 加害者、つまり搾取するのが、強い方の「 ② Win−Lose 」。
 被害者、つまり搾取されるのが、弱い方の「 ② Win−Lose 」 ではないでしょうか。

 強い「 ② Win−Lose 」 が、弱い「 ② Win−Lose 」 を利用したり、搾取する。
 このパターンが、多いのではないでしょうか。

 


6.中途半端な欲が、大損をまねく 

 

 たとえば、大変、ズル賢い人を、強い 「 ② Win−Lose 」 とします。
 少しズルをしてもよいから、得をしたいと考えている人を、弱い 「 ② Win−Lose 」 とします。

 弱い 「 ② Win−Lose 」 は、強い 「 ② Win−Lose 」 に、あこがれている ことがあります。
 自分も、あの人のように、うまく得をしたいと。

 

 強い 「 ② Win−Lose 」 に出会ったとき ・・・
 「 ① Win−Win 」 であれば、「 たぶん自分を騙そうとする 」 と、推測します。

 しかし、弱い 「 ② Win−Lose 」 は、「 自分を騙そうとする 」 とは、考えられない ようです。
 だから、相手の演技に、騙されてしまうのではないでしょうか。

 

 某女性タレントが、不倫騒動を起こして、テレビ画面から、姿を消しました。
 独身と名乗り、新婚早々の妻を裏切る男に対して、「 自分だけは裏切られない 」 と、なぜ、考えてしまったのでしょうか。
 それは、女性タレント自身に、中途半端な欲望が、あったからではないでしょうか。

 中途半端な欲を持つと、かえって損をする と、私は感じています。

 


7.「 頭が悪い人 」 = 「 頭をつかわない人 」 

 

 世間では、よく 「 頭がよい 」 とか 「 頭が悪い 」 と、表現されます。
 しかし、本当に 「 頭がよい人 」 または 「 頭が悪い人 」 は、1% もいないでしょう。
 残り、99% 以上の人は、ほとんど同じレベル。

 違いは、「 頭をつかっているかどうか 」 だけ、ではないでしょうか。

 

 たとえば、A さんと、B さんの前に、100 万円があったとします。
 しかし、2 人とも、60 万円ずつ必要だとすると ・・・
 20 万円、足りません ・・・ どうしましょうか。

 もし 「 ② Win−Lose 」 同士なら、奪い合い になります。

 

 取り分は、「 力関係 」 または 「 ズル賢しさの違い 」 で、決まるのではないでしょうか。
 そもそも、限られたモノを奪い合う発想は、動物レベルから、あまり進歩していないと、言えます。
 「 ② Win−Lose 」 同士に限らず、① 以外の関係では、ほとんど頭をつかいません。
 これらは、「 頭を使わない人間関係 」 と言えます。

 


8.「 ① Win−Win 」 で、「 頭をつかう人 」 になる 

 

 「 ① Win−Win 」 と 「 ① Win−Win 」 の場合は、どうでしょうか。
 「 A さんが ○ で、B さんが × 」 を、第 1 の案。
 「 A さんが × で、B さんが ○ 」 を、第 2 の案とすると ・・・

 「 A さんも ○ で、B さんも ○ 」 の、第 3 の案を、考えなければいけません。

 

 これによって、頭をつかう必要があります。
 たとえば、100 万円を、120 万円にする方法。
 100 万円と、何か他のモノで、代用する方法。
 50 万円ずつ支払い、残り 10 万円ずつの支払いを、延期させる方法など。

 

 「 ① Win−Win 」であれば、第 3 の案が必要になります。
 おかげで、頭をつかうシーンに、多く出会います。

 さらに、毎日、トレーニングを積むことによって、ますます 「 頭が働く 」 ようになります。
 10 年も経てば、大きな成長の差となって表れます。

 


9.社会全体の利益を忘れない 

 

 さらに、確認しておきたいことがあります。
  「 A さんも ○ で、B さんも ○ 」であれば、「 ① Win−Win 」でした。

 しかし、自分たち以外の 誰かが、それによって、「 × 」 になるとしたら、それは「 ①Win−Win 」 ではありません。
 「 自分たちが ○ 、その他の誰かが × 」 なので、「 ② Win−Lose 」 です。

 

 もう、おわかりかと、思いますが ・・・
  「 ① Win−Win 」 以外の関係は、せまい人間関係の利害だけで、成立しています。

   しかし「 ① Win−Win 」 は、最終的に、社会全体のことまで、考えなければいけません。
 自分たちの利益のために、見知らぬ誰かに、損失を与えてはいけないからです。

 

 「 ① Win−Win 」 では、社会全体で通用するルールを、重視します。
 「 ② Win−Lose 」 では、狭い人間関係でしか、通用しないルールを、重視します。

 狭いルールを、万能と勘違いすると、社会からペナルティーを受けることがあります。
 冒頭で述べた、スポーツ選手と同様、賢明な生き方とは、言えません。

 


10.強い 「 ② Win−Lose 」 の一生 

 

 50 代にもなると、どのようなタイプが、どのような一生を終えるのかを、実際に自分の目で確認する ことができます。
 また、年長者の晩年の姿から、「 今後、どのように過ごせばよいのか 」 も、見えてきます。
 強い 「 ② Win−Lose 」 は、人生の中盤まで、他人を利用したり、他人から搾取して、上手に過ごします。
 しかし、晩年は、自滅してしまうようです

 

 人間は、他人のことを、自分と同じと、考えがち です。
 だから、正直な人は、 「 相手も正直 」 と考えるので、騙されやすいのですが、心の中は平和です。
 反対に、嘘をついてきた人は、「 相手も嘘つきではないか 」 と、疑いがちです。
 また、長年、他人から搾取するなど、安易な方法に頼ってきたため、頭の働きも、鈍くなっています。

 

 晩年になり、力が衰えてくると、猜疑心が高まり、金銭や権力に、異常な執着を見せます
 誰かに裏切られないかと、心が安まることがありません。

 さんざん他人を害した、自分の心によって、最期は、自分自身が害されてしまう、のではないでしょうか。
 このような人生には、まったく魅力を、感じません。

 


11.人間関係は 「 量 」 ではなく 「 質 」 

 

 自分も 「 ① Win−Win 」。
 相手も 「 ① Win−Win 」 でなければ、つき合わない。

 このような考えを持つと、孤独に陥るのではないかと、不安になるのも、不思議ではありません。
 なぜなら、誰が 「 ① Win−Win 」 の相手なのか、最初のうちは、わからないからです。

 

 たとえ不安であっても、まずは、自分自身が 「 ① Win−Win 」 を目指すこと。
 そして ② Win−Lose 」 へ戻ろうとする誘惑を、断ち切る ことです。
 強い 「 ② Win−Lose 」 は、弱い 「 ② Win−Lose 」 を利用するために、近づいてきます。
 「 あなたは損をしている 」 などと、被害者意識に訴えかけてきたり、魅力的な理解者を演じてみたり ・・・

 

 「 ① Win−Win 」 で考える習慣が身につくと、以前より、頭が働くようになります。
 すると、誰が ① 〜 ⑤ なのか、だんだん見抜けるようになります。
 また、強い 「 ② Win−Lose 」 が近くにいても、影響を受けなくなります。

 そして「 多数の虚しい人間関係 」 よりも、「 少数の実りある人間関係 」 の方が、満足できることを知ります。

 


12.企業経営における 「 理想の人間関係 」 

 

 人間関係は、人生を左右する、最重要課題の 1 つです。
 理想の人間関係を、手に入れたいなら、自ら進んで 「 ① Win−Win 」 を目指す。
 同時に、現在の人間関係が、どの状態にあるのかを、冷静に見直してみる。 
  ここからスタートです。

 

 「 ① Win−Win 」 の関係は、「 1 + 1 」 に対して、「 2 を超える成果 」 を、生み出します。
 社会を豊かにすることもあれば、企業に長期的な繁栄を、もたらすこともあります。

 経営者であれば、「 ① Win−Win 」 の関係を、社内外に構築すべき でしょう。
 まずは、自分自身が 「 ① Win−Win 」 を、目指しましょう。

 

 そして 「 共に繁栄すること 」 を、常に考える。
 「 経営者のため 」 「 従業員のため 」 「 顧客のため 」 「 株主のため 」 「 債権者のため 」「 社会のため 」 の何れかに、偏らないこと。

 関係者すべてが、繁栄できるように、できれば、全員で目指せるようになること。
 このような人間関係こそが、理想ではないでしょうか。

 


 ※参考文献 
  スティーブン ・ R ・ コヴィー著 「7つの習慣」      

激しい競争社会を生き抜くためのヒント  2016.03.30

1.かつて世界の経営者が目指したもの 

 

 入山章栄著 世界の経営学者はいま何を考えているのか
 この本は、2013 年にベストセラーになりました。
 その中で紹介されているのが ・・・

 「 ハイパー・コンペティション (激しい競争) の時代 」 です。

 

 その前に、マイケル・E・ポーター著 競争の戦略 について、ご紹介します。
 1980 年に発行され、ビジネス書の代表作として、世界的な地位を確立 しました。
 著名な経営者が、最も多く推薦する図書にも選ばれました。
 ただし、私には大変難しく、一部しか読んでいませんが。

 

 その要点を超簡単に説明すると ・・・
 ① 10 年以上、高い業績を維持することが重要
 ② ① を実現させるためには、適切な産業を選ぶ ( ポジショニング戦略 1 )
 ③ ② で選んだ産業の中で、ユニークなポジションを取る ( ポジショニング戦略 2 )

 

 

2.「 競争 」 や 「 戦い 」 を避けて 「 勝つ 」 が ベスト 

 

 適切な産業を選ぶポイントは、以下の 3 点です。
 ① 競争が激しくない   ② 新規参入が難しい   ③ 価格競争が起きにくい  
   つまり、書名は 「 競争の戦略 」 ですが、中身は 「 競争を避けるための戦略 」。

   競争の少ない産業を選んで、その中でユニークなポジションをとる  ・・・ これが主旨です。

 

 百戦百勝は善の善なる者にあらず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
 もし戦えば、自分たちも、無傷では済まないものです。
 だから、100 戦して、100 勝するのが、ベストとは言えません。
 「 戦わずして相手に負けを自覚させる 」、これがベスト です。

 

 これは、中国古典の 1 つ、孫子の一節です。
 もともと戦争用のテキストであり、古くは徳川家康など、戦国武将の教科書 としても利用されました。
 今日においては、政治家や経営者のビジネス書として、愛読されています。
 両者とも、「 争いや戦い 」 と、「 成功や勝利 」 を区別しています。

 

 

3.現代は激しい競争社会 

 

 やっと本題です。
 ポーターは、「 10 年以上、高い業績を維持することが重要 」と述べました。
 ところが、この「 10 年以上 」 の部分が、近年は、極めて難しくなってきました。

  「 ハイパー・コンペティション (激しい競争) の時代 」 の特徴の 1 つ です。

 

 米国の 2 人の研究者が、統計値を分析したところ ・・・
 ① 10 年以上、高い業績を維持する米国企業は、全体の 2 〜 5 %
 ② さらに、年々、難しくなってきている
 ③ 長期的な成功に見えたとしても、実は 「 連続する短期的な成功 」 だった 

 

 かつては、ヒット曲が 1 つあれば、歌手は、一生、安泰でした。
 しかし、近年は競争が激化したせいか、小ヒット曲が、たくさん現れ、すぐに消えていきます。
 数十年後まで、記憶に残る曲が、果たしてあるのでしょうか。
 このような状況下で、成功を維持するためには、どのような戦略が有効なのでしょうか。

 

 

4.「 ホームラン × 1 本 」 から 「 ヒット × 4 本 」 の時代へ 

 

 現在の状況を、野球にたとえれば、ホームランが出なくなった ようなものです。
 「 飛ばないボール 」 に 「 反発力の弱いバット 」 に、ルールが変わった時代もありました。
 どうすれば得点を増やすことができるでしょうか。
 それは、単発のヒットを重ねることです。

 

 ただし、ホームラン 1 本の代わりに、単発ヒットを 4 本打ち続ける、必要があります。
 ビジネスに話を戻すと、それは 「 積極的に競争行動をとる 」 ことです。
 競争行動とは、消費者の目に見えるような、自社製品やサービスの動き。
 たとえば、以下のような活動のことです。

 

 ① 新製品・新サービスの投入 ・ モデルチェンジ
 ② 大がかりな販促活動 ( バーゲン・景品 )
 ③ 大幅な値下げ
 ④ 特殊な販売方法への変更など

 

 

5.競争行動のメリット 

 

 ハイパー・コンペティションの時代には、以下の点も、求められます。
 ① めまぐるしい社会の変化に、対応する
 ② 嗜好の多様化により、多品目を少量生産する
 「 積極的な競争行動 」 は、これらの点でも、有利に働きます。

 

 アベノミクス導入以来、円安でしたが、現在は円高。
 中国経済が急成長を続けると思いきや、今後 10 年は立ち直れないと言われています。

 変化に注意を払いながら、自社の製品やサービスを、変えていく 必要があります。
 さらに、その度に、顧客にうまくアピールすべきです。

 

 また、需要が供給を上回ると ・・・
 つまり、モノやサービスがあふれると、消費者が個人的な嗜好を高めます。
 ニッチ市場が、無数に存在するような状況が、生まれる訳です。

 自社の規模に応じて、複数のニッチ市場をターゲットにする、戦略も考えられます。

 

 

6.2 代目社長は要注意 

 

 米国の研究者が、競争行動とシェアの関係について、データを統計解析したところ ・・・
 より多く、より長く、競争行動を取った企業の方が、シェアが拡大する。
 つまり、「 積極的な競争行動が有効 」 という結果が出ました。
 まずは、「 ハイパー・コンペティション (激しい競争) の時代 」 を、意識することではないでしょうか。

 

 しかし、競争行動に関心の低い企業も、少なくありません。
 特に、経営者が 2 代目以上の中小企業は、危機感に乏しい 傾向が見られます。
 事業より社交、事業より社内、事業より家庭、事業より趣味、事業より贅沢。
 このような状態では、数年以内に、経営危機を迎えることでしょう。

 

 一方では、若い世代が、下から突き上げてきます。
 毎年、新しい社会に適合した若者たちが、大勢、流れ込んできます。
 かつて優秀だったとしても、40 代以降は、大いに警戒するのが正解です。
 日々の勉強を怠れば、仕事さえ失う恐れがあるでしょう。

 

 

7.起業家のチャレンジ精神に学ぶ 

 

 ① 企業のエグゼクティブは、体系としてのマネジメントの、「 経営管理的な側面 」 に、全面的にコミットしている
  しかし、いまや 「 起業家的な側面 」 に、コミットしなければならない。

 ② この壮大な転換期において、社会の安定を確実なものとするには、既存の組織が生き残り、繁栄術を学ぶ必要がある。
 そのためには、起業家として成功するための方法を、学ばなければならない。

 

 ① ② ともに、ドラッカーの言葉です
 何を言っているのかと言うと ・・・
 経営者はこれまで 「管理」 に重点を置いてきました。
 しかし、 変化の激しい今日は、「 起業家的な性格 」 を重視すべき、とのことです。

 

 つまり、安定期の経営者たちと、同じ考え、同じ行動をとっていては、生き残ることができません。
 だから 「 起業家 」 として考え、「 起業家 」 として行動することが、求められます。
 起業家は、ゼロから事業を立ち上げます。

 業界の常識にとらわれることのない、そのチャレンジ精神に学べ ということでしょう。

 

