マーケティングの基本(後編・戦術)  2017.07.16

 

 

1.「戦略」 と 「戦術」 を混同しない

 

 戦略と戦術は、混同されがちです。
 戦略とは、ミッション (当社の使命・目的・目標) を実現させるための、長期的プラン。
 さらに、戦術とは、戦略を実現させるための、具体的・短期的なプランです。
 木にたとえれば、ミッションが 「根」、戦略が 「幹」、戦術は 「枝・葉」 と言えるかもしれません。

 

 通常、他社の戦略は、外部から見えません。
 見えているのは、表面的な戦術の部分のみです。
 だから、もし 好調な他社を、表面的に真似たとしても、一時的な成功に終わりがちです。
 戦略が異なるので、一貫性や統一性に、欠けてしまうからです。

 

 このようなケースでは、戦略を推測してみましょう。
 @ セグメンテーション  →  A ターゲティング  →  B ポジショニング
 他社はどんな顧客をターゲットにして、どのようなポジションを狙っているのか。
 もし、その戦略が当社に合うものでなければ、深追いする必要はありません。

 

 

2.マーケティング戦術で具体化する

 

 マーケティング戦略では、以下の手順で、作業を進めてきました。
   @ セグメンテーション ・・・ 市場・顧客を細分化
   A ターゲティング ・・・・・ ターゲットにする顧客を選択
   B ポジショニング ・・・・・ 当社の立ち位置を決定

 

 マーケティング戦略によって ・・・
 当社や当社の商品を、「ターゲット客の心の中に、どう位置づけるか」 が決まりました。
 マーケティング戦術では、さらに具体的な方法へと進みます。
 おもな戦術は、「差別化」 と 「マーケティング・ミックス」。

 

 実は、マーケティングを実践している中小企業は、ほとんどありません。
 ターゲット客が絞りきれず、人、モノ、資金、時間などの経営資源が、分散されています。
  だから、中小企業こそ、マーケティングを実践すべきです。
 この 2 つをマスターしただけでも、成果に恵まれる可能性が、高まるのではないでしょうか。

 

 

3.差別化

 

 製品やサービスが、同業他社と比べて差のない市場を、コモディティ市場と言います。
 他と違いがなければ、価格競争に巻き込まれます。
  そこで求められるのが、差別化。
 ターゲット客から見て、同業他社と異なる違いを、作り出す ことです。

 

 もちろん 「意味のある違い」 であれば、ベストです。
  しかし 「意味のない違い」 でさえ、成果を生む ことがあるそうです。
  たとえば 「シルク入りシャンプー」 は、まったく効果がないのに売れました。
  差別化には、以下の種類があるそうです。

 

 1.製品による差別化 @特徴 A性能 B適合 C耐久性 D信頼性 E修理可能性 Fデザイン(色・形)
 2.サービスによる差別化 @コンサルティング A顧客トレーニング  B配達 C取付 D修理

 3.スタッフによる差別化

@コミュニケーション A親切丁寧 B迅速な対応 C信頼性 D確実性  Eスキル

 4.イメージによる差別化 @文章 A雰囲気 Bメディア Cシンボル Dイベント

  

 

4.マーケティング・ミックス

 

 マーケティング・ミックスとは、「マーケティング・ツールの組み合わせ」 のことです。
  
代表的なものは、4P と呼ばれます。
  Product (製品)、Price (価格)、Place (流通チャネル)、Promotion (広告)。
 しかし、4P は、あくまで企業側の視点。

 

 一方、顧客側の視点は、4C と呼ばれます。
 Customer Value (顧客から見た価値)、Cost to the Customer (顧客の総負担)
 Convenience (入手の容易性)、Communication (会話・意思疎通)
 最近は、顧客側の視点である 4C を理解してから、4P の差別化を検討すべきと、言われています。

 

 企業は 「製品」 に関心があります。
 しかし、顧客の関心は「自分が得られるメリットや、解決してくれる問題」にあります。
 いくら業界トップの性能であっても、関心のないものには、見向きもしません。
 だから、Product (製品) の差別化は、Customer Value (顧客から見た価値) の観点から、検討する必要があります。

 

 

5.顧客観点から差別化

 

 企業は 「価格」 に関心があります。
 しかし、顧客の関心は 「製品を購入から、使用、廃棄に至るまでの、総コスト」 にあります。
 購入価格だけではなく、維持費や廃棄費も含めて、比較します。
 だから、Price (価格) の差別化は、Cost to the Customer (顧客の総負担) の観点から、検討する必要があります。

 

 企業は 「流通チャンネル」 に関心をもっています。
 しかし、顧客の関心は 「入手の容易性」、つまり 「手に入りやすいかどうか」 にあります。
 企業側にとって都合のよいルートとは限りません。
 だから、Place (流通チャネル) の差別化は、Convenience (入手の容易性) の観点から、検討する必要があります。

 

 企業は 「広告」 に関心があります
 しかし、顧客の関心は 「会話や意思疎通」 にあります。
 広告という、一方通行のものではありません。
 だから、Promotion (広告) の差別化は、Communication (会話・意思疎通) の観点から、検討する必要があります。

