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税理士法人 今井会計事務所

生産性向上と知識労働への移行   2010.07.14


 1.生産性向上と知識労働への移行

 生産性の向上は、肉体労働によっては実現されない。逆にそれは、肉体労働をなくす努力、肉体労働を他のものに置き換える努力によってもたらされる。このドラッカーの言葉を実証するかのように、成長された企業をご紹介しましょう。

 

 当事務所もお世話になっている「ブログdeホームページ」さん(以下「B社」)です。従来型のホームページ(以下「HP」)制作会社に依頼した場合、初期費用数十万円から複数年契約で数百万円まで、さらに月額費用や更新料も請求されます。

 

 しかし、B社は初期費用49,800円、月額費用4,900円(税別)のみ。更新料に至っては無料という破格の料金を実現させました。そこにはドラッカーのいう「肉体労働から知識労働への移行」が大胆に行われています。

 

 2.ブログdeホームページさんの場合

 それではB社のシステムについて簡単にご説明しましょう。最初にコンサルタントの方の説明と質問に答えながら、あらかじめ用意された中からデザインを選んだり、ページ数やタイトルなどの希望を伝えると、基本的なフォームが納品されます。

 

 そこから先のページ作りは自分で行います。「従来型」のホームページはこの作業が非常に難しく、プロに依頼しなければいけませんでした。これが料金高騰の主な原因になっています。ところがB社は初心者でも行える「ブログ型」という形式を採用しています。

 

 各ページはワープロソフトやエクセルで作成した原稿をコピーし、太字や色づけなどで外見を整えれば完成。B社はこれら顧客が行う一連の作業に対して、丁寧な電話相談、豊富なマニュアル、メールによる情報提供など、非常に充実したサポート体制を整えています。

 

 3.知識労働への移行によるイノベーション

 従来までのHP制作会社の仕事は、HP制作という肉体労働がメインでした。これに対してB社は作業の大部分を顧客自身に任せ、そのためのサポート、つまり知識労働を仕事の中心に据えました。これによって高い収益性を実現させているものと思われます。

 

 確かに単価は低いのですが、毎月150件程度の予約がいっぱいになります。業種別の作成例をご覧になるとわかりますが、多くの企業が自社でHPを作成するようになりました。これはドラッカーが定義するイノベーションと言えるのではないでしょうか。

 

 イノベーションはつまるところ、経済や社会を変えなければならない。それは消費者、教師、農家、眼科手術医の行動に変化をもたらさなければならない。イノベーションは、市場にあって、市場に集中し、市場を震源としなければならない。

 

 4.学ぶべき点の多い企業を選択する

 私はB社の低料金や利便性以上に、このビジネスモデルに魅力を感じています。優れたビジネスモデルは、自社と顧客に成果をもたらしますが、間違ったビジネスモデルや、陳腐化したビジネスモデルは、努力を無駄に終わらせます。

 

 また、経営者自身がHP作成に関わると、自社の強みや業務内容、顧客や市場、さらには社会の動きなどについて、改めて見直す機会が与えられます。これらは必ず経営に役立ちますので、HPは自社作成を強くお勧めします。

 

 B社のような学ぶべき点の多い企業とおつき合いしていると、取引以上のメリットが得られます。自社の経営に役立つヒントは異業種の中にも見つかるものです。食事1つにしても同じ料金を支払うなら、学ぶべき点の多い企業を選択すべきではないでしょうか。

   
※参考文献
  P.F.ドラッカー著「経営の哲学」        
P104  P.F.ドラッカー著 「変革の哲学」         P102 

小事に囚われない生き方   2011.07.01


 1.小さなお金に囚われると大きなお金を失う

 小利を顧みるは、則ち大利の残なり (しょうりをかえりみるは、すなわちだいりのざんなり)

 

 韓非子の中の一節です小さな利益に囚われると、大きな利益を失ってしまう」という意味です。お金に関して言えば「基本中の基本」。商売に関しても「鉄則中の鉄則」と言えます。ところが、このような失敗はなかなか跡を絶たないものです。

 

 身近なところでは、特売日に不要なものまで買ってしまうケース。このくらいならまだ許せますが、高額配当につられて詐欺事件の被害者になった人や、わずかな賄賂に手を付けて失脚した政治家などは、後悔、先に立たずと言ったところでしょうか。

 

 2.苦しいときにわかる企業体質

 最近は業績不振の企業も少なくありません。そこでマーケティング系の戦略本を開くと、次のようなことが書かれています。「新規顧客開拓はコストがかかります。お金のかからない既存客への売り込みを強化して、客単価を引き上げなさい」。

 

 しかし当社が苦しいときは既存のお客様も苦しいものです。「せっかく今まで取引してやったのに、苦しい時にさらに売りつけるとは何ごとだ」ということになります目先の小利に囚われると、顧客そのものを失う恐れもあるでしょう。

 

 長年、利益をもたらしてくれたお客様であれば、今後も取引が続くように、相手の経済的負担を減らす工夫も必要です。ただし単純な値引きのみでは、当社の財政状態を苦しくするだけ。ここでピンチをチャンスに変えられるかどうかが問われます。

 

 3.大きな損失を免れるために、小さな損失を受け入れる

 韓非子の一節は「小さな利益に囚われると、大きな利益を失ってしまう」という意味でしたが、これは利益のみならず損失にも当てはまります小さな損失を恐れると、もっと大きな損失を被ことも少なくありません。

 

 たとえば車のリコール問題。小さな損失を恐れて発表をためらっていると、信用失墜を含め損失額はどんどん拡大します。また不動産や株式の場合、バブル崩壊直後に損切りができなければ、企業生命を脅かすほどの問題にまで発展することがあります。

 

 自分が乗っている船が「ドロ船」なのかどうか。経営者は各取引ごとにチェックする必要があります。もしドロ船だとわかれば、一刻も早く船外に脱出すべきです。小さな損失を受け入れることができれば、敗者復活戦でその損失を取り戻すこともできます。

 

 4.小利を要求する人、大利を呼び込む人

 ある会社に様々な理由をつけて小金を要求する社員の方がみえます。これだけが原因ではないと思われますが、社長さんから今ひとつ信頼されていません。一方、他社の話ですが、社長さんから絶大な信頼を寄せられている社員の方がみえます。