 

8.競争を避けるための 「 究極の方法 」 

 

 ドラッカーによれば、事業の目的は 「 顧客の創造 」 です。
 顧客の創造を実現させる方法は、マーケティングとイノベーション。
 この 2 つしかありません。
 ビジネス本を読み始めて、この仕組みにたどりつくまで、私は数年を要しました。

 

 マーケティングは、すでに市場にいる顧客を、ターゲットにします。
 結果的に、限られた顧客を、同業者間で、奪い合うことになるのではないでしょうか。

 一方、イノベーションは、おもに 「 ノン・カスタマー 」 を、ターゲット にします。
  市場の外にいる顧客をねらうことにより、市場拡大にもつながります。

 

 マーケティングの方が、はるかに成功の確率が高いのですが ・・・
 より上位を目指すため、すさまじい競争に、巻き込まれる恐れもあります。

 また、市場の縮小が進むと、競争に勝っても、利益が見込めません。
 イノベーションは、オンリー 1 を目指すため、成功すれば一人勝ち の可能性もあります。

 

 

9.「 イノベーション 」 は起業家の道具 

 

 イノベーションとは起業家に特有の道具であり、変化を機会として利用するための手段である。
 これもドラッカーの言葉です。

 つまり、起業家はイノベーションを道具に、変化をチャンスとして利用します。
 キーワードは 「 イノベーション 」 「 起業家 」 「 特有の道具 」 「 変化 」 「 機会として利用 」。

 

 さらに、マーケティングとイノベーションの違いを、理解するために ・・・
 マーケティングが、目指すのは、「 よりよく 」 「 より多く 」。
 イノベーションが、目指すのは、「 より新しく 」 「 より異なる 」。
 この頭の切り換えが必要です。

 

 イノベーションから生まれた、新製品や新サービスは ・・・
 既存の常識で考えると、しばしば 「 変なモノ 」 見えてしまいます。
 たとえば、回転ずしが出始めた頃、「 あんなものは寿司じゃない 」 と、言われていました。
 ところが、既存のすし店の多くを、閉店に追い込み、今ではすっかり定着しました。

 

 

10.業界で 「 ユニークなポジション 」 を目指す 

 

 著者の入山さんは、ポーターの理論と、近年の理論を総括して、次のように述べています。
 積極的な競争行動により、攻めることが重要。
 そのためには、業界でユニークなポジショニングをとる こと。
 それが、攻めの姿勢をとりやすくする。

 

 つまり、激しい競争社会を生き抜くためには ・・・
 ユニークな存在を目指すこと。
 すると、競争を避けながら、攻めることが可能になります。

 これが 「 競争回避 」 と 「 攻め 」 を、両立させる方法 です。

 

 さらに、競争とは、比較から生まれます。
 比較とは、近いレベルから発生するものです。
 激しい競争社会において、競争を避け、果敢に攻めながら、幸せに生きるためには ・・・
 同質同レベルの人たちと、群れないこと ではないでしょうか。
 

 

  ※参考文献
  入山章栄著 世界の経営学者はいま何を考えているのか 」       
  マイケル・E・ポーター著 競争の戦略
  守谷洋著 中国古典の名言・名句三百選 」   
  P.F.ドラッカー著 経営の哲学 」 「 変革の哲学 」 「 創造する経営者 」 「 イノベーションと企業家精神

1.普通の人が成功する時代 

 

 経営者にとって 「成果をあげる」 とは ・・・
 売上を増やす、よい製品を生み出す、生産性を向上させる、コストダウンを達成する、人材が育つ。
 これら 「成果をあげる」 ことについて、ドラッカーは述べています。
 「普通の人であれば、誰でも成果をあげることができる」。

 

 若い頃は学歴や性格、才能などによって、成果に差が生じると考えていました。
 ところが、30 年以上、多くの人と仕事をした結果、そうではないことに気づきました。
 かつて名門校を出たり、難しい資格を取ったにもかかわらず、ほとんど成果を残せなかった人も大勢います。

 反対に学歴や資格などなくても、大きな成果を残した 人にも、出会いました。

 

 つまり、現代は 「敗者復活が容易な時代」 になった。
 逆の言い方をすれば、「継続的な努力を怠ると、どんどん落ちていく時代」 になったと言えます。
 さらに、今後ますます その傾向に向かうと考えられます。
 今回はその原因を追求しながら、成果をあげる、つまり成功する方法を模索してみましょう。

 

 

2.「特別な才能」 など必要ない 

 

 ① 成果をあげることは一つの習慣である。実践的な能力の積み重ねである。
   実践的な能力は、修得することができる。それはあきれるほどに単純である。
 ② 普通の人であれば、実践的な能力は身につけられる。卓越はできないかもしれない。
   卓越するには特別の才能が必要である。だが成果をあげるには、人並みの能力があれば十分である。

 

 ① 〜 ② は、ドラッカーの言葉です。
 人並み外れて優秀な存在になるためには、特別な才能が求められます。
 しかし、「成果をあげる」 だけなら、実践的な能力を積み重ねればよい。

 実践的な能力は、人並みの能力があれば、十分、修得できる と述べられています

 

 たとえば、税理士には計算力が求められますが、実際に使っているのは小学校高学年レベル。
 たし算、ひき算、かけ算、わり算のみ、しかも電卓や表計算ソフトまで利用することができます。

 また読解力も求められますが、読むべきものはすべて日本語で書かれ、わかりやすい解説書もあります。
 つまり、特別な才能など、まったく必要ありません。

 

 

3.「やるべきこと」 をしないで 「やりたいこと」 をしていないか? 

 

 ③ 成果をあげる人とあげない人の差は、才能ではない。
   いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である。
 ④ 成果をあげる人たちは、気性や能力、職種や仕事のやり方、性格や知識において千差万別である。
   共通点は、なすべきことを成し遂げる能力をもっていることだけである。

 

 ③ 〜 ④ も、ドラッカーの言葉です。
 つまり 「やりたいこと」 をやめて、「やるべきこと」 をする。
 このような習慣を身につけようと、いうことです。
 成功できない人や、成功が長続きしない人は、この部分に問題があるのではないでしょうか。

 

 成果をあげるためには、「特別な才能」 など必要ありません。
 求められるのは 「やるべきことをやる習慣」 をもつこと。

 さらに「やるべきこと」 の 1 つに 「必要な知識を吸収すること」 があります。
 その原因と考えられるのは、次の「3つの社会の変化」 ではないでしょうか。

 

 

4.肉体労働社会から知識労働社会へ 

 

 知識労働者とは、ドラッカーの著書に出てくる言葉です。
 肉体労働者は、肉体を使って、形やモノとして成果を生み出します。
 しかし、知識労働者は、既存の知識を利用して、新しい知識、アイデア、情報アイデアを、成果として生み出します。

 1 つ目の原因は、この 「肉体労働から知識労働への移行」 があげられます。

 

 肉体労働においては、経験から身に付くカンやコツがモノを言います。
 これらは知恵と呼ばれることもあり、経験者にアドバンテージをもたらしました。
 しかし、知識労働社会においては、常に新しい知識が必要になります。
 変化が激しい今日においては、過去の知識も必要ですが、それ以上に新しい知識の吸収が求められます。

 

 たとえば医療の世界は、めまぐるしく進歩しています。
 以前、有効と言われた治療法が、今日では悪化の原因とされることもあります。

 だから、新しい知識を持たない医師を信じると、寿命を縮める 恐れもあります。
 いくら明るく、親切で、前向きでも、駄目なものは駄目なのです。

 

 

5.情報化社会による影響 

 

 2 つ目の原因は、「情報化社会の急速な発展」 があげられます。
 世の中には 知っているかどうかだけで、成否が決まる ことが少なくありません。
 たとえばバブル崩壊や株価暴落、エネルギーの買取価格や、薬の副作用など。
 「どうしてそうなるのか」 はわからなくても、「こうすべきである」 「何を選ぶべきか」 などがわかれば十分です。

 

 情報が乏しい時代には、このような知識はごく一部の人のもの でした。
 ところが今日の情報化社会では、多くの知識が公開されています。
 世界的に優れた人の知恵でさえ、知識として入手することが可能になりました。
 たとえば本であれば、2 千円程度で購入できます。

 

 ここで知恵と知識の関係について考えてみましょう。
 知恵には 100% 独自のものなどなく、すべて既存の知恵が、複数、組み合わされたものです。
 また知恵は、単独に生み出されるものではなく、背景にある知識を根拠としています。

 つまり 優れた知恵を知識として、たくさん採り入れることが、優れた知恵を生み出す秘訣 とも言えます。

 

 

6.「根拠のある話」 と 「根拠のない話」 を聞き分ける 

 

 数年前、あるセミナーに義理で参加させられました。
 講師は高額な教材を販売する会社の社長で、お金儲けに非常に熱心な人でした。
 根拠のない説明が続いたため、ドラッカーのマネジメント論に基づいて見解を述べたところ ・・・
 「個人的な意見は控えてください」 と言われました。

 

 単なる事実のみを語る発言などありえません。
 必ず自分の意思、願望、知恵などが反映されるものです。

 根拠となる知識が乏しいと、発言は思いつき、願望、出まかせ になります。
 だから 「根拠のある話をする人」 と 「根拠のない話をする人」 を区別する必要があります。

 

 根拠を求める習慣を身につけて以来、その違いが少しずつ見分けられるようになりました。
 根拠のない話は、うわさ話のレベルに過ぎない ので、信用できるものではありません。
 また多くは時間の浪費になります。
 このセミナー、多忙を理由に中断させてもらいましたが、その後まもなく閉鎖されたそうです。

 

 

7.仕事の標準化と I T 化による影響 

 

 3 つ目の原因は、「一般的な仕事の変化」 ではないでしょうか。
 多くの職種で効率化が求められ、業務の標準化と I T 化が進んでいます。

 これにより、マニュアルやソフトに沿って作業をすれば、誰もが合格レベルの仕事ができる ようになりつつあります。
 そこに求められるのは、知恵 (判断力) よりも、トレーニングではないでしょうか。

 

 マニュアルやソフトに関する知識を吸収して、繰り返しトレーニングをする。
 これが、成果をあげるために、取るべき行動です。

 つまり 一般的な仕事には、特殊な才能など求められなくなった ということです。
 雇用する側にとっては、普通の能力の人で十分になり、人材を確保しやすくなりました。

 

 以上より、成果をあげるためには、知識を使いこなす、つまり ① 〜 ③ を習慣とすべきと考えられます。
 ① 必要な分野に関する優れた知識を収集して蓄える
 ② これらの知識を根拠に、新しい知恵を生み出す
 ③ その知恵を実践に移して、トレーニングを積む (結果 → 反省 → 改善 → 再挑戦)

 

 

8.なぜ自分の考えに固執するのか? 

 

 過去の経験から言うと、自分の考えに固執する人ほど、不調が長引きます。
 調子がよくない自分に固執するのですから、当たり前と言えば、当たり前の話ですが。

 根本的な問題は、根拠となる知識が乏しい 点にあります。
 その結果 「知恵も出ない」、だから 「今の自分の考えに固執するしかない」 という悪循環にはまっています。

 

 今の自分の考えとは、過去に蓄積された知識が根拠になっています。
 だから、そこから生まれる知恵は、今の自分のレベルを超えるものではありません。

 胸に手を当てて、自分の主張の根拠はどこにあるのか、想像して下さい。
 それが過去の経験や、周囲の人の話であれば、一刻も早く改めることです。

 

 ここから抜け出すためには、より広い社会で通用する、より優れた知識を、大量に集める 必要があります。
 たとえば売上を増やしたいなら、販売、営業またはマーケティングの知識を増やすべきです。
 すると、これらの知識を根拠に、売上を増やすために必要な知恵が、湧き出てくるものです。
 社会は常に変化しているため、もし成果があがっても、次に備えて、知識の収集と吸収を続けることです。

 

 

9.成功と失敗の原因を特定する 

 

 知識に根拠を求める経営の重要性について、もう 1 つお話しします。
 それは 「成功を継続させる」 「失敗を繰り返さない」 ためです。
 知識に根拠を求めると、原因を特定しやすくなります。
 すると、成功を継続させたり、失敗を早期に終わらせることができます。

 

 日頃から根拠を求める習慣が身につくと、原因の特定が容易 になります。
 たとえば本を読みながら、○ ○ 理論を根拠に、経営を進めた場合 ・・・
 成功の原因も、失敗の原因も、立ち直り方も、そこに書かれています。
 経営判断を下す上で、これが大きな助けになります。

 

 反対に根拠のない自己流経営は、目隠しをしながら、街中を歩いているようなものです。
 「自分のしていることが、どんな意味なのか」 わからないまま、成功と失敗を繰り返します。

 根拠となる知識が乏しければ、いくら考えても無駄に終わる ことでしょう。
 その間に時間は刻々と過ぎ、迷路の奥深くに入り込んでしまいます。

 

 

10.「やりたいこと」 をやめて 「やるべきこと」 をする 

 

 根拠もなく、突然の思いつきで、大きな成功を手にする。
 それは天才の世界の話ですが、世の中に存在する確率は、1 万人に 1 人くらいでしょうか。
 だから日常、接することもありません。
 一生、出会わない人もいるかもしれません。

 

 私たちが過ごす社会は、残り 99.99% の普通の人で構成されています。
 そこでビジネスも展開されています。
 また、この中にいる人々はどうかと言うと ・・・

 潜在能力にはほとんど差がなく、成果の差は基本的な習慣を身につけたかどうかで決まる ようです。

 

 一般の人が天才、つまり特別な人を目指しても、限りなく不可能です。
 しかし 「自分は普通の人」 と自覚して、正しい習慣を身につければ、「成果をあげる」 ことは可能です。
 ドラッカーの言うとおり、それは「あきれるほどに単純なもの」かもしれません。

 まずは 「やりたいこと」 をやめて、「やるべきこと」 を続ける、この習慣を身につけたい ものです。

 


  ※ 参考文献 
  P.F.ドラッカー著 仕事の哲学経営者の条件

2016年の相続税対策(不動産編)  2015.09.30

1.相続税はどれだけ増えたのか ? 

