やりがいのある仕事  2019.01.20

 

 

1.なぜ優秀な人が、輝きを失うのか ?

 

 私は 60 歳に近い人間です。
 最近は 10 〜 20 代で出会った人たちと、再会する機会が増えました。
 その中には、かつての輝きを、失った人たち もいます。
 会話や表情などから、1 時間もすれば、気づくことができます。

 

 原因が、病気や事故、災害などの不可抗力。
 またはプライベートに関するものであれば、お気の毒と言えます。
 しかし、仕事が原因であれば、改善の余地 があります。
 なぜなら人生 100 年時代、まだまだ挽回するチャンスがあるからです。

 

 今回のテーマは 「やりがいのある仕事」。
 参考文献は、クレイトン ・ M ・ クリステンセン共著 イノベーション・オブ・ライフ」。
 経営学の観点から、科学的にアプローチしています。
 かつて生き生きとしていた人には、特に活力を取り戻して欲しいものです。

 

 

2.必要最低限あればよいもの

 

 「仕事へのやりがい」 に関して、前述の著書の中で紹介されているのが ・・・
 フレデリック ・ ハーズバーグの理論。
 この理論では、2 つの要因に注目します。
 「衛生要因」 と 「動機づけ要因」。

 

 1 つ目の 「衛生要因」 とは、不足すると不満を生むが、多すぎても喜ばれない要因です。
 衛生状態が悪いと健康を害するが、衛生状態がよくても、健康増進にはつながらない。
 ここから、名づけられたそうです。
 具体的には、収入、地位、名誉、職の安定、作業条件、会社の方針、管理方法など。

 

 経営者側から見ると ・・・
 これらについては、足りないと不満が起きるが、多くても 「やりがい」 にはつながらない。
 もし最低レベル、または一般平均レベルを満たさない要因があれば ・・・
 ただちに改善に取り組むべきでしょう。

 

 

3.より多くあった方がよいもの 

 

 2 つ目の 「動機づけ要因」。
 こちらが、仕事にやりがいを生み出すものです。
 動機づけは、外部からの働きかけや刺激とは、関係なく ・・・
 「自分の内面」 と 「仕事の内容」 に、関係があるそうです。

 

 動機づけとなる、仕事の内容とは、たとえば以下のようなものです。
 @ 本当に意味のある仕事
 A 興味深く、挑戦しがいのある仕事
 B 自分が成長できる仕事
 

 これらの仕事の大前提となるのは ・・・
 仕事を通じて、自分は有意義な貢献をしている。
 このような自負ではないでしょうか。
 もちろん貢献の対象は、自分以外の者、広くは社会などを意味します。

 

 

4.「仕事にやりがいを見いだす人」 と 「仕事にやりがいを見いだせない人」 の違い

 

 ここまでの内容をおさらいすると ・・・
 仕事にやりがいを見いだせるかどうか。
 この問題に取り組むためには、2 つの要因に注目します。
 それは 「衛生要因」 と 「動機づけ要因」。

 

 仕事にやりがいを見いだせない人は ・・・
 「衛生要因」、つまり多すぎても嬉しくない要因を、いつまでも追求します。
 具体的には、収入、地位、名誉、職の安定、作業条件、会社の方針、管理方法など。
 これら外的要因のみを追求するあまり、内的要因を疎かにしています。

 

 一方、仕事にやりがいを見いだせる人は ・・・
 仕事を通じて、他者に貢献できる 「動機づけ要因」 を追求しています。
 このような自負が得られる仕事を求め、最善を尽くすことによって、自尊心を育んでいます。
 つまり内的要因を優先させています。

 

 

5.お金は必要な分だけあればよいのか ?