 

 損得抜きで仕事に打ち込んだ結果、同僚の倍近くまで昇給しました。小利に囚われなければ、信頼という財産を築くことができます。信頼は小利とかけ離れた大利を呼び込むこともあります。この知恵の深さの違いに気づくべきではないでしようか。

 

 小さなお金に頭を悩ませる暇があったら、仕事量を増やす。仕事に関する勉強をする。仕事に関する技術を磨く。仕事に関する情報を収集する。仕事に関する人間関係を豊かにする。これは経営者のみならず、サラリーマンにも求められる姿勢です。


 5.経営者こそ小さなことに囚われない

 思う。悩む。努力する。これらは何れも重要です。しかし、さらに重要なのは、何を、思い、悩み、努力するのか、です。この「何を」が間違っていると、いくら一所懸命、思い、悩み、努力したとしても、すべてがつまらない結果に終わります。

 

 それでは小事に囚われると、なぜ大事がうまくいかなくなるのでしょうか。それは大きなことと小さなことを同時に見るのは、至難の業だからだと思います。小さなお金に囚われると、世の中の大きな理屈や仕組みが目に入らなくなるのではないでしょうか。

 

 このような経営者は、大きな決断を下すことができません。なぜなら結果が予測できないからです。経営者が決断を下さなければ、企業は立ち往生します。こうならないためにも、経営者こそ小さなことに囚われすぎないように心掛けたいものです。

 

 6.視点を変えると、もう1つの世界が見えてくる

 造物は涯りあり、而して人情は涯りなし。涯りあるを以って涯りなきを足らせば、勢い必ず争う。故に人、足るを知れば、則ち天下、余りあり。(ぞうぶつはかぎりあり。しかしてにんじょうはかぎりなし。かぎりあるものをもってかぎりなきをたらせば、いきおいかならずあらそう。ゆえにひとびと、たるをしれば、すなわちてんか、あまりあり。)

 

 物には限りがあるが、人間の欲望には限りがない限りない欲望を、限りある物で満たそうとすれば、必ず争いが起きる。だから人々が自分の欲望をコントロールして、「現状でも十分足りている」ことに気づけば、物が不足することなどありえないだろう。

 

 出典は呻吟語。食事を美味しく取る方法は2つあります。「ご馳走を食べる方法」と「お腹を空かせる方法」。毎日ご馳走を食べ続ければ、どんなご馳走でも不味く感じられるようになります。逆にお腹を空かせれば、どんな食事でも美味しくいただくことができます。

 

 7.運を天に任せてベストを尽くす生き方

 19歳の時、伊藤肇著「人間的魅力の研究」の中で、幕末維新を颯爽と生きた桐野利秋のことを知りました。小事に囚われず、線が太く、陽性で、実行力のある人物だったそうです。その桐野利秋が好んだ詩句を、私は50歳になった今も憶えています。

 

 死生命あり、富貴天にあり。(しせいめいあり、ふうきてんにあり)。「寿命に恵まれるか、お金に恵まれるかは、天の意志によって決まる・・・あれこれ悩んでも仕方がない。結果は天に任せて、自分はベストを尽くそう」。

 

 人生にはどうにもならないことがあります。それに対して延々と悩み続ける生き方もあれば、運を天に任せてベストを尽くす生き方もあります。どちらの生き方を選択した方が、よりよい結果をもたらすでしょうか。ここにこの言葉の真価があると思われます。

 

 8.死生命あり、富貴天にあり。

 前述の「死生命あり、富貴天にあり」を、論語(顔淵篇)からご紹介して、今回の終わりとしましょう。

 

 司馬牛、憂えて日く、「人は皆兄弟あり。我独り亡し」。子夏日く、「商これを聞く、死生命あり、富貴天に在り、と。君子敬して失うなく、人と恭しくして礼あらば、四海の内みな兄弟なり。君子何ぞ兄弟なきを患えんや」。

 

 (しばぎゅう、うれえていわく、「ひとはみなきょうだいあり。われひとりなし」。しかいわく、「しょうこれをきく、しせいめいあり、ふうきてんにあり、と。くんしけいしてうしなうなく、ひととうやうやしくしてれいあらば、しかいのうちみなきょうだいなり。くんしなんぞきょうだいなきをうれえんや」。)

 

 司馬牛が嘆きました。「他の人には兄弟がいるのに、私だけがどうして独りぼっちなんだろう」。これを聞いた子夏が次のように慰めました。「寿命に恵まれるか、お金に恵まれるかは、天の意志によって決まるという。それよりも謙虚な心で、礼儀と慎みを忘れずに人と接してみたらどうかな。世界中の人がみな兄弟のように君のことを慕うだろう。そうすれば兄弟がいないと嘆くこともなくなるよ」。

 

    ※参考文献
伊藤肇著「人間的魅力の研究」
P84〜85
  守谷洋著「中国古典一日一話」P77  「論語の人間学」P196
   祐木亜子訳「心に響く呻吟語」P80〜81

社会問題の解決にチャンスあり   2011.06.01

 


 1.ケインズの不況対策

 資本主義経済の分野で、対照的な理論を唱えた2人の学者の不況対策をご紹介します。1人目はケインズ。経済は需要(買う)と供給(売る)のバランスによって成立するものと考えます。単純に表現すると、次の2つの算式で景気を占うことができます。

 

 ①好況 = 需要(買う) > 供給(売る)     ②不況 = 需要(買う) < 供給(売る)

 

 不況時には消費が抑えられるため、②の傾向が強くなります。そこで消費者の代わりに「国が公共事業などで需要(買う)側の役割を果たしましょう」。これがケインズの不況対策です。日本はこの政策に偏ったおかげで、巨額の財政赤字を抱えることになりました。

 

 2.シュンペーターの不況対策

 ケインズは公共事業などによって、市場のお金の流通量を増やして、需要を増やそうという考え方です。つまり需要(買う)側から働きかける方法を採ります。2人目のシュンペーターは、反対に供給(売る)側、つまり企業から働きかける方法を採ります。

 

 シュンペーターは、「景気にはもともと波があるから、不況そのものは避けられない。そこから抜け出すためには企業が起業家精神を発揮し、イノベーション(革新)によって新たな需要を作り出さなければいけない」と述べています。