 

 2015 年 1 月 1 日に、相続税法が改正されました。
 そのうち、減税をもたらす、おもな要素が 「小規模宅地の改正」。
 増税をもたらす、おもな要素が 「基礎控除の縮小」 と 「税率変更」。

 簡単に言えば、自宅の土地が大きな場合は、減税額が増えたものの、全体的には 「大きな増税」 と考えてください。

 

 最も大きな影響を及ぼす、「基礎控除の縮小」 による影響は、次のとおりです。
  ■ 4人家族 (夫婦+子供2人) のうち、夫が亡くなった場合
  改正前は、8,000 万円を超える財産を有すると、相続税が課されました。
  改正後は、4,800 万円を超える財産を有すると、相続税が課されます。

 
 
  ■具体的な税額 (増加の影響がわかりやすいように、あえて妻が相続しないケース)
   ①財産の評価額が  1億円の場合       200万円 (改正前の相続税額)  →      630万円(改正後の相続税額)
   ②財産の評価額が 10億円の場合  3億3300万円 (改正前の相続税額) → 3億5620万円(改正後の相続税額)

  ※ 財産が多くなるほど、増加額が大きくなりますが、増加率は小さくなります。

 

 

2.世にも危険な節税ブーム 

 

 最近、なぜか、相続税の節税ブームです。
  しかし、本来、ブームになるような、性質のものではありません。
 ブームとは、一般の方まで巻き込んで、流行るものです。

 これに対して、相続税の節税は、複雑で難しく、安易に進めるべきものではない からです。

 

 従って、現在の節税ブームは、一部の者によって、意図的に作られたもの
 つまり、今回の相続税増税を、ビジネスチャンスにしたい人たちによるもの、と考えられます。
 それは、恐らく、税理士ではないでしょう。
 税理士は、責任を負う立場にあるため、急激な仕事の増加は、むしろ、避けたいところです。

 

 一方、被害者になるのは、納税者 です。
 悪質な取引に乗り、将来、窮地におちいって、いただきたくない。
 意味のない節税対策のために、大きなリスクを背負わないで、いただきたい。
 このような思いから、相続税節税の注意点について、お話しをします。

 

 

3.コーポやアパートの建設 

 

 今回の相続税増税を、ビジネスチャンスとして、最も歓迎しているのは、誰でしょうか。
 それは、建設業者と銀行、ではないでしょうか。
   両者は、税金の専門家ではありません。

 自社の利益のために、リスクの高い節税対策を、勧める 可能性もあります。

 

 よく目にするのは、「土地の上に、借金をして、コーポやアパートを建てると、相続税が減る」 というものです。
  なぜ、相続税が減るのでしょうか。
 それは、土地、建物、借金の、評価方法によります。
 土地と建物は低く、借金は残高がそのまま、評価されるため、多くのケースで、差引マイナスになるからです。

 

 平均的な住宅地で、1億円の土地の上に、1億円の借金をして、アパートを建てたとします。
 この家主が、借金の残高 8000 万円の時点で亡くなった場合、相続税の評価額は、たとえば・・・
 ① 土地 8500万円  ② 建物 5000万円  ③ 借金 8000万円   ①+②−③ = 5500 万円 (課税財産)

  もし 何もしなければ、課税財産は土地 1 億円なので、差引 4500 万円の課税財産が減った ことになります。

 

 

4.税金は減っても、それ以上に増える借金  

 

 課税財産の評価が、4500 万円減った場合、相続税率が 30% なら、1350 万円の相続税が減ります。 ただし、配偶者が財産の半分を相続する場合は、半分の 675 万円しか、相続税は減りません。
 実際に、相続税が減るので、節税の話として、嘘とは言えませんが、その代わり借金が増えます。
 前述のケースでは、亡くなった時点で比較すると、借金が 8000 万円も増えています。

 

 たった 675万円 の相続税を減らすために、なぜ 8000 万円も、借金を増やすのでしょうか。
 お金の支払先が一部、国から銀行へ変わっただけで、しかも総額は増えています。
 収入も増えていますが、どこまで保証されるものでしょうか。
 もし収入が減れば、借金の返済ができなくなる、恐れもあります。

 

 私の事務所の顧客には、資産家の方が少なくありません。 中には、賃貸物件のオーナーを、長く続けている方もみえます。
 このような方たちに、ご意見をうかがうと、「絶対にこのような節税方法は採らない」 と言われます。
 なぜでしょうか。

 

 

5.人口減少と供給過剰 

 

 前述のような相続税対策が進むと、コーポやアパートのような、安価な賃貸住宅が、乱立することになります。 しかし、一方で、日本の人口は減りつづけるため、空室率はどんどん上がります。
 当初の 返済計画は、高い入居率で計算してありますが、最後まで、維持できるのでしょうか。
 先輩オーナーの方たちは、すでに供給過剰の中、同業者の苦労を見たり、自ら苦労を経験されたようです。

 

   私が、特に疑問に思うのは、「家賃保証」 と 「30年一括借上」 のケースです。
 ここには、建設会社が損をすることなく、儲かる仕組みが隠れています。
 「家主さんは、何もしなくていい」。
 この言葉に、踊らされることなく、以下の点にもご注意下さい。

 

 ① 建設費が高額なので、建設会社はすでに暴利を得ている
 ② 入居者が支払う家賃から、天引きされるため、建設会社はここでも利益を得ている
 ③ 保証される家賃は、数年ごとに見直されるため、入居率によって、どんどん下がる恐れもある
 ④ 修繕も、必ず建設会社を通さなければならないため、割高になる

 

 

6.「家賃保証」 「30年一括借上」 の本当の意味は ? 

 

 ① の建設費と、④ の修繕費ですが、事情に詳しい不動産業者に聞くと、相当、割高のようです。
 また、30 年一括借上と言っても、極細の金属造の場合、耐用年数は 19 年です。
 そこまでいかなくても、10 年も経てば、修理の必要性が出てきます。

 建設会社は、当初の建設費でボロ儲けし、10 年以降は、修繕でボロ儲け、それを 30 年満期まで続けます。

 

 次に ② の家賃保証ですが、詳しい不動産業者に聞くと、そこにも罠が仕組まれているようです。
 つまり、最初の 10 年は、一般の人でも、満室にするのは、決して難しくない そうです。
 また、③ の家賃の見直しについては、定期的に行われます。
 入居率が下がる度に、保証される家賃が下がると、考えてください。

 

 30 年後、日本の人口は、約 2050 万人減ると、予測されています。
 また、供給過剰が進むため、家賃は下がり、多くの人が、コーポではなく、賃貸マンションに住める可能性 もあります。
 さらに、耐用年数 19 年の物件は、劣化も早いため、家賃を下げても、入居率が下がる恐れがあります。
 このようなケースでは、すでに訴訟も起きているそうです。

 


7.意見を聞くなら第三者である専門家  

 

 未知の問題に出会ったとき、よほどの人以外は、1人で判断するのを、避けるべきです。
 だからと言って、専門家でもない、周囲の人に聞くのも、まったくの的はずれ。
 「同業者はこの方法で税金が減った」、このような話を、真に受けて、聞かされることがあります。
 ほとんどのケースが違法であり、飲酒運転で、たまたま捕まらないのと、同じレベルの話です。

 

   さらに、株のことを、証券会社に聞くものではありません。
 相手は喜んで、自分の利益になる商品を、勧めてくる でしょう。
 節税や経営のことを、銀行に聞くものではありせん。
 主導権を握られたり、金融商品を押し売りされるなど、ろくなことがないでしょう。

 

 相談するのであれば、利害の外にいる第三者、しかも専門家以外、ありえません。
 今回のケースで、税理士が妥当なのかと言うと、そうとも限りません。
 建設業者から入る紹介料が目的であったり、もともと力不足のケースも、あるからです。

 自分のことを自分で守るためには、日頃から関心を持ち、人を見る目を養う べきではないでしょうか。

 


8.その他の注意点  

 

 不動産に関する相続税対策のうち、安全性が高いのが、「贈与税の配偶者控除」です。
 婚姻期間が 20 年以上あれば、配偶者に 2000 万円以下の居住用財産を贈与しても、贈与税は課されません。
 実際には、通常の非課税枠が年間 110 万円あるため、2110 万円まで、税金がかかりません。
 詳しくは、税務署または税理士に、おたずね下さい。

 

 不動産の贈与を検討する場合は、名義変更時のコストにも、注意したいものです。
 小出しに何度も、名義を変更していると、相続税は減っても、登記に関するコストが、割高 になってしまいます。
 また、不動産取得税は、相続なら非課税ですが、贈与の場合は課されます。
 不動産による相続税対策は、相続税以外の負担も含めて、慎重に進めたいものです。

 

 ここまでは、「暦年課税方式」という方法について、お話ししました。
 実は、贈与税には 「相続時精算課税方式」 という方法 もあります。
 こちらは、収益物件の贈与や、将来、値上がりが確実な財産の贈与に、おもに利用されます。
 「相続時精算課税方式」についても、詳しくは、税務署または税理士に、おたずね下さい。

 


9.「何もしない」 という選択肢  

 

 あらゆる問題に対して、「何もしない」 という選択肢 があります。
 実は、これが、正解であることも、しばしばです。
 私は、積極的に行動するタイプなので、若いころは、行動が裏目に出ることもありました。
 その後は反省し、熟慮するようになり、大半のことに対して、「何もしない」 を、選択するようになりました。

 

 反対に、消極的な人の中には、根拠もなく、「何かをしなければ」 と、焦る人 もいるようです。
 このようなタイプは、リスクが高いかもしれません。
 これまで節税などに関心がなく、知識も理解も浅いのに、業者のセールストークで、突然、目覚めたとき。
 生半可な知識で、突っ走ってしまうケースも、見受けられます。

 

 最近は 10 年先でさえ、見通しが、困難な時代 です。
 世界的なエコノミストでさえ、予測は外れ放題です。
  それにもかかわらず、素人の建設業者や、銀行員の話を信じて、大金をつぎ込むのは、いかがなものでしょうか。
 くれぐれも、ご注意いただきたいものです。

 


  ※ 参考文献 
  神樹兵輔 21世紀ビジョンの会共著 知らないと損する 価格と儲けのカラクリ

売上を増やす方法  2015.08.06

1.売上を増やしたい!

 

 売上を増やしたい。
 しかし、いろいろ、やってみたけど、 効果が出なかった。
 このような声を、耳にします。

 原因は、「正しい方法を知らなかった」、からではないでしょうか。

 

 実は、「売上を増やす方法」 は、明らかにされています。 大別すれば2つ、易しい方が 「マーケティング」 で、難しい方が 「イノベーション」。
 まずは、マーケティングの実践こそが、売上を増やす最善の方法 ではないかと、考えられます。
 思いつきや、ひらめき、願望などから、スタートさせるより、はるかに高い確率で、成功するはずです。

 

 それでは、マーケティングの知識は、どこから、吸収すればよいのでしょうか。
 ビデオ教材やセミナーの中には、内容の割に、高額なものも、少なくありません。
  一方、ビジネス本の多くは、わずか 1,500円 程度で、売られています。
 マーケティングの本を読むこと
から、スタートさせるのが、妥当 ではないでしょうか。

 


2.マーケティング 初心者にも、おすすめの本 

 

 いよいよ、本題ですが ・・・
 売上増加に悩む経営者に、おすすめの本 が出ました。
 中小企業診断士、幸本陽平さんの著書。
  「今ある在庫がみるみる売れる12の方法 です。

 

 この本は、ふつうの言葉で、書かれています。
 だから、専門用語を知らなくても、読むことができます。
  中には、オーソドックスな、マーケティングの方法が、おおむね、網羅されています。
 私が、過去、数年間に読んだ、数多くのマーケティング本の、エッセンスが凝縮されています。

 

  また、紹介されている 12 の方法は、どこからでも、取り組むことができます。
 全部、読むに越したことはありませんが、まずは、目次を見て、気になるところから、スタートしましょう。
 さらに、例示される、企業や製品、サービスなどは、おなじみのものばかりなので、興味を持続させることができます。

 以上より、売上増加のための入門書として、最適 ではないではしょうか。

 


3.どんな方法が、紹介されているのか 

 

 この本で紹介されている 12 の方法は、目次のタイトル になっています。
 ①売る相手を変える     ②売る相手を絞り込む      ③専用品で差別化する
 ④用途を変える         ⑤便益を売る             ⑥課題を解決する
 ⑦マイナスを開示する    ⑧買わない理由を取り除く   ⑨比較対象をつくる
 ⑩繰り返し買ってもらう    ⑪隠れた困りごとを教える   ⑫新しい市場をつくる

 

 まずは、①〜⑫ のタイトルを、声に出して、数回、読んでください。 それだけで、ヒントが浮かぶ方も、いるのではないでしょうか。
 つまり、これらのタイトルは、アイデアの切り口としても、利用できます。
 次に、「当社ならどうすべきか」 へ、発展させたいものです。

 

 ただし、「アイデア」 レベルのものを、過大視してはいけないと、ドラッカーは次のように述べています。
 アイデアは、(イノベーションの) 機会としては、リスクが大きい。
 成功する確率は小さく、失敗する確率は、最も大きい。

 思いつきで突っ走るのではなく、しっかり検証しながら、進めたい ものです。

 


4.商売の基本は 「顧客」 

 

 売上を増やす12の方法のうち、1番目が 「売る相手を変える」 、2番目が 「売る相手を絞り込む」。
 まずは 「売る相手」、つまり 「顧客」 に注目しましょう。
 ドラッカーが、「事業の目的は顧客の創造」 と主張するように、これが商売の鉄則です。
 いくら、よい商品やサービスであっても、顧客が求めなければ、事業として、成り立たないからです。

 

  つまり、自社の製品やサービスを、「誰に売るのか」、つまり 「顧客は誰なのか」 を、明確にとらえる必要があります。
 飲食店であれば、これによって ・・・
 店舗の立地、内装、外装、家具、空間から、料理の味、量、メニュー、価格、食器などが、決まります。

 顧客の絞り込みができていないと、これらがバラバラになり、顧客は、違和感を覚える ものです

 

 たとえば、一般的な住宅街で、飲食店を始めるならば、顧客は 「ファミリー層」 ではないでしょうか。
 さらに詳しく分析し、若年層向けなのか、高齢者向けなのかによって、価格やメニュー、設備などを選択したいものです。
 しかし、ここで、大人向けの店にしてしまうと、顧客数は望めなくなります。

 立地条件は、投資額も大きく、後々、変更が難しいため、慎重に決定 しなければいけません。

 


5.売る相手を 「変える」 とは 

 

 ところで、品質さえよければ、常に売れるのでしょうか。
 この本で、紹介されているのは、1 本 2 千円の鉛筆。
 この鉛筆、一般人にとっては、ほとんど価値がありません。
 私自身もシャープペン派なので、一生、買うことはないでしょう。

 

 しかし、デザイナーや設計士には、好評なのだそうです。
 ポイントは ・・・
 その品質が 「誰にとってよいのか」 「誰が価値を感じるのか」 にあります。

 つまり、買う相手によって、商品やサービスの価値が変わる ことを、理解すべきでしょう。

 

 これまで若い男性向けに売ろうとしたが、今ひとつ売れない商品があったとします。
 これを、「高齢者や女性には売れないか」など、発想の転換が必要です。
 また、「売る」 のではなく、「貸す」 「買い取る」 「使用方法・販売方法の教室を開く」など。

 固定観念から離れる習慣を、身につけたい ものです。

 

 

6.「販売」 と 「マーケティング」 の違い 

 

 ドラッカーは、販売とマーケティングについて、次のように (要約) 述べています。
 販売とマーケティングは、逆である。
  「販売」 は、自分たちの製品からスタートし、自分たちの市場を探している。
  「マーケティング」 は、顧客の現実、欲求、価値からスタートする。

 

 自社の製品やサービスを、必死に売り込む営業マンがいますが、彼らが実践しているのが、「販売」 です。
  「販売」 が盛んな会社の営業マンは、顧客から、嫌われます。
 一方、顧客の要望を、あらかじめ把握し、製品やサービスをそろえるのが、「マーケティング」 です。
  「マーケティング」 に優れた会社の営業マンは、知識や助言を提供する専門家として、顧客から、頼りにされます。

 

 さらに、ドラッカーは述べています。
 マーケティングの理想は、販売を不要にすること。
 つまり、売り込まなくても、売れる仕組みをつくるのが、マーケティングの目標と言えます。
 その方法は、書店に行けば、1,500 円程度で、売られています。

 


7.「マーケティング」 と 「イノベーション」 の違い 

 

 冒頭で、「売上を増やす方法」 には、2つある。
 易しい方が 「マーケティング」 、難しい方が 「イノベーション」 と、述べました。
 ここで、両者の違いについて、少しだけ、触れておきます。

 なぜなら、マーケティングだけでは、やがて行き詰まってしまう からです。

 

