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税理士法人 今井会計事務所

大家さんのリスク対策  2014.07.31

 1.今、なぜ、 「大家さん」 ブームなのか?

 

  平成26年7月29日、総務省は、 「2013年住宅 ・ 土地統計調査 (速報)」 の結果を、発表しました。
 それによると、全国の住宅の空き家率が、13.5%と、過去最高。
 愛知県も、2008年の11.0%から、2013年は12.3%まで、上昇しています。

 人口減少が進む日本で、住宅が余るのは、当たり前のこと です。

 

   しかし、最近、なぜか、 「大家さん」 ブームが、続いています。
 仕掛けているのは 不動産業者でしょうか。
 これに、銀行までが、便乗しているケースもあります。 
 相手は、プロ集団ですから、初心者大家さんは、十二分に、ご用心ください。

 

  購入する側には、近年、どのような状況の変化が、あったのでしょうか。
 リーマン・ショック後は、多くの人が、将来の収入に、不安を抱き始めています。
  また、バブル期と比べ、脅威的に値下がりした物件が、市場にあふれています。
 これらの要因が重なり、これまで不動産投資に無関心だった層まで、購入意欲の高まりを見せているようです。

 

                                                                                                                
 2.大家さんは、2タイプに分かれる

 

  大家さんは、大きく分けて、2つのタイプに分かれます。
 1つ目は、 「資産家タイプ」。
 ご先祖から引き継いだ土地の上に、賃貸物件を建てて、家賃を得る、 「従来型の大家さん」 とも言えます。
 このタイプの大家さんは、保守的です。

 

  2つ目は、新しい 「投資家タイプ」 。
 もともと、所有する資産は少なく、金融機関から融資を受けて、賃貸物件を購入します。
 日頃から、セミナーなどに参加し、熱心に勉強をしています。
  このタイプの大家さんは、積極的です。

 

  私自身は、不労所得に、まったく関心がありません。 従って、 「大家さん」 になる気も、ありません。
 ただし、税理士として、違法行為から、お客様を守らなければならない、立場にある ため、日頃から、目を光らせています。
 それでは、まず、タイプ別の注意点から、お話ししましょう。

 

                                                                                                                
 3.「資産家タイプの大家さん」 が、騙されやすい 「家賃補償」 

 

   「資産家タイプの大家さんは保守的」 と、お話ししましたが、あっさり騙されるケースもあります。
 その代表的なケースが、 「建設会社による家賃補償」 です。
 たとえば、大手業者が、洗練された語り口と、複雑な表やグラフを武器に、攻め続けると、すっかり信用してしまいます。
 家賃補償、管理お任せ、相続税軽減、所得増加など、説明だけ聞いていると、よいこと尽くめです。

 

 しかし、この家賃補償の話には、裏があります。
 建設費が、相当、割高のため、家賃補償をしても、建設会社は、損をしない仕組み になっています。
 また、数年ごとに、補償額の見直しがあり、入居率が下がる度に、補償額が減らされます。
 もし、大家さんにとって、家賃補償制度が、本当に有利なものなら、多くの建設会社が、すでに倒産しているはずです。

 

  相続税軽減の話にも、注意が必要です。
 相続税は確かに減ったものの、代わりに、莫大な借金を背負わされる、ケースもあります。
 「支払先が、税務署から金融機関に変わっただけ」 では、意味がありません。
 また、更地に上モノを建てたおかげで、土地そのものの処分が、難しくなるケースもあります。

 

                                                                                                                
 4.「投資家タイプの大家さん」 が、騙されやすい 「土地と家屋の内訳金額」 

 

  「投資家タイプの大家さんは積極的」 と、お話ししましたが、知識が伴わなければ、経済的に破綻するリスクも高まります。
 ぜひ、注意していただきたいのが、 「土地と家屋の内訳金額」 です。
  この 「土地と家屋の内訳金額」 を操作すれば、販売者が大きく得をし、購入者に大きな損を、負わせることができます。
  販売者はプロ、購入者はアマチュアですから、赤子の手をひねるがごとく、簡単に、騙される可能性もあります。

 