 

 国や地方自治体はケインズの主張に沿って公共事業を推進する。企業はシュンペーターの主張に沿ってイノベーションに挑む。この2つの役割分担を明確化させれば、深刻な不況からより早く抜け出せるのではないでしょうか。 

 

3.「経済のシュンペーター」と「経営のドラッカー」との出会い

 シュンペーターは1883年生まれです。ドラッカーの父アドルフは、当時、オーストリア・ハンガリー帝国の外国貿易省長官として若手経済学者を育てていました。その中の1人がシュンペーターだったそうです。

 

 シュンペーターの教え子には、ノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソンやトービンなどがいます。これだけでも並々ならぬ人物だったことがわかります。ドラッカーは父を通じてシュンペーターと出会い、次の3つの教訓を得たそうです。

 

 ①人は「どんなことで名を残したいのか」を自分自身に問わなければならない。 ②その答は年齢と共に変わるもの。
 ③名を残す者として最も価値があるのは、他の人を素晴らしい人に変えることである。

 

 4.シュンペーターの理論を発展させたドラッカー

 

 シュンペーターの影響を受けたドラッカーは、当時、異なると言われた2つの活動を、マネジメントという1つの枠の中に統合し体系づけました。それが「事業の目的は顧客の創造であり、そのための活動はマーケティングとイノベーションの2つである」です。

 

 両者を簡単に言うと、マーケティング戦略とは「既にある顧客ニーズ」に対応する戦略です。同業他社との競争に利用されます。一方のイノベーション戦略とは「新たな顧客ニーズ」を創り出すための戦略です。同業他社とは異なる市場を開拓します。

 

 現在、日本国内では既存市場の収縮が進んでいます。従来と同じようにマーケティング戦略を進めると、当社の売上は一時的に増えますが、市場全体の収縮を止めることができません。マーケティング戦略だけでは根本的な問題解決は図れなのです。

 

 5.不況脱出の責任をどこに求めるのか

 シュンペーターの主張によれば、不況脱出の責任は企業にあります。そもそも陳腐化した製品やサービスを企業が供給し続けたことに不況の原因がありイノベーションによって新たな価値を生み出すことが、企業の責任でもあり社会貢献でもあるのです。

 

 成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔をあげ、目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える。

 

 成功の鍵は責任である。自らに責任をもたせることである。あらゆることがそこから始まる。責任ある存在になるということは、真剣に仕事に取り組むということであり、仕事にふさわしく成長する必要を認識しているということである。

 

 6.社会的な貢献と責任の追求が、企業に成長をもたらす

 前述の言葉は、ドラッカーが個人の成長について述べたものですが、企業についても同じことが言えます。社会的な貢献と責任を自社に問う。当社は社会に対して、どんな貢献ができるのか。そのためにどんな責任を負うのか。この追求が企業の成長につながります。

 

 社会について何かを問う場合は、自分自身に問う場合以上に、人間性を磨かなければいけません。自己の利益のみに走れば、短期的な成功に終わるばかりか、社会に対して不利益を残すことになります。ドラッカーは自己啓発について次のように述べています。

 

 自己啓発とは、能力を修得するだけでなく、人間として大きくなることである。責任に重点を置くことによって、より大きな自分を見るようになる。うぬぼれやプライドではない。誇りと自信である。一度身に付けてしまえば失うことのない何かである。

 

 7.自社が行うべき社会貢献を発見する方法

 組織に対する自らの貢献を問うことは、いかなる自己啓発が必要か、いかなる知識や技能を身につけるか、いかなる強みを仕事に適用するか、いかなる基準をもって自らの基準とすべきかを考えることである。

 

 これも個人向けに述べられた言葉ですが、企業向けに置き換え、さらにわかりやすい言い回しにすると・・・

 

 自社が行うべき社会貢献を発見するためには、次のことを考えてみよう。①どのようにして社内全体の人間性を高めるべきか。②どのような知識や技能を身につけるべきか、そして、どのようにしてそれを高めるべきか。③当社にはどんな強みがあり、どの強みを事業に適用すればよいのか。④各目標に対して、何を自社の基準にし、どのレベルに設定すればよいのか。

 

 8.社会問題の解決に目を向ける

 社会の問題を事業上の機会に転換する最大の機会は、新技術、新製品、新サービスではなく、社会の問題そのものの解決、すなわち事業としての社会的イノベーションにある。成功を収めた企業の秘密は、そのような社会的イノベーションにあった。

 

 「社会問題の解決そのものに、事業上の最大のチャンスがある」と、ドラッカーは述べています。しかもその解決は社会貢献につながります。社会全体を見渡せば、解決すべき問題など山ほどあります。その中から当社ができることとは何かを考えてみることでしょう。

 

 ドラッカーの言葉に触れると、社会に対する当事者意識を呼び起こすことができます。そこから健全なエネルギーが湧いてきます。逆に社会の出来事を他人事のように扱っていると、やがて当事者意識が失われると共に、無力感に襲われるのではないでしょうか。  

 

 

 

  ※参考文献
 辛坊治郎・正記共著 「日本経済の不都合な真実」    P116〜128
 中野明著 「シュンペーターの経済学がよくわかる本」  P14〜51、126、142、146
  P.F.ドラッカー著 「経営の哲学」         P60〜63、212
  P.F.ドラッカー著 「仕事の哲学」          P17、21、45、48 

 

好調時に最悪の事態を想定する  2011.05.09

 
  1. 極めようとすると幸福は不幸に転ずる

 愚者はただ其の極まるを楽しみ、智者は先ず其の反らんことを懼る。

 (ぐうしゃはただきわまるをたのしみ、ちしゃはまずそのかえらんことをおそる)。愚かな者は今の幸福を当然のものと考え、その上にあぐらをかく。知恵ある者は今の幸福を有難いものと感謝し、これが不幸に転じないように注意する。

 

 呻吟語の一節です。満ちた月が欠けるように、物事は極まると反対に転じます。だから幸福を長続きさせるためには、自分を制して節度のある生活を心掛けること。これは中国古典を読んでいると、しばしば目にする戒めではないでしょうか。

 