 両者の最も大きな違いは、ターゲットとする顧客層にあります。
 マーケティングは、自社や同業他社、つまり、既に市場で購入している顧客層を、ターゲットにします。

 一方、イノベーションは、これまで購入しなかった顧客層を、新たなターゲット にします。
 産業が成熟化し、市場が縮小化しつつあるとき、求められるものです。

 

  イノベーションという言葉を、最初に使い始めたのは、経済学者のシュンペーターと言われています。
 シュンペーターは、イノベーションの本質は、「新結合」 にあると、述べています。

 新結合とは、自社に異業種の要素などを採り入れて、新たなカテゴリーをつくり出す、ようなもの、ではないでしょうか。
 この本で紹介されている方法のうち、12番には、このイノベーションの内容も含まれています。

 

 
8.売上増加に、特殊な才能はいらない 

 

 売上を増やしたい。
 多くの経営者が、努力しますが、うまくいきません。
 その原因は、「正しい方法」 を知らなかった、からではないでしょうか。
 実は、その方法は、身近なところで、しかも安価に、手に入れる ことができます。

 

 さらに、中小企業が必要とする、規模の収益であれば、特殊な才能などなくても、実現可能です。
 マーケティング理論をベースに、実践するのが、一番の近道です。
 自分の中にある、主観、願望、偏見を捨てて、正面から、これらの理解に努める。
 実践に移して、うまくいかなければ、改善して、再挑戦する ・・・ この繰り返しではないでしょうか。 

 

 しかし、この事実に気づいている人は、ごく少数に、限られます。
 だからこそ、実践すれば、早い段階で、成果に結びつく可能性 があります。
 その入門書として、幸本陽平著 今ある在庫がみるみる売れる12の方法 は、とてもよい本です。
 売上に関して、悩みのある方は、ぜひ、一読されてみては、いかがでしょうか。

 

 

 ※参考文献

 幸本陽平著 今ある在庫がみるみる売れる 12 の方法
  P.F.ドラッカー著  経営の哲学」 「マネジメント(エッセンシャル版)
  中野明著 シュンペーターの経済学がよくわかる本

 

  ※参考記事

    マーケティングの基本  2017.07.08-16

人を育てる時代  2015.05.06

人手不足の時代 

 

 中小企業の人手不足が、深刻化しつつあります。
 原因としては ・・・
 アベノミク、第 1 の矢である、大胆な金融緩和によって、円安傾向が続いています。

 これに伴い、好調な輸出企業に、人材が向かっています。

 

 また、労働人口の減少や、労働規制の強化により、賃金が高騰しています。
  最低賃金を、「時給 1,500 円にしよう」 という運動が、世界中で起きているそうです。
 しかし、諸外国は、解雇しやすく、再就職しやすい環境が、整っています。

 反対に、日本は、解雇しにくく、再就職も難しいので、うまくいかない のではないでしょうか。

 

 さらに、労働に対する考え方について、世代間のギャップが、大きく開いています。
 何度も、転職したあげく、非正規雇用者として、経済的に苦しい生活を、強いられる 人も、少なくありません。
 悪いのは、政治なのか、行政なのか、企業なのか、本人なのか、本人を育てた親なのか。
 犯人探しをしても、不毛ですから、まずは、これを現実として、受け入れることでしょう。

 


.好調を維持する会社とは ?

 

 このような状況の中で、労働力を確保するためには、どうすればよいのでしょうか。
 すべて、ロボット化できるなら、労働基準法の改正、社会保険の高騰、各種ハラスメント問題など、すべてクリアできます。
 しかし、多くの中小企業にとって、それは、不可能です。

 だから、求められるのは ・・・ 「人を育てること」 ではないでしょうか。

 

 私は、税理士として、22 年目に入りました。
 父の代から、数えても、45 年間、中小企業とお付き合いがあります。

 その中で、長期間、成長を続ける会社、好調を維持する会社、健全性のある会社には、共通点 があることに気づきました。
 それは、人が育っていることです。

 

 これらの企業に残り、今も働き続ける従業員とは、どのような人たちなのでしょうか。
 それは、高学歴でもなければ、特に秀でた人たちではありません。
 普通の人たちです。

 普通の人たちが、こつこつと努力を続け、企業の業績と、自分たちの生活を、支えています。

 


3.「人を育てる」 が、ベストの方法

 

 普通の人が、こつこつと努力する企業が、長期間、繁栄する。
 ここから、2つの理由が、考えられます。
  ① 多くの人の能力には、大きな差がない。
 ② 多くの仕事は、特別な才能など必要としない。

 

 「① 多くの人の能力には、大差ない」 について ・・・
 世の中には、天才的な人が存在します。
 それは、決して、他人が真似できるものではありませんが、人口に占める割合は、わずか1%未満でしょう。

 残り 99% 以上の人は、潜在能力に大きな差がありません。

 

 「② 多くの仕事は、特別な才能など不要」 について・・・
 たとえば、最終合格率 2 %の、税理士試験合格に求められる計算力は、小学生の算数レベルです。

 多くの仕事に求められる能力は、当たり前の能力を、複数、組み合わせたもの ではないでしょうか。
 これら 2 つの理由を理解すれば、人を育てることがベスト、かつ、実現しやすい方法ではないかと、考えられます

 


4.好ましい人間関係とは ?

 

 従業員が育つためには、企業内の人間関係が、好ましいものであるべきです。
 もちろん、対立していてもいけませんが、生産性の低い 「なれ合いの関係」 でも、いけません。
 どうすれば、緊張感を維持しながら、信頼関係を築くことができるのでしょうか。

 それは、共通の目的や目標を持ち、それに向かって、協力しあう体質 を築くことでしょう。

 

 職場に限らず、あらゆる人間関係において、好ましさが、求められます。
 世界的なベストセラー、スティーブン・R・コヴィー著7つの習慣には、6 つの人間関係が、紹介されています。

 

 ① Win−Win     ・・・・・ 自分も勝ち、相手も勝つ
  ② Win−Lose   ・・・・・ 自分は勝ち、相手は負ける (よくいる強欲な人)
  ③ Lose−Win   ・・・・・ 自分が負けて、相手が勝つ (自己犠牲に酔いしれる)

  ④ Lose−Lose  ・・・・・ 自分も負けて、相手も負ける (いわゆる腐れ縁)
  ⑤ Win               ・・・・・ 自分の勝ちだけを考える (他者に無関心な人)
  ⑥ No Deal        ・・・・・ 取引をしない

 


5.従業員と 「Win−Winの関係」 を目指す

 

 スティーブン・R・コヴィーは、著書の中で、次の2つを勧めています。
  ① Win−Win     ・・・・・ 自分も勝ち、相手も勝つ
  ⑥ No Deal       ・・・・・ 取引をしない

  つまり、「① Win−Win」 が成立しなければ、「⑥ No Deal」 です。

 

 世の中には、自分の勝ちのために、相手に損をさせる 「②Win−Lose」 の人も、少なくありません。
 しかし、会社内に存在する、分配可能な利益や権限は、限られています。

 「② Win−Lose」 では、これを奪い合うことになり、企業全体の成長は、置き去り にされます。
 「自分が勝ちたい」 だけでは、未成年状態から、進歩のない発想とも言えます。

 

 一方、「① Win−Win」 のためには、利害関係が対立する者が、お互いに了承し、妥協できる 「第3の案」 が求められます。
 つまり、頭を使わなければいけません。

  さらに、お互いの妥協部分を、小さくするためには、企業全体の利益を、拡大する 必要があります。
 ここに、共通の目的、目標が、存在するのではないでしょうか。

 


6.しかし 「利益」 を目的にしてはいけない理由

 

 事業の目的は、顧客の創造。
  これは、P.F.ドラッカー の言葉の中でも、「超」 がつくほど、有名なものです。
 企業がモノを作ったり、サービスを用意するだけでは、事業と言えません。
 顧客が、それを求めなければ、事業にならない、ということです。

 

 さらに、「利益を事業の目的にしてはならない」 とまで、述べています。
 なぜでしょうか。
 その 1 つとして、経営者と従業員、従業員と従業員の間で、利害関係の対立が、発生することが、挙げられています。
 企業にとって、利益は 「将来のための原資」 になりますが、目的ではないということです。

 

 経営者の中には、「利益追求」 のみを、声高く叫ぶ 人もいます。
 それによって、従業員は、どんどん利己的になっていくのかもしれません。
 利益を目的にすると、法律やルールを、無視してしまう恐れもあります。
 このような間違いは、決して、犯すべきではありません。

 


7.「仕事」 と 「労働」 の違い

 

 ドラッカーは、「仕事」 と 「労働」 を分けて、考えます。
  「仕事」 に対する視点は、「モノ」 であり、目標は 「生産性の高い仕事」。
 「労働」 に対する視点は、「人」 であり、目標は 「生き生きとした労働」です。
  この違いを、理解して、進めるべきでしょう。

 

 P.F.ドラッカー著マネジメント・エッセンシャル版 によれば ・・・
 仕事とは、一般的、かつ、客観的な存在、課題として、存在するものである。
 したがって仕事には、ものに対するアプローチをそのまま適用できる。
 そこには論理があるため、分析と総合と管理の対象となる。

 

 「仕事」 はモノと同じように、合理的に、理詰めによって、攻めればよいのでしょう。
 反対に、「労働」 は、生身の感情を持った人間が、行います。
 だから、そこには 「やり甲斐」 など、理屈だけでは割り切れないものが、必要になります。

 しかし、この 「やり甲斐」 が、最終的に、企業の成長を、支えている のではないでしょうか。

 


8.管理コストを減らす方法

 

 人間は、労働に対して、やり甲斐を見いだすと、自主的、自発的に、働く ようになります。
 社会や社内のルールも、自ら守るようになります。
 だから、管理コストを、縮小することができます。
 反対に、賃金のためだけに、必要最低限以下の労働しかしない人には、管理が必要になります。

 

 たった数名の中小企業で、従業員の管理に、経営者が神経をとがらせるのは、馬鹿げています。
  その時間と労力、お金を、生産性に向けるべきです。

 そのために、話し合いも必要ですが、処遇で差を付けるのも、有効 ではないでしょうか。
 具体的には、賞与、昇給、役職などです。

 

 また、技術の習得のために、手取り足取り教えれば、あるレベルまでは、上達が速いようです。
 しかし、ある時期で成長が止まります。
 さらに、自主性や自発性が育まれないため、いつまで経っても、誰かが教えなければいけません。

 だから、ある程度、従業員をほかっておくことも、必要 ではないでしょうか。

 


9.生き生きとした労働を考える上での 5 つの次元 

 

 生き生きとした労働を実現させるためには、どうすればよいのでしょうか。
 ドラッカーは、次の 5 つの次元、すべてに注意を払う必要がある と述べています。
 高い賃金の支払いが、困難な今、「④ 経済的次元」 以外に配慮することが、より求められる時代になったのではないでしょうか。

 

 「生理的次元」 では、1つの作業よりも、複数の作業を組み合わせて、変化を持たせること
 ② 「心理的次元」 では、労働を通じて、自分の存在価値や、人間性に気づかせること
 ③ 「社会的次元」 では、労働を通じて、様々な人や社会と、つながりを持たせること
 ④ 「経済的次元」 では、自分や家族の生活を守るための、経済的基盤であること
 ⑤ 「政治的次元」 では、会社内で健全な権力関係を維持させること

 

 組織は、異なる人間の集まりです。
 だから、大変でもあるし、より大きなものを生む、可能性も高まる訳です。

 そのためには、生身の人間である、自分と従業員を、うまくマネジメント しなければいけません。
 それこそが、経営者の重要な課題と、言えるのではないでしょうか。

 


10.人こそ 「最大の財産」

 

 「人こそ最大の資産である」 という。
 「組織の違いは人の働きだけである」 ともいう。
 事実、人以外の資源はすべて同じように使われている。
 あらゆる資源のうち、人がもっとも活用されず、その潜在能力も開発されていない。

 

 これも、ドラッカーの言葉です。 
 高額なパソコンほど、高性能であることは明らかです。
 しかし、その価格差に見合ったパフォーマンスを引き出せるかどうかは、使用する人によって決まります。

 さらに、いくら 能力が高くても、労働に対して、意欲がなければ、その能力を活かすこともできません。

 

 長期的な企業の繁栄のためのポイントは、どこにあるのでしょうか。
 設備や教育コストでもなければ、学歴や能力でもありません。
 人そのものが、仕事にやりがいを感じられるかどうか、にあります。

 それは、経営者が、労働者 1 人 1 人 を、人間として考えられるかどうか、によるのではないでしょうか。

 


※参考文献

  スティーブン・R・コヴィー著7つの習慣」 「第3の案
  P.F.ドラッカー著 「経営の哲学」 「仕事の哲学」 「マネジメント (エッセンシャル版)

2015年のキーワードは 「個人の成長」  2014.10.26

1.人生を成功させるために、本当に必要なものは何か ?

 

 今年で、54歳。  年を取るのも悪くない ・・・ 最近、このように感じています。
 なぜなら、 人生や世の中の、正しい姿が、少しずつ見えてくる からです。
 おかげで、正確に判断できることが、増えてきました。

 

 50代に入って、見えてきたものとは・・・
  たとえば、 「人生を成功させるために、本当に必要なものは何か」 。
 多くの人は、 「お金」 「学歴」 「家柄」 「外見」 「性格」 などと、考えるかもしれません。
  しかし、そうではないと、確信できるようになりました。

 

  もちろん、これらの要素も影響しますが、トランプで言えば、カードに過ぎません。
 ところが、人生ゲームは、単一種目ではなく、多種目です。
 エースが、有利に働くこともあれば、不利に働くこともあります。
 つまり、高学歴が幸いして、高収入を得る人もいれば、高学歴が災いして、就職できない人もいます。

 


2.成長が止まると、仕事がつまらなくなる

 

 それでは、人生を成功させるために、本当に必要なものは、何でしょうか。
 私は、 「成長」 も、その1つと考えています。

 成功を続けている人は、年齢に関係なく、成長も続けています。
  高齢になっても、好奇心旺盛で、しかも自分を磨き続けています。

 

  反対に、20代以降、どんどん覇気が失われていく人も、めずらしくありません。
 よくよく見ると、成長が止まっています。
 成長が止まると、仕事に楽しみが、見い出せなくなります。
  つまり、仕事をする目的が、働きがいではなく、お金や社交になってしまいます。

 

  多くの人は、仕事をしなければ、生活を維持することができません。 
  また、通勤なども含めると、人生のうち、起きている時間の大半は、仕事に関わっています。
  だから、仕事がつまらなくなると、人生の大半がつまらなくなります。
 つまらない人生を、 「成功」 と呼ぶことはできないでしょう。

 


3.日本の経済成長率は、世界最低クラス

 

 経済評論家の中には、ペテン師のような人もいます。
 過去にその言葉を信じて、億単位の財産を失った方も、みえるのではないでしょうか。
 ペテン師が誰なのかを知りたければ、Amazon の本のレビューなどを参考にされると、よいでしょう。
 どの分野でもそうですが、一人の人間を崇拝するのは、極めてリスクが高いと考えられます。

  
  「日本経済のシナリオ の著者、高橋洋一さんと、竹中平蔵さんについては、大変、信頼が置けます。
  この本によれば、日本の、過去20年間の経済成長率は、恐ろしいことになっています。
 OECD加盟34カ国の中で、最下位。
 世界約200カ国の中でも、最下位クラスです。

 

  1人当たりのGDPについても、先進30カ国中、約20番目
  世界は、もっと豊かだということに、気づかなければいけません。
 現在は、過去の財産を、食いつぶしている状態です。

 このままでは、社会保障すら、まともに受けられない、貧しい社会が到来する ことでしょう。

 


4.日本経済は、成長しなくてもよいのか ?