 

 

6.価格の差別化

 

 企業が価格を決めるとき、以下の算式を用います。
 価格 = 人件費などの総コスト + 確保したい利益
 ただし、これは、企業側の一方的な希望にすぎません。
 「安い」 か 「高い」 かを決めるのは、あくまで顧客です。

 

 たとえば、化学製品でお馴染みのデュポンでは ・・・
 @従来型ホースの交換サイクルは 「1年に1回」 ですが、新製品の改良型ホースなら 「3年に1回」 で済みます。
 A交換の度に、工場の生産ラインが 1 日停止することにより、1 万ドルのコストが発生します。
 B3 年間のコストを比較すると、従来型なら 「ホース3本分 + 3万ドル」、改良型なら 「ホース1本分 + 1万ドル」になります。
 そこで問題 ・・・ 改良型ホースを多く販売したいデュポンは、どんな価格付けをするのでしょうか。

 

 30 代の頃、私は幸運にも、ある著名な経営者が主催される勉強会に、参加させていただきました。
 そこで 「顧客が進んで購入する価格のうち、最も高い 1 点を見抜け」 と、教えられました。

 

 

7.流通チャネルの差別化

 

 化粧品は小売店を通して、店頭販売されるのが、当たり前でした。
 しかし、後発のエイボンは、店頭に並べてもらえません。
 そこでセールス・レディを育成し、「個別訪問販売」 で成功しました。
 またタッパウェイは 「パーティ形式」、アムウェイの 「マルチ商法」は、日本でもお馴染みです。

 

 また、ダイレクト販売も拡大しています。 
 デルのパソコン、ソニー損保などは、低コストを生かして、低価格を実現しています。 
 またカスタマイズをしやすい点でも有利です。 
 ただし、同一企業内で、店頭販売とダイレクトを行うと、取引の奪い合いなど、対立を生みやすいそうです

 

 ネットやカタログの通販も、大人気です。
 私もその 1 人で、家に居ながら、各地から買い物をすることができます。 
  実店舗をもたなくてもよいので、低コストでスタートできます。
 便利でしかも低価格、時代に合った流通チャネルと言えます。

 

 

8.プロモーションの差別化

 

 プロモーションの差別化には、以下の方法があります。
 @ 広告  A セールス・プロモーション  B PR  C 営業マン  D  ダイレクト・マーケティング
 それぞれの特徴を理解し、最低でも 1 つは得意分野にしたいものです。
  業界常識を超えた方法も、検討したいものです。

 

 「広告」 は、最も強力な手段です。
 しかし、一工夫がなければ、その他大勢の中に埋もれ、顧客の目に留まりません。
 ターゲット客が求めているものを、いかに伝えるかが問われます。
  手段としては、インターネット・メール・FAX・新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・屋外広告・電話・DMなど。

 

 セールス・プロモーションとは・・・
 「ただ今、○○セール」 「今なら○○がプレゼント付き」 「もれなく賞品が当たる」 ・・・など。
 多くの場合、安いときしか売れなくなります。
 ただし、優れた商品を試用品で広めるケースなどでは、有効なのだそうです

 

 

9.顧客にベネフィットを提供する

 

 当社には特徴がない。
 このようなケースでも、差別化を進めることができます。
 顧客に対して、ベネフィット (利益や便益) を提供する方法です。

 

 @〜G のうち、まずは 1 つを強化しましょう。

 

 @ 製品やサービスを、お客様ごとにカスタマイズ 
 A 使いやすい、利用しやすいなど、利便性が抜群 
 B すばやいサービス 
 C よりよいサービス 
 D 指導、研修、コンサルティングのサービス付き

 E ダメな場合は、○○を保証 
  F ハードウェアとソフトウェアの提供
 G 会員のみの特典

 

 

10.マーケティングに挑戦!

 

 1945 年の終戦以来、日本経済は右肩上がりで、成長を続けました。
 この時代は、受け身の経営でも、業績が伸びたものです。
 ところが 1990 年代のバブル崩壊。
  さらに、失われた 20 年に続き、リーマン・ショック。

 

 時代はすっかり変わり果て、攻めない企業は、生き残れなくなりました。
 しかし、カンや経験、ウワサやデマ、願望や思いつきで、攻めるのは危険です。
 安定経営を目指すなら ・・・
  マネジメント理論に基づいて、根拠のある経営を目指しましょう。

 

 まずは集客、そのツールは、マーケティングです。
 今回は 2 度に分けて、フィリップ・コトラーのマーケティングに触れました。
 「基本中の基本」 しか、取り上げていませんが・・・
 マーケティング挑戦への、きっかけになれば幸いです。

 


  ※ 参考文献 
  フィリップ・コトラー著 戦略的マーケティング マーケティング・コンセプト
   宮崎哲也著 フィリップ・コトラーのマーケティング論がわかる本

 

 

前回のテーマ 「マーケティングの基本(前編・戦略) 」 → こちら