  2. 果てしなく成功を求める米国式成功本

 反対に米国式成功本を読むと、「あなたには無限の可能性がある」、「今の自分に満足してはならない」、「常に今よりも上を目指すべきだ」と書かれています。モチベーションを高めるために、物質的欲望を否定してはならないとも書かれています。

 

 もし日本人が日本で商売をするに当たり、米国式成功本を真似たらどうなるのでしょうか。店舗を増やし、高級車を乗り回し、豪邸を建てることでしょう。一時的に大きな成功を収めたとしても、数年も待たずして倒産危機を迎えることになります。

 

 かつて湯水のごとく浪費した人も、倒産すれば1万円を稼ぐのにさえ苦労します。中国古典に目を通し、自分を戒めていれば、このようなことにはならなかったと思われます。ところでこの間違いの原因は一体どこにあるのでしょうか。

 

  3. 米国式成功本が日本で通用しにくい理由

 米国社会は失敗しても容易に敗者復活をなし遂げることができます。おかげでチャレンジャーが次々と現れ、国家全体も活気に満ちあふれています。しかしその代償として人々は短期的成功を求めるようになります。

 

 逆に日本は米国と比べ敗者復活が難しい国です。大きな失敗は許されませんので長期的成功を目指さなければいけません。だから大きな成功よりも、「失敗を避ける」「あるものを失わない」と言った経営を重視します。

 

 このように米国と日本では社会構造が異なります。米国式成功本は米国社会を背景に書かれたものですから、日本社会でそのまま実践すれば、当然、支障が出てくるはずです。ところで米国式成功本には、もう1つ注意点があります。 

 

  4. 米国の愚民政策は本当なのか

 真偽は定かでありませんが、第二次世界大戦後、米国は日本に対して「3S政策」を採ったと言われています。3S政策とは、スポーツ、セックス、スクリーン(映画)の各産業を盛んにして、日本人を愚かにさせる政策のことです。

 

 3S政策のように国民の思考力を低下させ、自分たちの望みを実現させやすくする政策を「愚民政策」と呼びます。同様に米国式ビジネスの中にも、快適さによって相手の思考力を低下させ、自己の利益のために顧客をコントロールする傾向がないとも言えません。

 

 米国式成功本を読むと、自分には無限の可能性があるような錯覚を起こします。たとえば、ロバート・キヨサキ著の「金持ち父さん、貧乏父さん」。心地よい刺激を受けますが、この本のおかげで判断力を鈍らせ、大金を失った人も少なくないでしょう。 


 

  5. 価値観の誘導に注意し、快適さに疑問を持つ 

 行きすぎた資本主義には、「過剰な消費が続かない限り経済が維持できない」という問題が潜んでいます。米国の政策も成功本もこの延長上にある可能性があります。この目的を果たすためには、消費者を同じ価値観へ導く必要があったのではないでしょうか。

 

 価値観を大別すると「損得」「好き嫌い」「善悪」に分かれます。米国式成功本は「損得」に訴えかけます。ただし「損得」の道は険しく、一度深く足を踏み入れれば、その道の熟練者(巧妙な者、狡猾な者)の餌食になる可能性が高いと言えます。

 

 また「好き嫌い」を中心に物事を判断する場合も、被害者になる確率が高いものです。快適な営業トークをマスターした者から見て、格好のターゲットになるのではないでしょうか。被害を避けるためには、過剰な快適さに対して、日頃から疑問を抱くことでしょう。  


  6. 3つの価値観をバランスよく生きる

 若し言々耳を悦ばし、事々心に快ければ、便ち此の生を把りて鴆毒の中に埋在せしむるなり。

 

 (もしげんげんみみをよろこばし、じじこころにこころよければ、すなわちこのせいをとりてちんどくのなかにまいざいせしむるなり)。耳に心地よい言葉ばかり聞いたり、快適なことばかり起きるとしたら、それは人生を毒に浸しているようなものだ。

 

 これは菜根譚の前集5。快適さを好む人に対する警告と捉えてもよいかもしれません。感情的な人は騙されやすいものです。だからと言って損得の道に走ったとしても、熟練者に騙されるのが落ちです。日頃から善悪で判断する習慣を身につけることでしょう。

 

  7. 黒字のときこそ赤字の備えを怠らない

 君子は只だこれ逆に来たれば純に受け、安きに居りて危うきを思う。

 

 (くんしはただこれぎゃくにきたればじゅんにうけ、やすきにおりてあやうきをおもう)。立派な人は苦しいときでも平常心を失わず、平穏無事のときでも不運なときの備えを怠りません。これは菜根譚の前集68です。

 

 逆から読んだ方が理解しやすいのではないでしょうか。つまり順調な時に準備を怠らなければ、不順なときが来ても平常心を失わないということです。最悪の事態を想定する経営者は、危機が訪れるはるか手前で気づき、素早く対応することができます。

 

  8. 出会いは別れの始まり、楽しみは悲しみの始まり

 最後は白楽天の「夢遊春詩に和す」の一節で締めくくりましょう。

 

 合うは離れの始め、楽しみは憂いの伏す所。

 

 (あうはわかれのはじめ、たのしみはうれいのふすところ)。人と出会えば必ず別れの時が訪れます。だから出会いは別れの始まりだと言えます。また楽しい時もいつか終わりを告げ、もの悲しい時が訪れます。だから楽しみは悲しみの始まりだと言えます。

 

 きれいな言葉の中に真実がさりげなく語られています。物事には必ず終わりがあること。それに気づかなければ今あるものの価値もわかりません。始まりと同時に結末に想いを巡らせる。古人の言葉に学び、私たちもこのような想像力を備えたいものです。

 

 

 

 

 ※参考文献

 守谷洋著「中国古典一日一話」P180  「菜根譚」P23、85  「中国古典の名言・名句三百選」P8

ドラッカーと中国古典   2011.05.02

 1. 和魂洋才(わこんようさい)とは何か

 和魂洋才とは、日本人古来の精神を大切にし、そこに欧米の技術を採り入れ、これらを調和させながら発展させていという考え方です。経団連会長を務められたキヤノンの御手洗富士夫(みたらいふじお)さんも提唱されていました。

 