 

 「日本経済は成熟したから、もう成長しなくていい」 と、まことしやかに語る人もいます。
 しかし、このまま進むと、貧困国家になります。
 つまり、今の日本は、 「成熟」 ではなく 「衰退」 と呼ぶべきです。
 「衰退」 の後に待っているのは、 「貧困」 ではないでしょうか。

 

 すでに、出産さえ、まともにできない地域が、出てきています。
 この状態から抜け出すために、必要なものは何でしょうか。
 高橋さんも、竹中さんも、 「成長」 と、述べています。

 必要なのは、驚異的な成長ではなく、世界レベルでいう 「当たり前の成長」 です。

 

 1950年のアルゼンチンの1人当たりのGDPは、フランスより高かったそうです。
 ところが、今、フランスの1人当たりのGDPは、アルゼンチンの2.4倍と、逆転しています。
 この間の、フランスとアルゼンチンの平均成長率の差は、1.5〜1.6 程度と、高いものではありません。
  つまり、 「日本経済はゼロ成長でもいい」 は嘘で、常識的な成長は、必ず維持しなければならないのです。

 


5.まずは、日本人1人1人が成長を目指す

 

 日本経済を成長させるためにも、まずは、日本人1人1人が、成長を目指さなくてはいけません。
 政治や行政に任せきりにするのではなく、個人も、自ら積極的に、成長を目指すべきです。
 ところが、日本に住んでいると、世の中の風潮もあり、つい 「もう成長しなくていい」 という気分になります。
 世界的に見ると、これは、怠けるための口実としか、聞こえないのではないでしょうか。

 

 特に、 高学歴者の低迷と堕落ぶりが、目立ちます。
 よい学校を出ているのに、どうして、こんな低収入しか、得られないのか。
 さらに、内面的に幼なかったり、くだらない犯罪を、犯してしまうのか。
 成長していた 30年前の日本では、想像できない状況に、陥っています。

 

 このような人材を、実は 「貴重な資源」 と考えています。
 磨けば光るはずなので、成長に目覚めれば、日本全体も豊かになるはずです。
 ところが、大きな岩のように、断固として、現在の自分から、変わろうとしません。
 さらに、慣れたせいか、あきらめたのか、正当化させるためなのか、 「これで幸せ」 などと、開き直る人もいます。

 


6.学生と社会人の勉強の違い

 

 現在の日本では、多くの人が、 「20代前半で、成長が止まってしまう」 のではないでしょうか。
 学校を経て、就職後、数年までは成長しますが、それ以降、大きく失速します。
 一番の原因は、 「勉強しなくなること」 にあると、考えられます。
 この状態を改善するためには、 「学生と社会人の勉強の違い」 を、理解する必要があります。

  
  社会に出るまでの受験勉強には、次の特徴があります。
 ①実際にはほとんど役立たない  ②テーマと教材は目の前にある  ③周囲から 「やれ」 と強制される
 社会人になった後の勉強には、次の特徴があります。
  ①実際に役に立つ  ②テーマと教材は自分でさがす  ③自主的に取り組まなければならない

 

  「学生の勉強」 と 「社会人の勉強」 は、①〜③、すべてにおいて、反対と言えます。
 社会人になったら、実際に役立つことを、自分で見つけ、自主的に取り組まなければいけません。
 これを続けることが、できるかどうかによって、成長を続けることが、できるかどうかが、決まります。
 反対に、必要な勉強を避け、要領や保身に長けることを、成長と考える人が多ければ、当然、社会のモラルも低下します。

 

 

7.ところで 「成長」 って、何なのか ?

 

 ところで、成長とは、本質的に、どういうことを言うのでしょうか。
 私は、シンプルに 「よい方向へ、自分が変わること」 と、考えています。
 ポイントは、 「変化が伴う」 こと、さらに 「悪い方向ではない」 こと。
 これら2つは、必ず押さえたいところです。

 

 「変化が伴う」 とは、今の自分から変わらなければならない、ということです。
 だから、岩のように現在の自分から動かないのは、成長を拒否していると言えます。
  また、 「よい方向」 とは、自分にとっても、社会にとっても、 「WinWin の関係 (両者に利益をもたらす関係) 」 を、目指すことです。
 自分だけではなく、社会にとって有益であれば、その成功は、長期にわたり、安定をもたらします。

 

  だから、勉強する場合は、そこに成長という目的を、持たなければいけません。 成長とは、自分と社会が 「WinWinの関係」 を築く方向へ、自分を変えることではないでしょうか。
 すると、 人生の最終目的は、 「社会貢献」 のための 「自己実現」  になるはずです。
 そのための、勉強ということになるのではないでしょうか。

 

 

8.「成長」 を、3つに区分して考える

 

 ひと言に、 「成長」 と言っても、分けて考えた方がよさようです。
 たとえば、 「①能力的な成長」 「②考え方の成長」 「③精神的な成長」。
  「能力的な成功」 とは、自分の専門分野のスキルから、日常的な会話や文章などの、コミュニケーション力まで。
 私は、車の運転能力についても、未だに、少しずつ、向上を目指しています。

 

  「考え方の成長」 とは、未成年期の特徴である、短期的、主観的、感情的、局部的、個人的など、未熟なものに、囚われないこと。
  さらに、長期的、客観的、理性的、大局的、社会的などの考え方を、備えることでしょう。
 「精神的な成長」 も、未成年期の特徴である、自己中心性、情緒不安定、依存心などから、解放されること。
  さらに、他者の尊重、情緒の安定、自立心などを、備えることではないでしょうか。

 

  これらすべてを、一挙に成長させる方法があります。
 それは 「自立」 を目指すこと。
 経済的にも、精神的にも、他から独立して生きられるようにすることです。
 ところが、戦後日本は豊かになり、今の60代以下の人は、自立を軽視するため、これが成長の低下を招いている可能性があります。

 

 

9.自分を陳腐化させないように

 

 たとえば、20代前半で成長が止まったまま、40代を迎えた人の場合・・・
 「20代前半まで」 又は 「20年以上前」 に学んだことしか、アウトプットすることができません。
 40代になれば、40代の対応が求められますが、勉強していないと、20代の対応をしてしまいます。
 20代の対応しかできなければ、成長の可能性が残る20代の方がよい、ということになるのではないでしょうか。 

 

 また、成長を拒否して、今の自分のままでいると、どんどん陳腐化 (ちんぷか 古くなっていくという意味) していきます。
 なぜなら、自分自身は老化するし、それ以上に、世の中が変化するからです。
 世の中の変化とは、いわゆる変化と、若い世代の突き上げがあります。
 社会が変化し、新しい社会に対応した若い人材が、どんどん、社会に流れ込んできます。

 

 自分が陳腐化してしまうかどうか。
 それは、自分次第ではないでしょうか。
 もし、嫌なら、成長するために、勉強を続けることでしょう。

 勉強とは、実は、年を取れば、取るほど、しなければならない ものなのかもしれません。

 

 

10.2015年以降は、継続的な 「個人の成長」 が求められる

 

 成長すると、収入が増え、さらに安定します。
 また、精神的にも豊かになり、さらに安定します。
 つまり、両者によって、人生そのものが豊かになり、生きることが、楽しく感じられるようになります。
 負け惜しみや、こじつけではなく、心から楽しく感じられれば、大変であっても、その人生は成功と言えます。 

 

  自分も組織も豊かになり、さらに社会まで豊かにするためには、自分自身をどのように成長させればよいのか。
  このような疑問を持ちながら、勉強を続けることでしょう。
 会社経営の場合は、 「個人」 「組織」 「地域」 「社会」 を豊かにするために、1人1人が成長を目指す。
 このような社風を育むことです。 

 

 日本経済は20年以上、衰退が続いています。 さらに、政治や行政など、組織による成長主導が、難しくなりつつあります。
 2015年以降は、これまで以上に、個人の成長が、望まれる のではないでしょうか。
  それによって、大きな差が生まれると、私は考えています。

 


  ※参考文献 
   高橋洋一、竹中平蔵著 日本経済のシナリオ

大家さんのリスク対策  2014.07.31

 1.今、なぜ、 「大家さん」 ブームなのか?

 

  平成26年7月29日、総務省は、 「2013年住宅 ・ 土地統計調査 (速報)」 の結果を、発表しました。
 それによると、全国の住宅の空き家率が、13.5%と、過去最高。
 愛知県も、2008年の11.0%から、2013年は12.3%まで、上昇しています。

 人口減少が進む日本で、住宅が余るのは、当たり前のこと です。

 

   しかし、最近、なぜか、 「大家さん」 ブームが、続いています。
 仕掛けているのは 不動産業者でしょうか。
 これに、銀行までが、便乗しているケースもあります。 
 相手は、プロ集団ですから、初心者大家さんは、十二分に、ご用心ください。

 

  購入する側には、近年、どのような状況の変化が、あったのでしょうか。
 リーマン・ショック後は、多くの人が、将来の収入に、不安を抱き始めています。
  また、バブル期と比べ、脅威的に値下がりした物件が、市場にあふれています。
 これらの要因が重なり、これまで不動産投資に無関心だった層まで、購入意欲の高まりを見せているようです。

 

                                                                                                                
 2.大家さんは、2タイプに分かれる

 

  大家さんは、大きく分けて、2つのタイプに分かれます。
 1つ目は、 「資産家タイプ」。
 ご先祖から引き継いだ土地の上に、賃貸物件を建てて、家賃を得る、 「従来型の大家さん」 とも言えます。
 このタイプの大家さんは、保守的です。

 

  2つ目は、新しい 「投資家タイプ」 。
 もともと、所有する資産は少なく、金融機関から融資を受けて、賃貸物件を購入します。
 日頃から、セミナーなどに参加し、熱心に勉強をしています。
  このタイプの大家さんは、積極的です。

 

  私自身は、不労所得に、まったく関心がありません。 従って、 「大家さん」 になる気も、ありません。
 ただし、税理士として、違法行為から、お客様を守らなければならない、立場にある ため、日頃から、目を光らせています。
 それでは、まず、タイプ別の注意点から、お話ししましょう。

 

                                                                                                                
 3.「資産家タイプの大家さん」 が、騙されやすい 「家賃補償」 

 

   「資産家タイプの大家さんは保守的」 と、お話ししましたが、あっさり騙されるケースもあります。
 その代表的なケースが、 「建設会社による家賃補償」 です。
 たとえば、大手業者が、洗練された語り口と、複雑な表やグラフを武器に、攻め続けると、すっかり信用してしまいます。
 家賃補償、管理お任せ、相続税軽減、所得増加など、説明だけ聞いていると、よいこと尽くめです。

 

 しかし、この家賃補償の話には、裏があります。
 建設費が、相当、割高のため、家賃補償をしても、建設会社は、損をしない仕組み になっています。
 また、数年ごとに、補償額の見直しがあり、入居率が下がる度に、補償額が減らされます。
 もし、大家さんにとって、家賃補償制度が、本当に有利なものなら、多くの建設会社が、すでに倒産しているはずです。

 

  相続税軽減の話にも、注意が必要です。
 相続税は確かに減ったものの、代わりに、莫大な借金を背負わされる、ケースもあります。
 「支払先が、税務署から金融機関に変わっただけ」 では、意味がありません。
 また、更地に上モノを建てたおかげで、土地そのものの処分が、難しくなるケースもあります。

 

                                                                                                                
 4.「投資家タイプの大家さん」 が、騙されやすい 「土地と家屋の内訳金額」 

 

  「投資家タイプの大家さんは積極的」 と、お話ししましたが、知識が伴わなければ、経済的に破綻するリスクも高まります。
 ぜひ、注意していただきたいのが、 「土地と家屋の内訳金額」 です。
  この 「土地と家屋の内訳金額」 を操作すれば、販売者が大きく得をし、購入者に大きな損を、負わせることができます。
  販売者はプロ、購入者はアマチュアですから、赤子の手をひねるがごとく、簡単に、騙される可能性もあります。

 

  ご存じのように、不動産を販売した場合、土地には消費税がかかりませんが、家屋には消費税がかかります。
 もし、 家屋部分の金額が少なければ、販売者側は、消費税の負担を減らす ことができます。
 また、購入者側が物件を賃貸にした場合、不動産所得の計算上、建物の取得価額は、耐用年数に応じて、経費化できます。
 もし、 家屋部分の金額が少なければ、購入者側は、経費が少なくなるため、所得税と住民税の負担が増えて しまいます。

 

 販売価格を、総支払額だけで判断すると、販売者側の巧妙な手口に、気づくことができません。
  そこで、 土地と家屋を一括購入する場合は、必ず、 「土地がいくら」 「家屋がいくら」 を、確認 してください。
 そして、その 「土地の価格」 が、適正なものかどうかを、検討してください。
 大ざっぱな確認方法を、以下に、お知らせします。

 

                                                                                                                
 5.土地と家屋の計算方法 (目安) 

 

  「不動産の価格」 は、たくさん出回っています。
 固定資産税評価額、地価公示価格、路線価、不動産鑑定士の鑑定額、などの他に、収益還元法による価格があります。

 「何れかが正しい」 と、言い切れるものではありません。
 そこで、あくまで 「目安」 として、土地の時価を、算定してみましょう。

 

 私は税理士ですから、最もなじみ深い、相続税評価額を参考にします。
 相続税法において、土地の評価方法は、地域によって、2つに分かれます。
  都市部は、おおむね 「路線価方式」 で、都市部以外は、おおむね 「倍率方式」。

 国税庁のホームページ、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 から、何れの評価方法を採るべきか、調べてみましょう。

 

  ①路線価評価方式の場合、その土地に接する道路に、たとえば 「100E」 と、表示されていたとします。 この 「100」 は、1㎡あたり、 「100千円つまり10万円」 、 「E」 は借地権割合が、 「50%」 を意味します。

  ②倍率方式の場合、毎年4月に市町村から送付される 「固定資産税・都市計画税 (土地・家屋) 課税明細書」 で、 「価格」 を調べます。
  この金額に、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、該当する倍率を乗じて、算定します。

 

                                                                                                                
 6.「路線価方式」 と 「倍率方式」 の具体例 

 

  路線価方式の場合、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、 「100E」 なら、1㎡あたり、10万円。
  面積が100㎡なら、土地の価格は、10万円 × 100㎡ = 1000万円になります。
 もし、複数の道に接していたら、その中で最も高い路線価を乗じましょう。
 厳密に計算を行う場合は、さらに複雑ですが、目安を求めるのであれば、これで構いません。

 

 倍率方式の場合、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、倍率を調べます。
 宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼によって倍率が異なります。
 どの区分に該当するかは、 「固定資産税・都市計画税 (土地・家屋) 課税明細書」 の 「現況地目」 によります。
  登記簿謄本に記載された 「地目」 とは、異なるケースも少なくありません。

 

 もし、 「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)課税明細書」 の 「価格」 が、1000万円。
  「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、倍率が、 「1.5」 であれば、評価額は以下になります。
 1000万円 × 1.5 = 1500万円 
  このようにして、相続税評価額を、算定します。

 

 

 7.「買値」 と 「売値」 の違いを理解する 

 

