人手不足は生産性向上で乗り切る  2017.03.13

 

 

 

1.人手不足を解消するためには生産性向上

 

  「コストダウン」 と 「生産性向上」。
 この2つは、ケースによって、使い分ける必要があります。
 収益率が悪化したケースであれば、不足しているのは 「人」 ではなく 「お金」。
 「コストダウン」 と 「生産性向上」 の 2 つを、同時に進めると、大きな効果が期待できます。

 

 ところで、現在は深刻な人手不足のケース。
 仕事はあるのに、それを行う人がいない。
 つまり、不足しているのは 「お金」 ではなく 「人」。
 だから 「コストダウン」 の問題と、とらえるべきではありません。

 

 課題は 「今いる人たちで、今取れる仕事を、いかにこなしていくのか」。
 つまり 「生産性向上」 のみの問題 です。
 今回のテーマはこの 「生産性向上」。
 ドラッカーが残した 「知恵のある言葉」 に沿って、進めてみましょう。

 

 

2.肉体労働を減らすと生産性が向上する

 

 ドラッカーは次のように述べています。

 

 生産性向上は、肉体労働によっては、実現されない。
  逆にそれは、肉体労働をなくす努力。
  肉体労働を他のものに、置き換える努力によってもたらされる。

 

 肉体を生かして、価値を生産するのが 「肉体労働」。
 知識を生かして、価値を生産するのが 「知識労働」 と、ドラッカーは呼んでいます。
 生産性向上という観点から見ると、肉体労働ではすぐに限界が訪れます。
 1 時間に 100 個、生産できる人が、1 時間に 200 個、コンスタントに生産するのは不可能です。

 

 知識労働の場合は、どうでしょうか。
 たとえば、効率のよい生産方法に変える。
 それだけで、生産量を 2 倍以上に引き上げることも可能になります。
  だから、自社の仕事の中身を検討し、肉体労働から知識労働へ移行させる 必要があります。

 

 

3.メンバーの意識を変える

 

 ドラッカーによれば ・・・
  「知識労働者の生産性を向上させる条件は、大きなものだけで 6 つある」 そうです。

 

 @ 仕事の目的を考えさせる。
  A 生産性向上の責任を負わせる。
  B イノベーションを行わさせる。
  C 「量よりも質」 が問題であることを理解させる。
  D 継続して学ばせ、教えさせる。
  E 彼らを 「コスト」 ではなく 「資産」 として遇する。

 

 中身を分けると ・・・
  E は経営者自身が実行すべきことと、言えます。
 @〜C は、メンバーに実行させること。
  さらに D には、「@ 〜 C を継続させるべき」 と述べられています。

 

 

4.生産性の低い肉体労働者タイプ

 

 肉体労働から知識労働への移行は、実行部分だけではありません。
 メンバーの意識部分も、肉体労働者タイプから、知識労働者タイプへと、移行させる必要があります。
 そうしなければ、社内で強い抵抗にあい、知識労働への移行は、挫折してしまいます。
  前述の @ 〜 C から浮かび上がる 「肉体労働者」 タイプとは ・・・

 

 @ 仕事の意味や目的を考えない。
  A 成果が低くても、労働時間分の賃金を求める。
  B 変化を嫌い、現状に固執する。
  C 仕事や勉強について、質 (生産性) よりも、量 (努力量) を意識する。

 

 たとえば、日本企業の賃金は、成果給ではなく、時間給 × 労働時間 で決まります。
 また年数を経るにつれ、賃金は上がる仕組みになっています。
 これは工業が中心だった 「単純肉体労働時代の遺物」 と、言われています。
 つまり 工場の流れ作業において、経験年数が同じなら、誰の生産量もほぼ同じことが、前提 になっています。

 

 

5.賃金体系を改める

 

 生産性を高めるためには、組織内の体質を、変えなければいけません。
 そこで 従業員に対して、効果的なシグナルを送る 必要があります。
  これについて、ドラッカーは次のように述べています

 

 組織内の人間にとって、報酬や報酬システムほど、強力なシグナルはない。
  報酬は金銭的な意味あいをもつだけではない。
  トップの価値観を教える。
  自分にいかなる価値があるかを教える。
  いかなる位置づけにあるか、いかに認められているかを教える。

 

 まずは、組織がどのようにな考えと行動を求めているのかを、明確に示す。
 さらに、それに基づいた評価方法を、明らかにする。
  それによって、賃金が増減することを、明確にする。
  つまり 賃金体系の見直し が必要になります。