 現在の国際ルールは米国の意思が大きく反映されています。今後しばらくは世界覇権国の座を死守することでしょう。この状況が続く限り、技術面は米国に学ぶのが妥当だと思われます。しかし精神面はどうでしょうか。

 

 たとえば2008年の世界金融恐慌。主たる原因は米国にあるにもかかわらず、一言も謝罪する気などありません。日本人としては理解不能ですが、米国人の常識では何も悪くないのでしょう。

 

 2. 日本人の強みは、日本人の心の中にある

 国民性の違いは、文化、歴史、社会の違いなどから生じます。その差は一朝一夕に埋まるものではありません。また精神面ではむしろ他国の人たちの方が豊かであったり幸福である可能性があります。

 

 これらを理解せずに、日本人が表面的に米国人を真似たとしても、精神的安定など得られません。日本人は日本人の心を大切にした方が物心共に恵まれる。これが和魂洋才の趣旨ではないでしょうか。

 

 日本人の精神は、中国3大宗教である儒教、仏教、道教の影響を受けたと言われています。精神的に不安定になったら、そのルーツである中国古典に精神の拠り所を求める。論語などを読んで心を落ち着かせるという方法も考えられます。

 

 3. 和に精神を学び、洋に技術を学ぶ

 欧米のルールが適用される国際社会で、日本人が精神的バランスを維持しながら、経済競争を生き抜いていくためには、和と洋をうまく使い分け、物質的にも精神的にも充実した生き方を目指す。この和魂洋才が理に適っていると思われます。

 

 このコーナーの狙いは「中国古典を学んで心を落ち着かせ、ドラッカーを学んで経営技術をマスターする」にあります。精神面では日本人らしさを深めよう。技術面では過去に執着することなく、新たなものを採り入れていこう・・・です。

 

 「今月のドラッカー」から「ドラッカーと中国古典」と改め、再スタートを切ります。私たちは豊かさを求めますが、求めすぎるとすべてを失いかねません。最後に論語(先進篇)から、私自身の座右の銘をご紹介することにしましょう。

 

 4. 過ぎたるは猶お及ばざるがごとし

 子貢問う、「師と商と敦か賢れる」。子日く、「師や過ぎたり。商や及ばず」。日く、「然らば則ち師愈れるか」。子日く「過ぎたるは、猶お及ばざるがごとし」。

 

 (しこうとう、「しとしょうといずれかまされる」。しいわく「しやすぎたり。しょうやおよばず」。いわく、「しからばすなわちしまされるか」。しいわく「すぎたるは、なおおよばざるがごとし」)

 

 「子張と子夏、何れが優れていると思われますか」。弟子の子貢にたずねられ、孔子は次のように答えました。「子張は行き過ぎだが、子夏は足りないなあ」。再び子貢がたずねました。「行き過ぎの子張の方が優れているということですね」。「いや行き過ぎは、足りないのと同じようなものだよ」。

 

 

 ※参考文献

 守谷洋著「論語の人間学」  P180

新規事業の進め方   2011.04.04

 1.東日本大震災で感じたこと

 2011年3月11日、午後2時46分、東日本大震災が起きました。連日、報道される映像を見ましたが、未だにこの悲劇が、現実に起きたとは思えません。まるで悪い夢を見ているような気がします。

 

 この震災によって多くの人命が奪われました。たとえ命が助かったとしても、家族や友人、家や職場を失い、絶望の淵に立たれている方も少なくないでしょう。しかし暗いニュースの中にも、明るい材料を見つけることができました。

 

 それは日本全国、多くの人が支援の手を差し伸べていること。外国に比べて略奪が少ないこと。自衛隊をはじめとする人たちの勇気ある救援活動などです。日本人もまだ捨てたものじゃない。今回の震災を通じて、私はこのように感じました。

 

 2. 新たな挑戦に失敗はつきもの

 被災地の復興を支援するためには、他の地域の人たちが今まで以上に頑張らなくてはいけません。ところが既存の国内需要は、震災前から縮小の傾向にありました。そこに求められるものとは、一体、何でしょうか。

 

 それは「新たな挑戦」だと思います。海外進出、新製品の開発、新規事業への参入、業態の変更など、今まで経験したことのないものへの挑戦が必要になります。ところが新たな挑戦に失敗はつきものです。

 

 だからと言って失敗を恐れていると、ジリ貧のまま終わりを迎えてしまうかもしれません。新たな挑戦に向かって積極的に進むためには・・・「正しい失敗の仕方」をマスターする必要があるのではないでしょうか。

 

 3. 5つの「失敗との関わり方」

 

 A.知識や情報から学んで、その後の失敗を回避する

 B.他人の失敗から学んで、その後の失敗を回避する

 C.小さな失敗から学んで、その後の失敗を回避する

 D.大きな失敗から学んで、その後の失敗を回避する

 E.致命的な失敗によって、再起不能になってしまう

 

 私は失敗との関わり方を5段階に分けて考えます。自社が無傷のまま失敗を回避できるのはAとBのケースです。AはBよりも汎用性があります。たとえば賢人の言葉には無限の拡がりを感じます。しかし、あくまで机上のものに過ぎません。

 

 一方のBは現実に起きたことです。しかし失敗パターンは各人のパーソナリティーによって異なるため、参考にならないものも少なくありません。日頃からAとBの何れからも学ぶ習慣を持のがよいと思います。

 

 4. 致命的な失敗だけは絶対に避けよう

 機会の追求に失敗して多少の資金と労力を失うリスクは、負えるリスクである。失敗したならば存続できないほど多額の資金がかかるのであれば、もともとその機会は、追求してはならない機会である。

 

 これはドラッカーの言葉です。いくら失敗は成功の母と言われても、E(再起不能)だけは絶対に避けるべきです。誰もが平常時はそう思っているのですが、いざ当事者になると、終着駅まで突き進んでしまいます。なぜでしょうか。

 

 それは進むよりも退く方が勇気がいるからでしょう。退くためには、何かを失う勇気が必要になります。勇気には決断力が伴うものですが、倒産への恐怖心は経営者の決断力を鈍らせます。これが原因で手遅れになってしまうのではないでしょうか。

 

 5. 小さく始めて大きく育てる

 それではD(大きな失敗)はどうでしょうか。再起不能にならないにしても、時間とお金に大きなロスが発生します。もっと早く退かなければいけません。できる限りC(小さな失敗)に留めておくのが賢明だと言えます。