  世の中の商取引には、2つの価格が存在します。 
 それは「買値」と「売値」。
  このケースで、 「買値」 とは、不動産業者が購入する価格、 「売値」 とは、不動産業者が販売する価格。
 当然ながら、 「売値」 は 「買値」 より、粗利益の上乗せ分だけ、高くなります。

 

 これまでの経験から言えば、 相続税評価額は、 「売値」で はなく、 「買値」 ではないでしょうか。
 それでは、売値はいくらなのかというと、 「買値×1.25」 と考えられます。
 これは、以前、税務上、通用していた 「相続税評価額は、時価の80%」 という通説を、根拠にしています。

 

 先ほどの、相続税評価額が、1000万円の土地と、1500万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・

 ①相続税評価額 (路線価方式) 1000万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・ 1000万円 × 1.25 = 1250万円

 ②相続税評価額 (倍率方式) 1500万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・ 1500万円 × 1.25 = 1875万円

 

 

8.土地と家屋、それぞれの購入価格が、分からない場合 

 

 土地と家屋を一括購入した場合、土地の価格が、前述の方法で算定した適正価格を、大きく上回る場合は、注意が必要です。
 販売者側が、消費税を節税 (脱税) する一方、購入者側が、多額の所得税と消費税を負担させられる恐れがあるからです。
 平成26年4月には、ある建設業者が、名古屋国税局に起訴されています。
 ある程度、税の知識がある者であれば、数分で不正に気づくような、初心者的な手口です。

 

 それでは、土地と家屋の価格の内訳が分からない場合は、どうすればよいのでしょうか。
 それは、契約書等に明示されている 「消費税の金額」 から逆算 することができます。
 前述したとおり、土地には消費税がかかりませんが、家屋には消費税がかかります。
 消費税の税率は、現在8%です。

 

 もし、3000万円の物件を購入し、 「うち消費税80万円」 なら・・・
 家屋の購入価格 (消費税抜) は、80万円 ÷ 8% = 1000万円
 家屋の購入価格 (消費税込) は、1000万円 × 1.08 = 1080万円
  土地の購入価格 (消費税関係なし) は、3000万円 − 1080万円 = 1920万円

 

 

9.被害額の計算方法 

 

  それでは、実際の被害額について、具体例を示しながら、ご説明しましょう。
 賃貸用の土地家屋を、5000万円で、一括購入した場合。
 適正価格は 「土地2000万円、家屋3000万円」 ですが、不正価格 「土地4000万円、家屋1000万円」 で購入。
 家屋の耐用年数期間内の、購入者の所得税と住民税の平均税率が20%のケースです。

 

 販売業者が負担すべき消費税額は、適正価格なら240万円ですが、不正価格なら80万円で、160万円の脱税です。
 また、購入者は、耐用年数期間内に、不動産所得の申告をしなければいけません。
 耐用年数期間内に、減価償却費として経費計上できる金額は、以下のとおりです。
  適正価格なら3000万円 (家屋の価格) ですが、不正価格なら1000万円 (家屋の価格)。

 

 減価償却費によって、節税できる金額は、
 適正価格なら、3000万円 × 20% (平均税率) = 600万円
 不正価格なら、1000万円 × 20% (平均税率) = 200万円。

  差引、差引400万円が、税負担増加分、つまり被害額 になります。

 

 

 10.法律上の救済措置はあるのか 

 

  もし、不正価格で不動産を購入した場合、法律上の救済措置はあるのでしょうか。
 弁護士に確認したところ、 「双方が合意して契約した後では、難しい」 との、回答を得ました。
 他に考えられる方法は、税務当局への告発くらいでしょう。
 所轄税務署または、国税局に情報を開示し、 「明らかにおかしい」 と、告発することです。

 

  これに対して、税務当局が、販売業者側に対して、税務調査を実施し、 「不正な取引」 と、認定することがあります。
 もし、不正が確定すれば、販売者側は、家屋の適正価額に基づいて、消費税の追徴課税を受けます。
 これに伴い、購入者側の土地と家屋の内訳金額も、適正な価格に、修正される可能性もあります。
  あくまで可能性に過ぎませんが。

 

  悪質な被害に遭わないためには、以下の点に、十分に、ご注意いただきたいものです。
  ①日頃から、知識を蓄えておく  ②最初から、高い買い物をしない  ③営業トークは、疑ってかかる
 また、契約書を交わす前に、税理士などの専門家に、必ず、内容確認を依頼することです。
 大家さんにとって、これらの積み重ねが、大きなリスク回避に、つながるのではないでしょうか。

顧客の考え方を理解しよう!  2014.04.30

1.なぜ顧客の考え方を理解する必要があるのか

 

  経済的に豊かな米国では、1954年にドラッカーが著書 「現代の経営」 の中で、 「事業の目的は顧客の創造」 と述べています。日本でも、私が税理士登録した1994年には、 「企業は顧客の立場でモノを考えなさい」 と言われていました。

 

  モノやサービスが足りない時代は、生産者(企業)側に決定権があるため、顧客の考え方などわからなくても、勝手に売れたものです。しかし モノやサービスがあふれる今は、消費者 (顧客) 側に決定権があるため、企業も顧客の考え方を理解しなければいけません。

 

  「顧客の考え方」 というと特別なことのように思われますが、その本質は 「どれだけ相手の立場になって考えられるか」 にありますから、これはビジネスに限った話ではなく、人間関係全般の課題と言えます。

 

                                                                                                                
 2.本やセミナーだけでは身に付かない

 

  それでは、どうすればお客様の立場で考えることができるのでしょうか。大型書店に行くと、 「顧客を獲得する方法」 のようなタイトルの本が、書棚に並んでいます。ジャンルとしては、営業、セールス、販売、マーケティングあたりでしょうか。

 

 このような本を読んで、効果が見込めるのは、初心者レベルの方に限られます。社会人1年生の頃に読んだビジネスマナー入門書と同じで、最初のとっかかりにはなりますが、ベテランになるにつれ、それぞれ独自の方法を採っているからです。

 

 本やセミナーは、あくまで 「形」 しか学べません。ファーストフード店の形どおりの接客に感動する人がいないように、形だけを真似ても、決して本当の実力にはつながりませんので、生身の人間として経験しながら、喜怒哀楽を通じて学ぶ しかないでしょう。

 

                                                                                                                
 3.企業の立場から顧客の考え方を理解することの限界

 

  私が本やセミナーに限界を感じるのは、スタンスそのもの、つまり「お金を受け取る側」の立場から離れていない点にあります。 「いかにお金をうまく受け取るか」 の視点でしか、語られていないということです。

 

 企業側の経営者や従業員が、顧客の立場でモノを考えようとしても、自ずと限界があります。中には、顧客の機嫌を損ねないように、低姿勢を貫く人も見かけますが、かえってビジネスを強調しているようなもので、面倒に感じることもあります。

 

  スポーツでは自然な動きを理想とします。大きなプレッシャーの中で、自然な動きをいかに再現させられるか。この実現を目指して、選手は過酷なトレーニングを重ねます。顧客に対する姿勢も同じ。最も望ましいのは、自然に見える範囲内 ではないでしょうか。

 

                                                                                                                
 4.私のトレーニング方法

 

 企業と顧客の関係は、 「お金を受け取る側」 と 「お金を支払う側」 に分かれます。自分が 「お金を受け取る側(企業)」でありながら、反対の 「お金を支払う側(顧客)」 の考え方を理解しようとしても、なかなかうまくいくものではありません。

 

 それでは、反対に、自分も顧客と同じ 「お金を支払う側」 にあるときは、どうでしょうか。考えてみると、私たちはお金を受け取るときこそ、それなりに気をつかいますが、お金を支払うときは驚くほど無頓着です。

 

 もし、お金を支払う時、 「お金を受け取る側」 に対して、今以上に気をつかうようになれば、 「お金を支払う側」 としての感性が、豊かになるかもしれません。相手を喜ばせようとすると邪念が入りますので、まずは相手の負担を減らすことを考えてみました。

 

                                                                                                                
 5.迷惑な客にならないこと

 

 たとえば飲食店の客になったとします。自分は 「お金を支払う側」 ですから、ふつうに考えれば、強い立場にあります。しかし、ここで 最も弱い立場で働いている、末端の店員さんに対して、何ができるのかを、トレーニングの課題 にしました。

 

 私が実践しているのは、店が混んできたら、他の客を待たせないように、隅の席へ進んで移動する。片付けやすいように、食べ終わった食器を手前に集めておく。テーブルを汚したら、おしぼりで簡単に拭いておく。

 

 数百円の支払に対して、1万円札を出さないように、あらかじめ両替しておく。支払額が事前にわかれば、レジを速く通過できるように、席を立つ前に準備しておく。帰り際には 「ごちそうさまでした」 と伝えて、さっさと立ち去るなど。

 

                                                                                                                
 6.誰のためのトレーニングなのか

 

  ここまで読んで、 「お金を支払うのに、どうしてここまでしなければならないのか」 と思われるかもしれませんが、これは 相手のためではなく、自分のためにやる ことです。顧客の立場で何を感じられるのかを磨くためのトレーニングなのです。

 

 また、ひたすら 「周囲に頭を下げろ」 とか 「店員のご機嫌を取れ」 と言っている訳ではありません。たとえば店員同士がおしゃべりをして、注文を取りにこない場合があります。こんなケースでは、遠慮なく苦情を述べればよいと思います。

 

 客は不愉快なのに、メニューの料金を満額、支払わされる。経営者は顧客を失う恐れがあるのに、店員に時間給を満額、支払わされる。店員は遊んでいたにもかかわらず、時間給を満額、受け取ることができる。これは明らかにおかしい話ではありませんか。

 

                                                                                                                
 7.顧客としてレベルアップすると見えてくるもの

 

 このようなトレーニングを続けていると、お金を支払うときに感じることが、変化していきます。それが顧客の考え方への理解につながれば、 自社のお客様が、何を感じているのかが、少しずつわかる ようになるのではないでしょうか。

 

 もし自分が 「お金を受け取る側」 の立場だけでモノを考えていると、モンスター客がいても、お金のために放置してしまいます。他人を人間として扱わないモンスター客から、従業員が精神的なダメージを受けていても、見逃してしまいます。

 

 しかし自分が顧客としてレベルアップすると、彼らが他のお客様に対して、大きな迷惑をかけていることがわかります。また従業員が、店とモンスター客の板挟みになっていることにも気づきます。責任者は 「来店拒否」 を、きっぱりと告げなければいけません。

 

                                                                                                                
 8.人がいる場所は、すべてトレーニングの場

 

 「企業として顧客の考え方を理解すること」 、その本質は 「自分と異なる立場の人を理解すること」 にあります。これは あらゆる人間関係の場で求められる能力ですから、もし高めることができれば、公私ともに人生が充実してくる はずです

 

 お金を支払うシーン以外にも、トレーニングの場はあります。たとえば道路工事現場、この仕事は、大変、辛いものです。年中、エアコンの効いた部屋で仕事をする身として、通り過ぎるときは、 「ご苦労様」 と一声かけるようにしています。

 

  異なる立場の人と理解し合えば、仕事、交友、家庭など、多くのシーンで、豊かに過ごせるようになります。その第一歩は、まず自分から相手の理解に努めること。それは誰のためでもなく、自分自身のためにすべきことだからです。

2014年は「人を生かす経営」  2013.10.29

1.アベノミクスで 「復活した企業」 と 「低迷する企業」

 

  アベノミクス効果で、日本経済は回復基調にあります。好調な業種と言えば、円安のおかげで 「輸出メーカー」、株高のおかげで 「金融機関」、自民党復活のおかげで 「建設業」。以前なら、このように業種によって好不調が分かれたものです。

 

 しかし近年は同じ業種であっても、好調な企業と不調な企業に分かれるようになりました。原因は毎回、異なりますが、それを推測することによって、その他の企業の業績回復のヒントにもつながるのではないかと考えられます。

 

 あくまで私の所見に過ぎませんが、今回、好調な中小企業に共通するのは、「人を生かしている」 点だと思われます。つまり社長1人の力で成り立っているのではなく、複数の人の知識や経験が生かされている企業ではないでしょうか。

 


  2.なぜ人を生かすことが求められる時代になったのか

 

  その原因を推測してみると、1つは 「顧客の欲求が多様化」 しているため、1人の知識や経験だけでは通用しなくなった。そこで、年齢、性別、性格、好み、年収、人生経験などが異なる者の意見が、必要になってきたからではないでしょうか。

 

 もし社長が非常に優秀で、常に素晴らしいプランを持っていたとしても、異なる意見と比較できれば、社長のプランを違った角度から検証することができます。それはアイデアの発展性やリスク管理の点でも、重要な役割を果たすことでしょう。

 

  もう1つは 「技術革新のスピード化」 。新しい技術には新製品や新サービスに関するヒントが隠されています。しかし高齢になるほど情報収集が遅れるため、特に若い世代の知識や経験が必要になってきたのではないでしょうか。

 


  3.「1人企業」 の問題点

 

 1人企業の場合、特別なリスク対策が必要 と思われます。本人に何かあれば、家族は早期に生活に困ることになります。また取引先にも迷惑をかけます。非常時には同業者と助け合うシステムや、休業時には所得を保障する保険が必要です。

 

 他人に煩わされにくいなど、1人で仕事をするメリットは少なくありません。しかし 「しょせん1人」 ではないでしょうか。けっきょく自分の範囲内から抜け出すことができません。またモチベーションの維持など、自己管理も難しくなります。

 

 仕事とはおおむね同じことの繰り返しです。マンネリ化を避けるためにも、家族でよいから、できる限り複数で仕事 をすることをお勧めします。アルバイトやパートでもよいから、他人を雇えば、より改善されるのではないでしょうか。

 


  4.社長はすべてにおいて優れていなければならないのか?

 

 従業員がいても、すべての面で社長が最も優れている。これは中小企業にありがちなケースですが、誉められた話ではありません。従業員の強み (能力、人間性、経験) が、十分に生かされていないからです。

 

  極端な言い方をすれば、 「経営力」 だけは社長がトップ でなければいけません。それ以外の分野においては、むしろ自分より優れた者に働いてもらう。彼らの力が発揮しやすい環境を作る。これが企業として成長を続ける秘訣だと考えています。

 

 優れた戦国武将には、必ず各分野に自分より優秀な部下がいました。後世に伝わる功績も、実は部下たちのおかげだったと思われます。競争の激しい現代の中小企業も同様、「人を生かすこと」 に、もっと注目すべきではないでしょうか。

 


  5.「ツールを利用する経営」 と 「人を生かす経営」

 

  話は変わりますが、今年は 「経営学」 を広く見渡そうと、入山章栄著 世界の経営学者はいま何を考えているのかを読みました。米国の経営学者の主な研究テーマが書かれており、日本人に人気のあるドラッカーには関心がうすいそうです。

 

 次にドラッカーのマネジメント論をわかりやすく解説した藤田勝利著 ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント 。さらには評価の高い、野中郁次郎・勝見明共著イノベーションの本質 を、遅ればせながら読ませていただきました。

 

 わかったことは、経営を改善する方法には大きく分けて2つある こと。1つは米国の経営学者が研究する 「ツールを利用する方法」。ツールとは○○論、○○戦略、○○規定など。もう1つはドラッカーなど人間に着目した 「人を生かす方法」 。

 


  6.就業規則の内容を変えれば、業績が回復すると思いますか?