 

 クリステンセン教授が面白いと指摘しているのは ・・・
 この理論では、収入が、「動機づけ要因」 ではなく 「衛生要因」 であること。
 「衛生要因」 とは、不足すると不満を生むが、それ以上、増えても嬉しくない要因のこと。
 収入の他に、地位、名誉、安定など。

 

 お金は確かに大切です。
 お金が足りなければ、生活に支障が出るので、そのレベルまでは、何とか稼ぎたいものです。
 しかし一定の収入が得られるようになったら ・・・
 仕事の目的を、「動機づけ要因」 に、切り替えていかなければいけません。

 

 この切り替えがうまく進まないと、いつまで経っても、お金を追い求めます。
 いわゆる 「むさぼる」 という状態。
 これが人生にやがて不幸をまねく、大きな原因になるのではないでしょうか。
 お金に限らず、衛生要因すべてに言えることでしょう。

 

 

6.お金や地位、名誉は、わかりやすいもの

 

 衛生要因と動機づけ要因には ・・・
 次のような違いもあります。
 「衛生要因」 である、お金、地位、名誉などは ・・・
 「目に見える (世間に周知された) もの」 であり、「数値や文書」 で表しやすい、つまり 「わかりやすいもの」 です。

 

 反対に、「動機づけ要因」 である、自分が成長できる仕事の価値などは ・・・
 「目に見えない (自分の内部にある) もの」 であり、「数値や文書」 で表しにくい、つまり 「わかりにくいもの」 です。
 さらに 「衛生要因」 を求めるのは、本能や感情など、原始的な欲求に基づくもの。
 「動機づけ要因」 を求めるのは、理性や思考など、成熟した欲求に基づくものではないでしょうか。

 

 つまり、お金や地位、名誉などに執着するのは、「わかりやすいもの」 だからかもしれません。
 たとえば、「年収 100 万円」 よりも、「年収 1000 万円」 の方が多いことは、小学生でもわかります。
 係長よりは課長、課長よりは部長の方が、地位が高いことは、新入社員でもわかるでしょう。
 しかし、各人が 「どれだけ仕事にやりがいを持っているのか」 は、単純に比較したり、評価することができません。

 

 

.「仕事へのやりがい」 について考える時間を、意識的に設ける

 

 お金を求める根底には、「収入や貯蓄が不足している」 という自覚があります。
 しかし、その自覚レベルは、人それぞれ。
 100 万円の貯蓄で不足を感じない人もいれば、100 億円の貯蓄でも不足を感じる人がいます。
 この 過剰な不足感の根底には、将来に対する過剰な不安がある のかもしれません。

 

 今回のテーマは「 やりがいのある仕事」。
 問題は、お金などの 「衛生要因を求める」 ことにあるのではなく、「動機づけ要因を求めない」 ことにあります。
 お金や地位、名誉を求めること、それ自体は悪くはありませんが・・・
 仕事のやりがいは、必ず求めなければいけないということ。

 

 人間の脳は、同時に 2 つのことを処理することができませんので・・・
 「衛生要因」 を求める時間を一部カットして、意識的に 「動機づけ要因」 を求める時間を設ける。
 必要最低限の収入が得られるようになったら、仕事へのやりがいを求め始める。
 年齢を経るごとに、その比率を高めていく。

 

 

8.マズローの欲求 5 段階説

 

 @ 生理的欲求 ・・・・・ 原始的欲求を満たしたい
 A 安定的欲求 ・・・・・ 生活を安定させたい
 B 社会的欲求 ・・・・・ 仲間が欲しい
 C 承認の欲求 ・・・・・ 尊敬されたい
 D 自己実現の欲求 ・・・ 自分の能力を最大限発揮して社会に貢献したい

 

 マズローの欲求 5 段階説によれば ・・・
 人間の欲求は上記 5 段階に沿って、@ → D へと成長します。
 早く成長させるコツは、@ 〜 C を必要最低限のレベルで通過する。

 

 衛生要因であるお金や地位、名誉は、@ 〜 C を満たす材料 ではないでしょうか。
 お金、地位、名誉に執着する人は、よくて C 止まり。
 人間関係に執着する人は、B 止まり。
 生活の安全や安定に執着する人は、A 止まり

 原始的欲求をコントロールすることができず、犯罪を犯してしまう人は、@ 止まりでしょうか。

 

 

9.精神的疲労の蓄積に注意する

 