 

 そのためには、最初から大きく始めないのがコツになるでしょう。小さなところから始めて様子を見る。小さな失敗を繰り返しながら、そこから学び、状況を見ながら規模を増やしていく。これが正しい進み方になるのではないでしょうか。

 

 問題は「見切りをつけなければいけないケース」です。決断が遅れるにつれ、傷口を大きくしてしまうからです。株で言えば「損切り」。決断力に自信のない方は、あらかじめ期限や予算、達成目標を定めておかれるとよいでしょう。

 

 6. 決断力=洞察力+実行力

 事業はタイミングが命。状況を見ながら、進むのか、退くのか、毎日がこの決断の繰り返しです。中には企業生命に関わる決断も含まれているでしょう。倒産を免れるためのポイントは、退くタイミングを間違えないことです。

 

 素晴らしい決断力の持ち主と言えば、名古屋出身の丹羽宇一郎さんです。社長就任1年目から伊藤忠商事の不良資産を積極的に処理。一時は大きな赤字を計上しましたが、この英断によって、奇跡のV字回復を成し遂げることができました。

 

 丹羽さんがここまで大胆な決断を下すことができたのは、その先にある結果を予測できたからではないでしょうか。決断という行為は、やみくもに行うべきではありません。確かな読みに実行力が伴って、初めて成功するものでしょう。

 

 

 ※参考文献

 P.F.ドラッカー著「変革の哲学」 P115

 丹羽宇一郎著「人は仕事で磨かれる」 P66〜83

事業規模を間違えない  2010.12.08

 1.事業規模拡大こそ経営の鬼門

 「企業にとって第一の責任は存続すること」だとドラッカーは述べています。この存続を脅かす主な要素の1つに「事業規模の誤り」があります。実は「大きくなりすぎた」ことが原因で倒産したり、経営危機を迎える企業が少なくないのです。

 

 なぜ大きくなりすぎてしまうのか。それは「縮小するよりも拡大する方が簡単だから」です。極端な言い方をすれば、資金さえ調達できれば、そのお金を使って店舗や設備、従業員を増やすだけ。実は事業規模拡大は誰にでもできることなのです。

 

 たまたま好成績が続くことがあります。経営者なら誰もが一度は経験することです。ここで設備や従業員を安易に増やしてしまうと数年後に業績が下降したとき、固定費の重みで耐えられなくなります。よくある倒産パターンではないでしょうか。

 

 2.拡大によって発生してしまう問題

 事業規模を拡大すると経営が難しくなります。具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。ドラッカーは「採用すべき構造、戦略、行動が違ってくる」、さらに「量の変化ではなく、質の変化になる」と述べています。

 

 たとえば「戦略」を例にお話をすると、事業規模の拡大に伴い自社が取るべき戦略を変えなければいけません。それは小規模だった頃の戦略を「量」的に増やせばよいと言うものではなく、「質(方法)」を変えなければいけないということです。

 

 さらに「変化は連続的なものではなく、一定点で飛躍的な変化を起こす」と述べています。従業員数の場合「15名を超えると管理方法を変えなければいけない」と言われますが、これもドラッカーの言う一定点なのかもしれません。

 

 3.規模に合うシステムが必要になる

 続けて「組織が大きくなると内部構造が専門化し複雑になる」、「規模の増大は情報を流し方向づけを行い成果のフィードバックを行うなど、組織内部を活かすために多くのエネルギーを必要とする」。

 

 事業規模を拡大すると組織内部の問題が複雑かつ大きくなります。製品やサービスの品質にバラツキが出てきます。従業員に関する問題が激増します。経営者はこれらの問題にエネルギーを消費させられ、経営が傾いてしまうこともあります。

 

 これらの問題を解決するためには、拡大した規模に合うシステムが必要になります。反対に事業規模が小さいのに、大企業並みのシステムを用いると、小企業としてのメリット(下記9)を活かせなくなります。

 

 4.時代によって変化する適正規模 

 適正規模は「業種によって異なる」とドラッカーは述べています。もし個人で経営する生命保険会社があったとしたら、満足な保証などできません。もし近所の町医者が大型病院だったとしたら、軽い風邪でさえ数時間も待たされます。

 

 ただし難しいのは「適正規模は時とともに変わっていくこと」です。たとえば製造業。かつては「大きいほどよい」の典型でしたが、現在はどうでしょうか。大企業は海外進出、家族経営も生き延びています。最も苦しんでいるのは固定経費のかさむ中企業でしょう。

 

 また「最適規模は最大規模のはるか下にある」。1人で管理できる人数は最大で15人と言われていますが、もし社内の管理者が社長さん1人の場合は、従業員数5〜10名以下に抑えられた方が、収益性の高い経営が実現すると思われます。

 

 5.縮小するときのリスク

 次は事業規模の縮小。当社が事業規模を縮小したい時、周囲はどんな状況なっていると思われますか。たぶん「不景気」ではないでしょうか。この前提をもとに、「事業を拡大したい時期」と「事業を縮小したい時期」の比較表を作りました。 

区  分  ①当社の業績 ②景気 ③銀行融資 ④人 ⑤設備
1.事業を拡大したい時期

上がっている

易しい経営

よい

よく売れる

受けやすい

余分な支出

必要人員

採用しにくい

必要設備

価格が高い

2.事業を縮小したい時期

下がっている

難しい経営

悪い

売れにくい

受けにくい

資金繰り難

余剰人員

解雇しにくい

不要設備

売れにくい

 通常、上段①②の状況で事業を拡大しますが、③〜⑤で無駄な出費が発生します。次に事業縮小時には下段①〜⑤の状況になります。不要な設備を処分しても二束三文。従業員を退職させたくても再就職先が見つからず、経営者として難しい判断に迫られる訳です。

 

 しかも、その作業を、売上も伸びない、支払いに追われている、銀行から融資も受けられない・・・といった困難な状況の中で進めなければなりません。事業規模を拡大するときは、縮小する時のリスクについて必ず考慮する必要があります。

 