 

 業績が悪化すると、早期に改善しようと、経営者が 「ツールを利用する方法」 に走るケースがあります。たとえば就業規則の内容を厳しくする。しかし、これだけで業績が改善することなどありえないというのが、これまでの経験上の感想です。

 

 経営者の意図とは裏腹に、従業員が精神的に不安定になったり、主要な人物が退職してしまうケースさえあります。就業規則はもちろん大切なものです。しかし使い方を誤ると、かえって事態を悪化させるのではないでしょうか。

 

  「ツール」 の前に 「人間」。そこで働く人たちの状態を改善 しなければいけません。なぜ積極的に仕事に取り組まないのか。なぜ成果が挙がらないのか。これらの原因を解明せず、ツールのみで安定した成果に結びつくことはないでしょう。

 


  7.経営とはしょせん人間のするもの

         

 経営とはしょせん人間のするもの。これは、世界の経営学者はいま何を考えているのかの著者、入山章栄さんの言葉です。つまり経営学に精通されている方でさえ、経営には不合理な面が避けられないと述べられています。

 

 さらに経営学は生まれて間もないらしく、他の学問である 「経済学」 「社会学」 「認知心理学」 を通じて、アプローチを試みている最中だとか ・・・ だから経営学全体で統一されたテキストも、未だに存在しないそうです。

 

 経営とは不合理なもの、かつ、経営学は未熟な段階にあるにもかかわらず、経営者が経営学から導き出されたツール (法則、方法論) を過信するのは間違い ではないでしょうか。そのような特効薬はないと考えた方がよさそうです。

 


  8.コストダウンと生産性向上の実体験談

        

 私は2006年から、当事務所のコストダウンと生産性向上に取り組みました。2012年にほぼ達成されましたが、そのプロセスにおいて、多い年は年間約300冊もの本に目を通し、その中で様々なツールに出会いました。

 

 しかし達成できた一番の理由は、「従業員が積極的に仕事をするようになったから」 です。あの天才物理学者アインシュタインでさえ、脳細胞のごく一部しか使っていなかったそうです。だから一般的な人は能力の1割も発揮していません。

 

 本人の気持ちさえ変われば、生産性を30%上げるなど、いとも簡単なこと。さらに通常の仕事に特殊な能力など必要ありません。普通の人がその気になれば、ほとんど解決できるものです。重要なのは学歴より人間性ではないでしょうか。

 


  9.「人を生かす経営」 とは、どんなものか?

      

  それでは 「人を生かす経営」 に必要な質問を列挙してみましょう。それは 「従業員が生き生きと仕事をしているかどうか」という質問 でもあります。藤田勝利著 ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメントよれば ・・・ 


 ① 組織の目的は明快になっているか?
 ② その目的は共有され、メンバー全員が理解しているか?
 ③ 共に協力しあって、その目的を実現させようという意思はあるのか?
  ④ 社内で有効なコミュニケーションがなされているか?
  ⑤ 人材の強みが生かされているか? 

 

 さらに付け加えると ・・・ 

 

  ⑥ やり甲斐を感じられるような仕事の配分になっているか?                        
  ⑦ 顧客や組織から必要とされていると感じられるか?
  ⑧ 成果を挙げやすいような仕組みになっているか?
  ⑨ 成果に応じた報酬体系になっているか?
  ⑩ メンバーの関心が社外 (顧客や社会) に向けられているか?
 

 

 

10.2014年以降は 「人を生かす経営」            

 

  「ツールを利用する経営」 と 「人を生かす経営」 、もちろん両者を併用するのがベストだと思われます。ただし「ツール」の前には、必ず「働く人」がいます。人間を無視して、ツールのみで安定した成果が得られるとは考えられません。

 

 経営も労働もしょせん人間のするもの。人間には感情があり不合理な一面を持っている。日本人は文字、数字、理屈よりも肉体作業を共にした方が理解を深めることができる ・・・など、人間について学ぶべきことは、たくさんあるようです。

 

 2014年以降は 「人を生かす経営」 が、さらに効果を発揮すると、私は予測しています。ツールと比べ手間暇かかりますが、これが本来あるべき経営の姿なのかもしれません。最後に後藤新平さんの言葉をご紹介して終わりにします。

 

    「 金を残す者は下、仕事を残す者は中、人を残す者は上 」      後藤新平 (1857〜1929)

2013年上半期 おすすめ本  2013.06.27

1.世界の経営学者はいま何を考えているのか

 

  2013年上半期のビジネス本の中で、最もおすすめするのが、入山章栄著 「世界の経営学者はいま何を考えているのか」 です。タイトルこそ「経営学者」になっていますが、私たちにもわかりやすく書かれています。

 

  紹介されているテーマを2つに大別すると、1つ目は経営学そのもの。経営学の本質や現状、将来性など。2つ目は世界の経営学者が注目する分野。競争戦略、イノベーション、ソーシャル、国民性、ベンチャー投資など。

 

  日常業務に追われていると、知らぬ間に視野が狭くなり、スランプに落ち込んでしまいます。新たな視点やヒントに気づくためには、定期的に広範囲を見渡す必要があります。その意味でも本書は役立つことでしょう。

 


  2.居酒屋トークと経営学の違い

 

  同業者や勉強仲間と居酒屋で飲むことがあります。そこで花が咲くのはやはり経営の話。「高級車に乗る社長の会社は赤字経営」などと語る人もいます。この居酒屋トークと、経営学にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

 それは「理論による分析」と「実証による分析」の有無なのだそうです。先ほどの「高級車〜」も、これだけでは居酒屋トークに過ぎません。そこに理論的な証明として、「高級車に乗ると顧客より車が大切になる」などの仮説を立てます。

 

 さらに「社長の車」と「会社の業績」の統計を集めます。もし両者に相関関係が認められれば、「高級車〜」も、初めて経営学のテーマになる可能性が? 経営学は手間暇かかるものだということがわかります。

 

 

  3.ドラッカーは経営学ではない?

 

  日本では評価の高いピーター・F・ドラッカーの理論も、米国の経営学者はほとんど研究しないのだそうです。なぜなら前述の「理論による分析」と「実証による分析」が行われていないからでしょう。

 

 つまり科学的な根拠がない。私はドラッカーファンですが、その事実にうすうす気づいていました。「事業の目的は顧客の創造である」と明確に言い切っていますが、その証拠は?・・・しかしドラッカーはよく当たります。

 

  私の見解として、経営学者は何十年かかっても、理論の完璧化を目指すべきでしょう。一方、経営者は明日の利益を確保しなければいけません。完璧な理論を求めることに大きな意味はないと考えています。

 


  4.経営学を学ぶより人間通になれ?

 

  経営学は歴史が浅く、経営学者は既存の3つの分野からアプローチを試みています。まずは経済学。人間はすべて合理的な選択をするという前提です。しかし著者も述べていますが、「企業経営とはしょせん人間がすること」です。

 

 だから人間や集団が、何をどのように考えて行動するのかを知らなければ、経営はうまくいきません。これらの理由もあり、社会学と認知心理学の2つの分野からも、経営学へのアプローチが行われています。

 

 注目すべきは、経営者にもタイプがあるという点です。自分の好みや考え方が、3つのうちの何れの分野に近いのかを知り、その方向から経営を攻めていくのが、理解を深めるための1つの方法かもしれません。

理論 前提・仮定・背景 企業とは何か どんな人向きか
経済学

人は常に合理的な選択をする

 → 他の組織に出し抜かれると考える

効率性を求める存在だ 契約や組織のデザインに興味がある人向け
社会学

統計学から社会現象を分析する

 → 人・組織の社会的相互作用に関心

他企業と力関係、相互依存関係にある 人とのつながりを重視する人向け
認知心理学

人の情報処理能力は優れていない

 → 組織の行動にも影響ありと考える

経営資源(強み)の集合体

アイデンティティを共有する

イノベーションに関心がある人向け


  5.激しい競争社会(ハイパー・コンペティション)を勝ち抜く

 

  競争社会を勝ち抜くためには2つの戦略があります。1つ目は競争の少ないポジション(業界・商品)を選んで、競争を避ける「守りの戦略」。2つ目は競争行動(新製品、販促活動、低価格化など)によって、競争を進める「攻めの戦略」です。

 

  現代は競争が激しく、長期的に好業績を残す企業は、米国で2〜5%しかありません。常に好調に見える企業の多くが、実は短期的な好業績を繰り返しているに過ぎません。つまり何度も競争行動を仕掛けているのです。

 

 統計上も競争行動の多い企業の方が、高い業績を残すようです。しかし常に競争行動を採っていると消耗します。「守りの戦略」で余裕を作りつつ、「攻めの戦略」を冷静に仕掛けていくのがよいのだそうです。

 


  6.構造的なソーシャル・ネットワーク

 

  人間関係には「強い結びつき」と「弱い結びつき」があります。それぞれ特徴があるので、目的によって使い分けるとよいそうです。たとえば「強い結びつき」では「知識の同質化」が進むため、既存の知識や情報を深めるのに役立ちます。

 

 反対に「弱い結びつき」では「知識の多様化」が進みます。深い人間関係よりも、浅い人間関係の方が多様な知識や情報が伝わりやすいという実験結果が出ています。このような人間関係はイノベーションに有用と思われます。

 

 また人間関係には隙間(ストラクチュアル・ホール)があります。たとえばA社とB社間には直接取引がなく、必ずC社を介さなければならない場合、C社にビジネスチャンスが生まれます。この隙間に注目しろということです。

 


  7.不確実性時代の経営計画の立て方

 

 経営戦略のプランニングには2つの考え方があります。1つ目は事前に細かく計画を立てる「計画主義」。もともと完璧な計画などありえないし、さらに不確実性時代には通用しません。実行する前にチャンスが過ぎ去ることでしょう。

 

 2つ目は考える前にやってみる「学習主義」。これも大きな痛手を負う可能性があります。たとえば飲食店、新たな地域に出店するにもかかわらず、豪華な設備をそろえる人がいます。リスクに対してあまりに無防備と言えます。

 

  「計画主義」と「学習主義」、両者のいいとこ取りをするのがリアル・オプションという考え方。当初の投資額を少額に抑え、状況を見極めながら進めていくという戦略です。不確実性時代には欠かせない考え方だと思います

 


  8.リアル・オプションでチャンスとリスクに対応する

 

 リアル・オプションの中の「段階的な投資」には、次の3つのメリットがあります。
                                                                                                                    
 1.将来、望ましくない市場環境になった場合は、ケースによって①と②が選択できる

    ①長期的によくないと見込まれるケース・・・事業を撤退する(損失は当初の少額投資のみ)
    ②短期的によくないと見込まれるケース・・・事業をそのまま継続する

 

 2.将来、望ましい市場環境になった場合は、ケースによって①と②が選択できる

  ①長期的によいと見込まれるケース・・・事業を拡大する(迅速に対応)
  ②短期的によいと見込まれるケース・・・事業をそのまま継続する

 

 3.とにかく始めることによって、経験から様々な学習できる。学習が進めば不確実性も下がっていく。                      
                                                                                                                      
  本書には、メキシコへ進出するために、下記の手順を踏んでリスクを抑えながら、大きなチャンスをモノにしたウォルマートの例が挙げられています。善良な日本人なら怒り出しそうですが、これが世界標準というものなのかもしれません。

 

 ①メキシコの小売業最大手シフラと合弁会社を設立 → ②シフラに合弁会社を買収させる → ③シフラ本体を買収する  

 


  9.経営者による経営学の利用法 

 

  経済本と同様、経営本も怪しげなものが少なくありません。さらに学者が唱える経営理論の90%以上が検証もされず「言いっぱなし」の状態なのだそうです。現場で頭を悩ませる経営者には不要なものかもしれません。

 

 しかし経営学という馴染みのない世界に触れることが、新たな発見につながる可能性もあります。何年も同じ思考回路を使い回してスランプから抜け出せない。このような状態から抜け出せるかもしれません。

 

 今回は入山章栄著 「世界の経営学者はいま何を考えているのか」 の、ごくわずかなポイントのみをご紹介しました。人によって役立つページは異なるかもしれませんが、気になられた方はご一読いただければ幸いです。 

ドラッカーで業績回復!  2013.04.05

  1.なぜ経営の勉強を始めたのか?

 

  私が税理士登録したのは1994年。バブル経済崩壊の直後でした。日経平均株価は1989年、不動産価格は1991年をピークに下落を続けました。しかし過去の蓄積のおかげで、日本経済には十分な余力が残っていたようです。

 

 だから経営の勉強などしなくても、まじめに仕事さえしていれば業績が伸びました。転機が訪れたのは2006年。日本の人口が初めて減少に転じた年、社会の変質、つまり社会のルールが変わり始めたことに気づいたのです。

 

 当事務所も人件費が高騰、それに伴い料金も高額になっていました。このまま不況に突入していたら、経営危機に陥ったことでしょう。事前に気づいたおかげで、2年後のリーマン・ショック時には、反対に業績を伸ばすことができました。

 


 2.原因のわからない成功は長続きしない

 

  2006年、大胆な経営改革の必要性を感じ、経営の勉強に取り組み始めました。出勤前は喫茶店で、昼休みは飲食店で、夕食後に仮眠したら、その後は深夜2時まで、ひたすら経営本を読みました。年間200冊以上は、読んだと思います。

 

 ところが経営本の中身は千差万別で、一体何が正解なのかわかりません。とりあえず活字から得た知識を実践し、うまくいかなければ改善を加え、再び実践で試す。この繰り返し。すると2007年後半には業績が上がり始めました。

 

 しかし大量に得た知識を次から次へ試したため、何が幸いしたのか、その原因を特定することができません。この時期、数字的には好調でしたが「今後もこの状態を維持できる」という、確信までには至りませんでした。

 


 3.ドラッカー本との出会い

 

 勉強を初めて4年目、2009年に出会ったのがドラッカー本。過去に何度も挑戦し、やっと理解できたというのが真相です。ドラッカーは難しいと言われますが、当たり前のことしか述べられていません。原則と基本がドラッカーの特徴です。

 

  原則や基本は、数学で言えば公式にあたります。「1+1=2」を知らなければ、もっと複雑な計算には対応できません。英語で言えば単語や文法にあたります。「Yes=はい」「No=いいえ」を知らなければ、簡単な会話もできません。

 

 ドラッカー本には、事業とは何か。その目的は何か。目的を実現させる方法は何か。このようなことが述べられています。もし本を読まず、実践のみから学んだとしても、同じ結論にたどりつく可能性があります。ただし時間がかかることでしょう。

 


 4.経営の全体像をつかむことが大切

 

  ドラッカーを勉強して、もう1つ大きく役立ったことがあります。それは経営の全体像をつかめたことです。ドラッカー以外の、たとえばナポレオン・ヒルを代表とする、いわゆる「成功本」には、自分が成功するための方法しか書かれていません。

 

  また、いわゆる「戦略本」には、売上や利益が上がる方法しか書かれていません。しかし自社が長期にわたり繁栄を続けるためには、顧客、従業員、組織、地域、社会を理解し、すべてが豊かになるように、構想を練らなければいけません。

 

 だから成功本や戦略本だけ読んでも、成功は長続きしません。もちろん両者とも読む価値はありますが、あくまでそれは各論に過ぎず、経営の全体像のどの位置にあるのかを知らなければ、本来の効果も期待できないのではないでしょうか。

 


 5.初心者におすすめは「マネジメント エッセンシャル版」

 

  数多くのドラッカーの著書の中から、お勧めの1冊と言われれば、やはり「マネジメント エッセンシャル版」です。これは先に書かれた「マネジメント 」の重要な部分だけを抜き出し、さらに手直しを加え、再編集されたものです。

 

 「マネジメント 上・中・下」は相当なボリュームで、しかも具体例が古く(米国の知らない企業ばかり)、私も一部しか読んでいません。その点、エッセンシャル版は読みやすく、初心者に最適なのではないでしょうか。

 

 私は過去に数回、読みました。1回目は約3ヶ月かけて。2回目は最初にラインマーカーを引いた箇所をたどりながら。3回目は各論点の要点をワープロでまとめ、サブノートを作りました。これも3ヶ月くらいかけたのではないでしょうか。

 


 6.本の内容を自分のモノにする方法

 

  行動がなければ何も始まりません。今すぐ購入することをお勧めします。そして意味がわからなくても、ひたすら読む。大事なところはラインマーカーを引く。自分に関係ないと思われる部分は、どんどん飛ばす。とりあえず最後まで読む。

 

 せっかく本を読んでもモノにならない。このような方もいます。何が足りないのでしょうか・・・これも「行動」です。つまり本で読んだことを、実践で試してみる。もし看板商品が必要と書かれてあったら、実際に看板商品を開発し並べてみる。

 

   新たなことを試すときのポイントは、小さく始めることです。新しいことはしばしば失敗に終わります。小さく始めれば、傷も浅く済むので、たくさん試すことができます。成功するためには自社にとって無意味な要素を特定することも必要です。

 


 7.ドラッカーを難しく感じさせる理由

 

  「マネジメント エッセンシャル版」は、とても無理と思われる方には、名言集シリーズ「仕事の哲学」「経営の哲学」「変革の哲学」がお勧め。活字量も少なく、効率よく要点をつかむことができます。私はこの3冊からドラッカーに入りました。

 

 ドラッカーを難しく感じさせる理由の1つに、わかりにくい和訳があります。ドラッカーの著書は上田惇生さんが翻訳されています。上田さんはドラッカー本人の表現を尊重されるため、直訳に近い形になり、これがわかりにくい原因になっています。

 

 だからこの言い回しを理解するのは大変な作業になります。しかし、一度理解すると、頭にこびりついて離れません。さらに慣れてくると、上田さんの訳が芸術的にすら思えてきます。今は非常に優れた訳であることに気づきました。

 


 8.ドラッカー本で経営の定期検診を!