 今後は、さらに長期化しますが ・・・
 これまでの社会でさえ、就職から定年退職まで約 40 年。
 このような長い期間、お金や地位を目標に、やりがいもなく仕事を続けていれば ・・・
 精神的疲労の蓄積は、相当なもの になります。

 

 数十年ぶりに旧友と再会したとき ・・・
 プライベートは満たされているのに、かつての輝きを失った人たちがいました。
 覇気のあった頃の姿を知っているだけに、非常に残念な気持ちになりました。
 その原因は、長期間に蓄積された精神的疲労にあった と推測されます。

 

 たとえば教師の場合 ・・・
 校長や教頭になることよりも、教師としての使命に重点を置く べきです。
 当たり前のことですが、誰もが校長や教頭になれる訳ではありません。
 それを目標にしてしまうと、多くの教師が幸せになれないのではないでしょうか。

 

 

10.やりがいは自分で獲得するもの

 

 一方、仕事そのものに、やりがいをもつ人は ・・・
 同じ仕事量でも、やりがいのない人よりも、疲労感がずっと少ない ものです。
 さらに仕事が好きなので、大量の仕事に挑戦します。
 その効果もあり、成長速度が高まるため、ますます仕事にやりがいをもちます。

 

 仕事へのやりがいは、他者から与えられるものではありません。
 自分で今の仕事の中に見いだすもの。
 または、自分でやりがいのある仕事へ移るべきもの。
 もしくは、自分で生み出すものでもあります。

 

 たとえば、自分が名もないラーメン店主だったします。
 一方で、世の中には、中華の達人と呼ばれる人もいます。
 達人の料理は素晴らしいのですが、近所の人たちに団らんの場を提供することができません。
 そこに自分のやりがいがあるはずです。

 

 

11.もう1つの大間違い

 

 本書には、最も陥りやすい間違いとして ・・・
 「それさえあれば幸せになれる」 と信じてしまう ことが、挙げられています。
 戦後日本人は、経済的に豊かになれば、国民は幸せになれると信じて、過酷な労働に耐えました。
 しかし、その代償として、失ったものも少なくありません。

 

 個人の場合 ・・・
 お金に苦労した人が、お金に執着して、けっきょく幸せになれないケース。
 家庭に恵まれなかった人が、家族に執着して、けっきょく幸せを壊してしまうケースなど。
 とてもお気の毒ではありますが。

 

 仕事に関して、クリステンセン教授は、次のように述べています。
 もっと高い報酬、もっと権威のある肩書き、もっと立派なオフィスなど。
 これら 職業上の成功を示す、目にみえやすい証に執着しないこと。
 なぜなら、それは 「自分の成功を、友人や家族に示すためのもの」 でしかないからです。

 

 

12.「やりがいのある仕事」 を手に入れる方法

 

 20 代前半の頃、重要なことに気づきました。
 それは人生の中の健康な期間のうち、目覚めている時間の大半は、仕事のために費やされること。
 勤務中はもちろん、通勤時間も、昼休みも、仕事に関する勉強時間も、すべて仕事のため。
 だから、仕事が嫌になったら、人生の大半が嫌なものになります。

 

 それは私にとって、人生の失敗を意味しました。
 だから 「絶対に仕事を楽しもう」 と決意。
 当時は拝金主義を非難する風潮もあり、やりがい中心の仕事習慣を身につけることができました。
 最後は、クリステンセン教授の言葉で締めくくりましょう。

 

 幸いにも、動機づけ要因は職業や時間を経ても変わらないため、
 これを絶対的な指針として、キャリアの舵取りをしていけばいい。
 金銭、ステータス、報酬、職の安定といった衛生要因は、ある一定水準を超えると、
 仕事での幸せを生み出す要因ではなく、幸せがもたらす副産物に過ぎなくなることを忘れてはならない。
 これさえおさえておけば、本当に大切なことに心ゆくまで集中できる。

 

 

 ※参考文献

  クレイトン・・クリステンセン著 イノベーション・オブ・ライフ