 6.縮小を避けてしまう理由

 「不適切な規模の組織には、肥大化した分野、活動、機能が必ずある」とドラッカーは述べています。つまり努力や投資の割に儲からない。他の分野の利益を吸い取ってしまう分野があります。これによって企業全体が不振に陥ります。

 

 この問題の解決に向けて「企業はさらに売上を増やそうとするが、収入は間違った規模を支えることができない」、これがドラッカーの考えです。つまり規模に間違いがあるのに、売上増加によってさらに規模を増やしてはならない言うことです。

 

 中小企業の社長さんは人情家が多いため、なかなか解雇に踏み切れません。事業を増やすことによって雇用を守ろうとします。しかし、根本的な問題が「規模」にあるとき、さらにそれは事態を悪化させることになります。

 

 7.事業規模を縮小するための方法

 事業規模を縮小させるための方法について、ドラッカーは3つ挙げていますが、最も成功しやすいものからご紹介します。1番目は「売却と整理」。肥大化した事業規模の誤りを認めて、他の企業に事業の一部を売却することです。

 

 2番目が「M&Aによる合併と買収」。収益性の見込める分野については、手持ちのものと合わせて完全になるように、それを手放したがっている相手を見つけ出すこと。不要な分野はそれを求めている相手を見つけ出して手放すことです。

 

 3番目は「事業の性格を変えること」。しかし「これは成功の確率が低い」とドラッカーは述べています。成功の見込み、成功によって事態をさらに悪化させないか、永続的な成功に結びつくかを検討しなければいけません。

 

 8.自社の強みを発揮できるニッチはどこに?

 「大企業、中企業は小企業に依存している」。つまり大企業も中企業も、実は下請け企業に頼っています。小企業が担当している細かい業務について、大企業はノウハウも持たなければ、そのリスクを背負いたくもないと考えていることでしょう。

 

 さらに、「小企業が生存できるのは、巨大企業との競争にさらされることのないニッチ(隙間という意味=小さな市場)のみである。そのニッチにおいても際立った存在にならなければいけない」。と、ドラッカーは述べています。

 

 そのためには「有利に戦うことのできるニッチを見つけること」。例として、地理や嗜好など市場に関わるニッチ。サービスの卓越性に関わるニッチ。技術に関わるニッチなどが挙げられています。

 

 9.小企業のメリットをフルに活かそう

 「規模は戦略に影響する」。逆に「戦略は規模に影響する」とドラッカーは述べています。つまり規模と戦略はそれだけ密接な関係にあるということです。つまり小さな規模に応じた戦略を採ることが、トップマネジメントにとって重要だと言えます。

 

 それでは小企業のメリットとは何でしょうか。それは「小さいだけでなくシンプルであるために、反応が早く機敏である」。「資源を重点的に投入できる」です。これらは大企業のデメリットになります。

 

 反対に、大企業のメリットとは何でしょうか。それは「長期にわたって資源を投入できる」。「長期の研究プロジェクトを手がけることができる」です。これらは小企業のデメリットですから、あえて不利な選択をしないように注意したいものです。

 

 10.現在の規模から戦略をスタートさせる

 事業規模を拡大するのは簡単なことです。しかしそれに伴いマネジメントが複雑になり、倒産リスクも高まります。さらに縮小には困難が伴うことを覚悟しなければなりません。事業規模拡大はくれぐれも慎重に行うべきでしょう。

 

 近年はIT革命により小企業のデメリットが解消されつつあります。たとえば家族経営なら労働基準法を気にする必要もありません。日本経済が下り坂に入った今、リスクの少ない家族経営も悪くないでしょう。ただしそのメリットを活かすことが求められます。

 

 小企業の多くは小企業のまま終わりを迎えます。中企業になることさえマレです。従って現在の規模を前提に何をすべきかを考えることが重要です。まずは自社規模のメリットからスタートする。ここに活路を見い出すための第一歩があるのではないでしょうか。

 

 

 ※参考文献   

変革の哲学6491.jpg
経営の哲学6499.jpg
マネジメント6591.jpg

 

 

 変革の哲学    P192~193

 

 

 

 

経営の哲学     P118

  

 

 

 

 

 マネジメント(下)    P51~111

コストダウンと生産性向上 2010.11.01

  1.価格引き下げの必要性 

 深刻な不況が続いています。価格を引き下げなければ売れません。しかし、一方では「中小企業は低価格戦略を採ってはいけない」という説もあります。理由は「価格競争では大企業に勝てないから」らしいです。

 競争戦略の権威であるマイケル・E・ポーターは、「成熟期に価格競争を受け入れないのは危険だ」と述べています。価格引下げのノウハウを獲得するためにも、業績が悪化する以前から取り組むべきでしょう。

 

  2.価格を引き下げるための2つの方法 

 価格を引き下げるためには「コストダウン」と「生産性向上」の2つの方法があります。多くの企業は「コストダウン」から取り組みますが、すぐに行き詰まります。理由は小さな経費に囚われる点にあるでしょう。

 これに対してドラッカーは「最大コストに集中しなければならない」と述べています。最大コストは業種によって異なります。小売業や卸売業は仕入、製造業や建設業は仕入、外注費、サービス業は人件費でしょうか。

 

  3.コストダウンは顧客視点で進める 

 まずは自社にとって「最大コストとは何か」を知ることが先決です。決算書をご用意ください。損益計算書に並ぶ数字の中から、売上の次に大きな数字を探してみましょう。それが自社の最大コストになります。

 コストダウンを行う場合、忘れてならないのが「顧客視点」。顧客が必要とするコストは、むしろ増やさなければいけません。いくら苦しくても、ぎりぎりまで頑張らなければいけないものなのです。

 

  4.無意味なコストダウンはジリ貧を招く

 逆に顧客側から見て無駄と思われるコスト、企業側の思い込みだけで支出しているコストは即座にカットすべきです。この点を理解しないと、コストダウンが原因で客離れを起こし、業績をさらに悪化させます。

 多くの企業がコピー紙や郵便代に神経質になりますが、これらの経費は顧客に直接関係する部分でもあります。また小額であるため、労力の割に成果が上がりません。もっと他の部分に目を向けるべきでしょう。

 

  5.価格引き下げの本命は「生産性向上」 

 価格引き下げのための2つ目の方法「生産性向上」については、一部の製造業を除き、ほとんどの中小企業で取り組みが遅れているような気がします。だからこそ、まだまだ改善の余地があるとも言えます。