 

 

6.「証明できるもの」 で評価する

 

  評価要素には、目に見えるもの、かつ数値で測定できるものがベスト です。
 営業職の評価であれば、販売数や、達成利益、新規開拓数など。
 これらで 100% 評価できれば、説得力もあります。
  しかし、それだけでは組織内の空気が殺伐としてしまう恐れもあります。

 

 やはり 目に見えない部分も、評価すべき ではないでしょうか。
  たとえば後輩の指導や、他部門への協力、備品の取扱いなど。
 ところで、これらを数値化するには、どうすればよいのでしょうか。
 この点について、ドラッカーは次のように述べています。

 

 人事評価は、「証明済みの仕事ぶり」 だけに焦点を合わせなければならない。
  潜在能力、人柄、将来性などは、証明できるものではない。
  これらに焦点を合わせた人事評価は、力の濫用である。

 

 

7.人選において注意すべきこと

 

 ドラッカーは、人選について、次の注意を促しています。

 

 追従や立ち回りのうまい者が昇進する。
  このような状態では、組織そのものが、業績のあがらない追従の世界となる。
  公正な人事のために、全力を尽くさないトップマネジメントの弊害である。
  それは業績を損なうリスクを冒すだけではない。
  組織そのものへの敬意を損なっている。

 

 またトップ候補の人選についても、言及しています。

 

 優れた者ほど間違いは多い。
  それだけ新しいことを試みるからである。
  一度も間違いをしたことのない者、それも大きな間違いをしたことのない者。
  このような者を、トップレベルの地位に就かせてはならない。
  間違いをしたことのない者は、凡庸である。
  いかにして間違いを発見し、いかにしてそれを早く直すかを知らない。

 

 

8.評価ほど難しいものはない

 

 私自身も従業員の評価については、人一倍、悩んだ方です。
  ドラッカーの次の言葉が、心底、身にしみています。

 

 かなりよいといえる報酬システムさえ、つくることは難しい。
  できることは限られている。
  間違った行動を褒めてはいけない。
  間違った成果を強調してはならない。
  間違った方向へ導いてはいけない。
  これらに気をつけることだけである。

 

 評価方法を変えることは、組織にとって手術とも言えます。
 ドラッカーは組織改革について、次のように述べています。

 

 組織改革を手軽に行ってはいけない。
  それは手術である。
  小さなものでも危険が伴う。
  たびたびの組織改革は退けなければならない。
  もともと完全無欠の組織はない。
  ある程度の摩擦、不調和、混乱は覚悟しておかなければならない。

 

 

9.人のマネジメントと仕事のマーケティングの共通点

 

 ドラッカーによれば、マーケティングの理想は、販売 (売り込み) をなくすこと。
 つまり 「勝手に売れる仕組み」 を作ることです。
  「人のマネジメントも、マーケティングと同じ」 と述べています。
 つまり 「勝手に応募してくる仕組み」 を作る ことです。

 

 人をマネジメントすることは、仕事をマーケティングすることを意味する。
  相手が何を望むか、相手にとっての価値は何か。
  目的は何か、成果は何かである。
  マーケティングの出発点は、組織が何を望むかではない。

 

 つまり働く人が望む会社を作ればよい。
  このような答を導くことができます。
  しかし、すべての条件を満たすことはできません。
 そこで検討すべきは、「当社が望む人材が求めるものは何か」 ではないでしょうか。

 

 

10.知識労働者が求める職場環境を整える

 

 話を最初に戻すと、当社は肉体労働を減らさなければいけません。
 そして知識労働を増やしていく。
 そのためには 知識労働者に選ばれる組織を目指す こと。
 ドラッカーは次のように述べています。

 

 どこまで知識労働者を惹きつけ、とどまらせ、やる気を起こさせるか。
  知識を基盤とする新産業の成否は、ここにかかっている。
  彼らの価値観を満足させ、社会的な地位を与え、社会的な力を与える。
  これによっ活躍してもらわなければならない。
  そのためには、部下ではなく、同僚として、遇さなければならない。
  高給の社員ではなく、パートナーとして、遇さなければならない。

 

 今いるメンバー全員が、生産性を 10% 高める。
 それだけで、人手不足の問題は、しばしば解決するものです。
  その解決のために用いるツールが、「生産性向上」。
 経営者として、その技術を高めたいところです。
 

 

 ※参考文献

 P.F.ドラッカー著 経営の哲