 

 話を元に戻すと、これ以来、私はドラッカーで経営の基本をおさえ、実践で自分なりにアレンジする。このスタイルで経営に取り組むようになりました。その結果、経営に対する迷いがほとんどなくなり、順調に進むようになったのです。

 

 ドラッカーは人間や社会から出発しているため、経営を体系的にとらえています。いかに人を生かすのか。それによっていかに社会を豊かにするのかを追求する。だから成功も長続きするし、実践する側も健全な精神を維持できるのです。

 

 最近は定期的に基本を確認しなければ、知らぬ間にブレていることに気づきました。業績にかかわらず、年に一度はドラッカーを読んで確認する。人間も健康診断が必要なように、経営も定期的なチェックが必要なのではないでしょうか。

2013年の景気対策  2012.11.07

1.2013年に期待すること

 

  2013年はどんな1年になるのでしょうか。税理士として最も関心が高いのは、やはり日本国内の失業、倒産、それに伴う自殺など、不況を原因とする問題です。果たして解決の方向へ向かうのか。実は少しだけ期待していることがあります。

 

 なぜ「期待する」のか。それは新政権の誕生です。なぜ「少しだけ」なのか。それは新政権の実力がわからないからです。しかしどの党が政権を取るにせよ、重要な問題点が明らかになりつつある今、現政権よりはマシなものになるでしょう。

 

 今回は、元財務(大蔵)官僚の高橋洋一さんと榊原英資さん、元閣僚の竹中平蔵さん、経済評論家の田原総一郎さん、2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・グルーグマン教授の著書を参考に、2013年の景気対策を占ってみました。

 


  2.デフレ世界1位の日本・・・なぜデフレはいけないのか?

       

  IMF(国際通貨基金)とOECD(経済協力開発機構)の発表値によると、2011年の日本のインフレ率▲0.28%は、世界183カ国中、最下位。しかも182位のスイスが+0.23%ということは、デフレは世界で日本だけと言うことになります。

 

  なぜデフレがいけないのか。デフレになるとお金に対してモノやサービスの価値が下がります。たとえば借金(1年間の返済据え置き)をして住宅を買うと、1年後に借金の残高はそのままですが、住宅の価値は下がっています。

 

 もし長期ローンを組むと、相当な苦しみを伴います。また企業も設備投資にブレーキが掛かるため、個人も企業も消費が減少します。その結果、倒産件数と失業率が増加します。このような悪循環をデフレスパイラルと言います。

 


 3.なぜ円高はいけないのか?

 

  不況・倒産・失業の最大の原因はデフレにあります。もう1つ日本経済を苦しめているのが「円高」。円高になると、外国のモノやサービスの価格が下がります。外国旅行の費用や輸入品の価格が下がるため、個人レベルではよいと感じます。

 

 しかし国内旅行や国産品の価格が高く感じられ、国内のモノやサービスが売れなくなります。これが原因で国内企業の業績が下がり、デフレと同じように倒産件数と失業率が増加します。物価が下がる以上に収入が減ってしまうのです。

 

  社会にとって理想的なのは、「年間3%程度のインフレ」と言われています。実はデフレもインフレも、円安も円高も、市場に出回る通貨(円)の量によってコントロールすることができます。このメカニズムについて、ごく簡単にご説明しましょう。

 


 4.デフレ・円高と、通貨の量との関係                 

                      

  経済法則によって、モノやサービスは量が増えると価値が下がり、減ると価値が上がります。たとえばダイヤモンド。無数にあれば、ほとんど無価値でしょう。3万円台で買える液晶テレビも、世界に1台しかなければ、破格の値段が付きます。

 

 通貨も同じ。量を増やせば価値が下がり、減らせば価値が上がります。世界各国の中央銀行は、年間3%のインフレ(インフレターゲット)を目標に、市場に出回る自国の通貨量を調整しています。簡単に示すと、以下の流れになります。

 

 ①インフレ・デフレのシナリオ
 円の量を増加 → 円(お金)の価値が低下 → 「インフレ(物の価値上昇)」消費拡大 → 仕事・雇用増加(失業率低下)
 円の量を減少 → 円(お金)の価値が上昇 → 「デフレ(物の価値下落)」消費縮小  → 仕事・雇用減少(失業率上昇)

 

 ②円安・円高のシナリオ
 円の量を増加 → 円の価値低下 → 「円安」により輸出高増加 → 仕事・雇用増加(失業率低下) → 消費拡大       
  円の量を減少 → 円の価値上昇 → 「円高」により輸出高減少 → 仕事・雇用減少(失業率上昇) → 消費縮小

 


 5.デフレと円高を放置する日銀                 

 

 ここからマネタリーベース、マネーストック(サプライ)という言葉を用いますが、難しいので「通貨の量」と考えてください。

 

 マネーストックを増やすことを、量的緩和と言います。中央銀行が各銀行の保有する国債などを買い取って、各銀行に現金を支払うなどの方法が採られ、リーマンショック後は世界各国で大規模な量的緩和が実施され、2番底を回避してきました。

 

 総務省統計局が発表したデータによれば、2010年前4〜5年間の、各主要国のマネーストックの伸びは以下のようです。
 中国=2.26  韓国=1.57  フランス=1.29  米国=1.28  ドイツ=1.23  日本=1.05

 

 この数字だけ見ると、日銀だけが量的緩和に消極的で、自国の通貨高(円高)とデフレ(物価下落)を放置したことになります。その結果、国内で多くの倒産と失業を生み、、長期的な不況によって、国際経済にも悪影響を及ぼしたと考えられます。

 

                   
 6.日本銀行の特殊性

 

  ここで日銀の特殊性について触れましょう。日本の中央銀行である日銀は、日本銀行法第2条にて「物価の安定」のみに義務が課せられています。ところが他の主要国(欧・米・英)の中央銀行は「雇用」についても義務を負っているのです。

 

 つまり欧州のECB、米国のFRB、英国のイングランド銀行は、市場に出回る通貨の量と景気や雇用の関係を明確に反映させるため、マネタリーベースの決定権と雇用に対する責任を、同じ中央銀行に負わせています。

 

 ところが日本では「雇用」は厚生労働省の管轄なので、日銀は「物価の安定」のみに責任を負えばいい。だから円高とデフレによって、いくら多くの人が倒産と失業に苦しんでも、日銀は物価さえ安定していれば責任を負わない法律になっています。

 


 7.政策の遅れが多くの個人を不幸にしている

 

 リーマン・ショックの震源地である米国の景気回復には、まだまだ時間が掛かりそうですが、予想ほど悪くありません。これはユーロ危機により欧州に流れていたお金が米国へ移動したことに加え、FRBが積極的に量的緩和を行ったからでしょう。

 

 もし日本でも大規模な量的緩和が実施されれば、輸出企業の海外移転に歯止めがかかります。これにより下請け企業の倒産や、失業率の増加にも終止符が打たれます。しかし一度、海外に出た企業が国内に戻るのは大変なことです。

 

 また一度、倒産した企業が設備と人員をそろえ、再稼働するのも大変なことです。グルーグマン教授も、失業が長引くと本人は自信を失い、しかも企業から雇用失格者と見なされやすいと警告しています。だからもっと急がなければいけません。

 


 8.1年で1ドル100円にする方法

 

  高等数学を駆使し難解な経済学を理解する高橋さんは、60兆円の量的緩和を実施すれば、半年から1年で1ドル100円まで円安が進むと試算しました。他にもデフレと円高の原因が日銀にあると考える人が増えています。

 

  自民党の安部総裁が「来年4月に就任する日銀新総裁は大規模な量的緩和を実施できる人がふさわしい」と発言しました。最近、政府も20兆円の量的緩和を求めました。しかし日銀の回答は11兆円。多くは望めないという声もあります。

 

 現在、円安が進み80円台に戻りましたが、これも量的緩和の発表が原因と見られます。一方、日本だけが望む単独の為替介入は、1週間程度しか効果がありません。これは単なるパフォーマンスに過ぎないと、高橋さんは述べています。

 


 9.為替レートは何で決まるのか?

 

  ここで「為替レートを決める要素」ついて、高橋さんの話を確認しておきましょう。私たちにとって、自国通貨である「円」が高くなったり、安くなったりする原因を考えるとき、「国家としての強さや信用」という話がまことしやかに語られます。

 

 しかし東日本大震災の後も円高が進みました。また韓国の通貨ウォンは非常に安く、中国の元も意図的に下げられています。しかし両国とも大きな経済発展を成し遂げました。為替レートを決めるのは、あくまで通貨の供給量ということです。

 

  ここまでは量的緩和(市場に出回る自国の通貨量を増やす)で景気を回復させると説明しました。しかしこの1点だけでは足りないと、グルーグマン教授と竹中さん(小泉政権で中心的役割を果たした閣僚の1人)は述べています。

 


 10.2013年に期待する景気対策3点セット

 

  量的緩和の他に必要な政策は2つ。「短期的な公共事業」と「規制緩和」。まずは公共事業。デフレの原因は「マネーの量」の他に「受給ギャップ」があります。売る人に対して、買う人が少ないという問題を解決しなければいけません。

 

 不況時にお金を使って仕事を増やせるのは政府だけ。だから政府が公共事業を行う。ただし長期に渡ると、民間活力が失われますので、数年で終わらせる。また将来、有望な分野を育成するために、規制緩和を進めるべきだと述べています。

 

 2013年の景気対策。新政権と4月に就任する日銀の新総裁が協力して、大規模な量的緩和、②短期的な公共事業、③有望分野の規制緩和、この3つの政策を速やかに実施すれば、デフレと円高から脱却できるかもしれません。

 

 

 11.日本は財政破綻しない

 

 公共事業と言うと、日本の債務残高と財政赤字が叫ばれます。しかし様々な著者の経済本を読むと、「破綻しない」という人の方が明らかに多数です。10年以上前から日本破綻を主張する経済評論家の言葉を信じて大損をした人もいます。

 

 ユーロ建てのギリシャ国債はデフォルトするかもしれませんが、日米英などの国債はデフォルトしないと、グルーグマン教授や日本の複数の経済評論家が述べています。自国で通貨を発行する限り、足りなくなったら紙幣を刷ればよいからで す。

 

 日本の場合、借金が多くても資産も多い。量的緩和によってインフレが起きると、円建て以外の資産は拡大、円建ての借金は縮小します。しかも債務の93%は日本人が保有。「近い将来、破綻はありえない」という説を、私は支持しています。

 


 12.人としての豊かさは、日本人が世界1位

 

  2012年6月にリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」で、ケンブリッジ大学のP.ダスグプタ教授が監修した「人、自然、物質の面を包括した豊かさ」が発表されました。これによれば国単位の世界1位は米国、日本は2位。

 

 さらに人口で割り1人当たりの豊かさを算定すると、日本が1位。学力低下が叫ばれるものの、日本人の資質は世界一と評価されています。もっと自信を持つべきではないでしょうか。問題は個人の豊かさを生かせる社会ではないことです。

 

 その最も大きな原因である政治家を選んでいるのは国民。私たちに足りないモノ。それは将来に対するビジョンだと思います。目先の損得や一時的な好き嫌いではなく、日本をどんな国にしたいのかによって政治家を選びたいものです。

 


 13.「大きな政府」と「小さな政府」

 

  少子高齢化が進む日本にとって欠かせないのが福祉。「大きな政府」「小さな政府」という言葉がありますが、国民の生活に政府がどれだけ関わるのかを意味します。大きな政府は国民生活に大きく関わり、社会保障も充実しますが税金も高い。

 

  米国は「大きな政府」と「小さな政府」を行ったり来たり。1930年代にルーズベルト政権(民主党)が大きな政府として、金融恐慌再発防止のために、金融制限法を設置。ところが1980年代にレーガン政権(共和党)が小さな政府として撤廃。

 

 その後、米国の金融は無秩序化し2008年のリーマン・ショックへ。この流れから「小さな政府」は支持されにくいでしょう。ただし「大きな政府」と言っても、しょせん自由と自己責任の国ですから、世界的に見れば「小」の部類に入るようです。

 


 14.不遇の立場にある人ほど、政治や社会に関心を持とう!

 

  現在は小さな政府=米国、中くらいの政府=日英独、大きな政府=北欧・フランス。日本は米国のような競争社会にもなれないし、スウェーデンのような高福祉(消費税率25%)社会にもなれない。目指すは英国型だと竹中さんは述べています。

 

 また日本の福祉は医療と年金など老人を重視しますが、出産、育児、教育、雇用など若者向けの福祉を充実させているフランス型がよいと主張されるのが榊原さん。67歳の榊原さんから見ても、日本の福祉は高齢者に偏りすぎなのです。

 

  福祉1つにしても様々な論点があります。社会問題について国民1人1人が将来のビジョンを描く。これが低迷する政治のレベルを上げ、結果的に「日本人の豊かな資質を生かす社会」への実現につながるのではないでしょうか。

 


  ※ 参考文献・データの出所等 

    高橋洋一著「日本人が知らされていないお金の真実」 

  ポール・グルーグマン著「さっさと不況を終わらせろ」 

    榊原英資・竹中平蔵著・田原総一郎編集「それでどうする! 日本経済 これが答えだ!」

    IMF(国際通貨基金)、OECD(経済協力開発機構)、総務省統計局

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1994年税理士登録 日本税理士会連合会 登録番号 税理士法人3430 税理士78397 名古屋税理士会名古屋北支部所属

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