  ご存じのように、不動産を販売した場合、土地には消費税がかかりませんが、家屋には消費税がかかります。
 もし、 家屋部分の金額が少なければ、販売者側は、消費税の負担を減らす ことができます。
 また、購入者側が物件を賃貸にした場合、不動産所得の計算上、建物の取得価額は、耐用年数に応じて、経費化できます。
 もし、 家屋部分の金額が少なければ、購入者側は、経費が少なくなるため、所得税と住民税の負担が増えて しまいます。

 

 販売価格を、総支払額だけで判断すると、販売者側の巧妙な手口に、気づくことができません。
  そこで、 土地と家屋を一括購入する場合は、必ず、 「土地がいくら」 「家屋がいくら」 を、確認 してください。
 そして、その 「土地の価格」 が、適正なものかどうかを、検討してください。
 大ざっぱな確認方法を、以下に、お知らせします。

 

                                                                                                                
 5.土地と家屋の計算方法 (目安) 

 

  「不動産の価格」 は、たくさん出回っています。
 固定資産税評価額、地価公示価格、路線価、不動産鑑定士の鑑定額、などの他に、収益還元法による価格があります。

 「何れかが正しい」 と、言い切れるものではありません。
 そこで、あくまで 「目安」 として、土地の時価を、算定してみましょう。

 

 私は税理士ですから、最もなじみ深い、相続税評価額を参考にします。
 相続税法において、土地の評価方法は、地域によって、2つに分かれます。
  都市部は、おおむね 「路線価方式」 で、都市部以外は、おおむね 「倍率方式」。

 国税庁のホームページ、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 から、何れの評価方法を採るべきか、調べてみましょう。

 

  ①路線価評価方式の場合、その土地に接する道路に、たとえば 「100E」 と、表示されていたとします。 この 「100」 は、1㎡あたり、 「100千円つまり10万円」 、 「E」 は借地権割合が、 「50%」 を意味します。

  ②倍率方式の場合、毎年4月に市町村から送付される 「固定資産税・都市計画税 (土地・家屋) 課税明細書」 で、 「価格」 を調べます。
  この金額に、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、該当する倍率を乗じて、算定します。

 

                                                                                                                
 6.「路線価方式」 と 「倍率方式」 の具体例 

 

  路線価方式の場合、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、 「100E」 なら、1㎡あたり、10万円。
  面積が100㎡なら、土地の価格は、10万円 × 100㎡ = 1000万円になります。
 もし、複数の道に接していたら、その中で最も高い路線価を乗じましょう。
 厳密に計算を行う場合は、さらに複雑ですが、目安を求めるのであれば、これで構いません。

 

 倍率方式の場合、 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、倍率を調べます。
 宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼によって倍率が異なります。
 どの区分に該当するかは、 「固定資産税・都市計画税 (土地・家屋) 課税明細書」 の 「現況地目」 によります。
  登記簿謄本に記載された 「地目」 とは、異なるケースも少なくありません。

 

 もし、 「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)課税明細書」 の 「価格」 が、1000万円。
  「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で、倍率が、 「1.5」 であれば、評価額は以下になります。
 1000万円 × 1.5 = 1500万円 
  このようにして、相続税評価額を、算定します。

 

 

 7.「買値」 と 「売値」 の違いを理解する 

 

  世の中の商取引には、2つの価格が存在します。 
 それは「買値」と「売値」。
  このケースで、 「買値」 とは、不動産業者が購入する価格、 「売値」 とは、不動産業者が販売する価格。
 当然ながら、 「売値」 は 「買値」 より、粗利益の上乗せ分だけ、高くなります。

 

 これまでの経験から言えば、 相続税評価額は、 「売値」で はなく、 「買値」 ではないでしょうか。
 それでは、売値はいくらなのかというと、 「買値×1.25」 と考えられます。
 これは、以前、税務上、通用していた 「相続税評価額は、時価の80%」 という通説を、根拠にしています。

 

 先ほどの、相続税評価額が、1000万円の土地と、1500万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・

 ①相続税評価額 (路線価方式) 1000万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・ 1000万円 × 1.25 = 1250万円

