ドラッカーで業績回復!  2013.04.05

  

 

  1.なぜ経営の勉強を始めたのか?

  

  私が税理士登録したのは1994年。バブル経済崩壊の直後でした。日経平均株価は1989年、不動産価格は1991年をピークに下落を続けました。しかし過去の蓄積のおかげで、日本経済には十分な余力が残っていたようです。

  

 だから経営の勉強などしなくても、まじめに仕事さえしていれば業績が伸びました。転機が訪れたのは2006年。日本の人口が初めて減少に転じた年、社会の変質、つまり社会のルールが変わり始めたことに気づいたのです。

  

 当事務所も人件費が高騰、それに伴い料金も高額になっていました。このまま不況に突入していたら、経営危機に陥ったことでしょう。事前に気づいたおかげで、2年後のリーマン・ショック時には、反対に業績を伸ばすことができました。

  


 2.原因のわからない成功は長続きしない

  

  2006年、大胆な経営改革の必要性を感じ、経営の勉強に取り組み始めました。出勤前は喫茶店で、昼休みは飲食店で、夕食後に仮眠したら、その後は深夜2時まで、ひたすら経営本を読みました。年間200冊以上は、読んだと思います。

  

 ところが経営本の中身は千差万別で、一体何が正解なのかわかりません。とりあえず活字から得た知識を実践し、うまくいかなければ改善を加え、再び実践で試す。この繰り返し。すると2007年後半には業績が上がり始めました。

  

 しかし大量に得た知識を次から次へ試したため、何が幸いしたのか、その原因を特定することができません。この時期、数字的には好調でしたが「今後もこの状態を維持できる」という、確信までには至りませんでした。

 


 3.ドラッカー本との出会い

  

 勉強を初めて4年目、2009年に出会ったのがドラッカー本。過去に何度も挑戦し、やっと理解できたというのが真相です。ドラッカーは難しいと言われますが、当たり前のことしか述べられていません。原則と基本がドラッカーの特徴です。

  

  原則や基本は、数学で言えば公式にあたります。「1+1=2」を知らなければ、もっと複雑な計算には対応できません。英語で言えば単語や文法にあたります。「Yes=はい」「No=いいえ」を知らなければ、簡単な会話もできません。

  

 ドラッカー本には、事業とは何か。その目的は何か。目的を実現させる方法は何か。このようなことが述べられています。もし本を読まず、実践のみから学んだとしても、同じ結論にたどりつく可能性があります。ただし時間がかかることでしょう。

 


 4.経営の全体像をつかむことが大切

  

  ドラッカーを勉強して、もう1つ大きく役立ったことがあります。それは経営の全体像をつかめたことです。ドラッカー以外の、たとえばナポレオン・ヒルを代表とする、いわゆる「成功本」には、自分が成功するための方法しか書かれていません。

  

  また、いわゆる「戦略本」には、売上や利益が上がる方法しか書かれていません。しかし自社が長期にわたり繁栄を続けるためには、顧客、従業員、組織、地域、社会を理解し、すべてが豊かになるように、構想を練らなければいけません。

  

 だから成功本や戦略本だけ読んでも、成功は長続きしません。もちろん両者とも読む価値はありますが、あくまでそれは各論に過ぎず、経営の全体像のどの位置にあるのかを知らなければ、本来の効果も期待できないのではないでしょうか。

 


 5.初心者におすすめは「マネジメント エッセンシャル版」

  

  数多くのドラッカーの著書の中から、お勧めの1冊と言われれば、やはり「マネジメント エッセンシャル版」です。これは先に書かれた「マネジメント 」の重要な部分だけを抜き出し、さらに手直しを加え、再編集されたものです。

  

 「マネジメント 上・中・下」は相当なボリュームで、しかも具体例が古く(米国の知らない企業ばかり)、私も一部しか読んでいません。その点、エッセンシャル版は読みやすく、初心者に最適なのではないでしょうか。

  

 私は過去に数回、読みました。1回目は約3ヶ月かけて。2回目は最初にラインマーカーを引いた箇所をたどりながら。3回目は各論点の要点をワープロでまとめ、サブノートを作りました。これも3ヶ月くらいかけたのではないでしょうか。

 


 6.本の内容を自分のモノにする方法

  

  行動がなければ何も始まりません。今すぐ購入することをお勧めします。そして意味がわからなくても、ひたすら読む。大事なところはラインマーカーを引く。自分に関係ないと思われる部分は、どんどん飛ばす。とりあえず最後まで読む。

  

 せっかく本を読んでもモノにならない。このような方もいます。何が足りないのでしょうか・・・これも「行動」です。つまり本で読んだことを、実践で試してみる。もし看板商品が必要と書かれてあったら、実際に看板商品を開発し並べてみる。

 
  新たなことを試すときのポイントは、小さく始めることです。新しいことはしばしば失敗に終わります。小さく始めれば、傷も浅く済むので、たくさん試すことができます。成功するためには自社にとって無意味な要素を特定することも必要です。

 


 7.ドラッカーを難しく感じさせる理由

  

  「マネジメント エッセンシャル版」は、とても無理と思われる方には、名言集シリーズ「仕事の哲学」「経営の哲学」「変革の哲学」がお勧め。活字量も少なく、効率よく要点をつかむことができます。私はこの3冊からドラッカーに入りました。

  

 ドラッカーを難しく感じさせる理由の1つに、わかりにくい和訳があります。ドラッカーの著書は上田惇生さんが翻訳されています。上田さんはドラッカー本人の表現を尊重されるため、直訳に近い形になり、これがわかりにくい原因になっています。

  

 だからこの言い回しを理解するのは大変な作業になります。しかし、一度理解すると、頭にこびりついて離れません。さらに慣れてくると、上田さんの訳が芸術的にすら思えてきます。今は非常に優れた訳であることに気づきました。

  


 8.ドラッカー本で経営の定期検診を!

  

 話を元に戻すと、これ以来、私はドラッカーで経営の基本をおさえ、実践で自分なりにアレンジする。このスタイルで経営に取り組むようになりました。その結果、経営に対する迷いがほとんどなくなり、順調に進むようになったのです。

  

 ドラッカーは人間や社会から出発しているため、経営を体系的にとらえています。いかに人を生かすのか。それによっていかに社会を豊かにするのかを追求する。だから成功も長続きするし、実践する側も健全な精神を維持できるのです。

  

 最近は定期的に基本を確認しなければ、知らぬ間にブレていることに気づきました。業績にかかわらず、年に一度はドラッカーを読んで確認する。人間も健康診断が必要なように、経営も定期的なチェックが必要なのではないでしょうか。