 ②相続税評価額 (倍率方式) 1500万円の土地を、不動産業者から購入する場合の適正価格は・・・ 1500万円 × 1.25 = 1875万円

 

 

8.土地と家屋、それぞれの購入価格が、分からない場合 

 

 土地と家屋を一括購入した場合、土地の価格が、前述の方法で算定した適正価格を、大きく上回る場合は、注意が必要です。
 販売者側が、消費税を節税 (脱税) する一方、購入者側が、多額の所得税と消費税を負担させられる恐れがあるからです。
 平成26年4月には、ある建設業者が、名古屋国税局に起訴されています。
 ある程度、税の知識がある者であれば、数分で不正に気づくような、初心者的な手口です。

 

 それでは、土地と家屋の価格の内訳が分からない場合は、どうすればよいのでしょうか。
 それは、契約書等に明示されている 「消費税の金額」 から逆算 することができます。
 前述したとおり、土地には消費税がかかりませんが、家屋には消費税がかかります。
 消費税の税率は、現在8%です。

 

 もし、3000万円の物件を購入し、 「うち消費税80万円」 なら・・・
 家屋の購入価格 (消費税抜) は、80万円 ÷ 8% = 1000万円
 家屋の購入価格 (消費税込) は、1000万円 × 1.08 = 1080万円
  土地の購入価格 (消費税関係なし) は、3000万円 − 1080万円 = 1920万円

 

 

9.被害額の計算方法 

 

  それでは、実際の被害額について、具体例を示しながら、ご説明しましょう。
 賃貸用の土地家屋を、5000万円で、一括購入した場合。
 適正価格は 「土地2000万円、家屋3000万円」 ですが、不正価格 「土地4000万円、家屋1000万円」 で購入。
 家屋の耐用年数期間内の、購入者の所得税と住民税の平均税率が20%のケースです。

 

 販売業者が負担すべき消費税額は、適正価格なら240万円ですが、不正価格なら80万円で、160万円の脱税です。
 また、購入者は、耐用年数期間内に、不動産所得の申告をしなければいけません。
 耐用年数期間内に、減価償却費として経費計上できる金額は、以下のとおりです。
  適正価格なら3000万円 (家屋の価格) ですが、不正価格なら1000万円 (家屋の価格)。

 

 減価償却費によって、節税できる金額は、
 適正価格なら、3000万円 × 20% (平均税率) = 600万円
 不正価格なら、1000万円 × 20% (平均税率) = 200万円。

  差引、差引400万円が、税負担増加分、つまり被害額 になります。

 

 

 10.法律上の救済措置はあるのか 

 

  もし、不正価格で不動産を購入した場合、法律上の救済措置はあるのでしょうか。
 弁護士に確認したところ、 「双方が合意して契約した後では、難しい」 との、回答を得ました。
 他に考えられる方法は、税務当局への告発くらいでしょう。
 所轄税務署または、国税局に情報を開示し、 「明らかにおかしい」 と、告発することです。

 

  これに対して、税務当局が、販売業者側に対して、税務調査を実施し、 「不正な取引」 と、認定することがあります。
 もし、不正が確定すれば、販売者側は、家屋の適正価額に基づいて、消費税の追徴課税を受けます。
 これに伴い、購入者側の土地と家屋の内訳金額も、適正な価格に、修正される可能性もあります。
  あくまで可能性に過ぎませんが。

 

  悪質な被害に遭わないためには、以下の点に、十分に、ご注意いただきたいものです。
  ①日頃から、知識を蓄えておく  ②最初から、高い買い物をしない  ③営業トークは、疑ってかかる
 また、契約書を交わす前に、税理士などの専門家に、必ず、内容確認を依頼することです。
 大家さんにとって、これらの積み重ねが、大きなリスク回避に、つながるのではないでしょうか。

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代表社員 税理士 今井 睦明


1960年生まれ 名古屋市出身 1989〜1993年 税理士試験 法人税法、消費税法、事業税、簿記論、財務諸表論、全5科目合格
 
1994年税理士登録 日本税理士会連合会 登録番号 税理士法人3430 税理士78397 名古屋税理士会名古屋北支部所属

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