 「コストダウン」と「生産性の向上」。何れを優先させるかで、社内の空気も影響を受けます。製造業の場合、「材料価格を下げる」と「製造方法を工夫する」の、何れが前向きになれるかは一目瞭然でしょう。

 

  6.肉体労働を減らすこと 

 「生産性向上は肉体労働によって実現されない。肉体労働をなくす努力、肉体労働を他のものに置き換える努力によってもたらされる」、さらに「知識の結合こそが生産性向上の鍵」とドラッカーは述べています。

 この「結合」という考え方は、ドラッカーに影響を与えたヨーゼフ・アロイス・シュンペーターの理論に基づいているようです。ドラッカーよりも26歳年長、同じオーストリア生まれの経済学者です。

 

  7.シュンペーターの定義するイノベーション 

 シュンペーターは、物や資源を新しく結合させて、従来にないものを生み出していくことを、イノベーション(革新)と呼びました。イノベーションと聞くと、私たちは何か難しいものを想像しがちです。

 しかし多くの天才的な発見は、既存の知識の組み合わせに過ぎないと言われています。既にあるモノを異なる組み合わせにしたら、新たな価値が生まれないだろうか。本来はこのように単純に考えるべきなのでしょう。

 

  8.コストダウンは量的発想? 

 知識労働者の生産性を向上させる条件の1つとして、ドラッカーは「量より質が問題であることを理解させる」を挙げています。目に見える「量」に囚われるあまり、「質」を無視する人が少なくないからです。

 だからコピー紙は裏紙を使えとか、昼間は電気を消して、暗い部屋で作業をしようなどいう発想が生まれてくる訳です。しかしそれによって「労働やサービスの質が低下する」ということに気づいて欲しいものです。

 

  9.モノではなく人でコストを見る 

 コピー紙を節約するために裏紙を使うと紙詰まりが増えます。その度に人が対応しなければいけません。節約したコピー紙以上の人件費が発生します。機械の寿命を縮めれば、さらに余分なコストが発生します。

 年収400万円、年間労働時間1800時間の正規社員の場合、その他の経費を含めると、1時間当たり約2600円のコストがかかります。その事実を把握した上で、経営者は方針を決定すべきでしょう。

 

  10.生産性向上に取り組んでいますか? 

 一方の「生産性向上」は、仕組みや方法そのものにメスを入れます。つまり頭を使わなければいけません。ただし頭はいくら使ってもタダです。企業内から肉体労働を減らし、もっと頭を使う方向へ進むべきでしょう。

 価格を引き下げるための方法は2つあります。両者は関連する部分も多いため、同時に取り組まなければいけません。注意すべきは小さなコストに囚われることなく、生産性向上を中心に計画を進めることだと思います。

 

  ※今回のまとめ

 ①価格引き下げの方法  コストダウン  生産性の向上
 ②発想の傾向  量的発想  質的発想
 ③注目するもの

 目に見えるもの

(金額・面積・時間)

量を減らす

 目に見えないもの

(効率・仕組み・方法)

質をよくする

 ④ポイント  最大コスト・顧客視点  「量」より「質」
 ⑤可能性  限界が近い  限界が遠い
 ⑥社内の雰囲気  消極的・守り・後向き  積極的・攻め・前向き
 ⑦取り組む企業  多い  少ない

  ※参考文献 

経営の哲学6499.jpg
競争の戦略6593.jpg
シュンペーターの経済学がわかる本6594.jpg

 

 

経 営 の 哲 学         P104~105

                 P 113・133

 

 

 

 

競 争 の 戦 略             P 324

 

 

 

 

 シュンペーターの経済学がわかる本 P 20~ 29

自ら進んで「昨日」を捨てること   2010.10.04

  1.「事業の目的」のおさらい 

 事業の目的は「顧客の創造」。そのために必要な戦略が「マーケティング」と「イノベーション」。ドラッカーは長きに渡り、イノベーションの必要性を訴えました、次の言葉にもその思いが表れています。

 「無名企業の多くが、今日行っているイノベーションによって明日リーダー的な地位を得る。逆に今日成功している企業の多くが、一世代前のイノベーションの成果を食いつぶしながら安逸を貪っている危険がある」

 

  2.パイの奪い合いは社会に何をもたらすのか? 

 マーケティング戦略は、既存の市場において、同業他社と争うためのもの。つまり当社の売上増加は、他社の売上減少を招きます。市場全体が衰退する状況において、社会に利益をもたらすかどうかは疑問です。

 ドラッカーは「組織が生き残るためにも、自らがチェンジ・エージェント(変革機関)となり、自ら変化を作り出せ」と述べています。イノベーションこそが新たな需要を創り出し、社会に利益をもたらすからです。

 

 3.ベテラン社員ほど変化に反発する 

 そのためには組織を変えなければいけません。「変化をチャンス」としてとらえられる組織に生まれ変わらなければいけません。ところが多くの場合、社内から猛烈な抵抗に遭います。なぜでしょうか。

 それは組織の基本である使命、価値、成果などについては、継続性が求められるからです。組織内で一定のルールに従い、長期間、過ごしてきたベテラン社員ほど、新たな変化に反発することでしょう。

 

 4.個人ではなく社会の視点から判断する

 組織分裂を回避するためには、「継続すべきもの」と「変化すべきもの」を、明確に区別する必要があります。この組織内の調和こそが、マネジメントにとって最大の関心事だと、ドラッカーは述べています。

 企業は社会に有用かつ生産的な仕事をしていると見なされない限り、存続できません。この視点から、継続すべき点と変化すべき点を区別すべきでしょう。経営者や従業員など個人的な視点ではありません。

 

 5.シャープのAQUOS戦略

 「AQUOS」ブランドを確立させたシャープは、1998年、利益の10%近くを占めるIC事業から、113億円の赤字事業だった液晶へと転換しました。このとき社内から猛烈な反発を受けたそうです。

 当時の町田勝彦社長が説得に奔走しました。イノベーションを成功させるためには、トップの大きな「熱意」が必要不可欠です。2006年、液晶事業は1020億円の利益(社内全体の55%)を生み出しました。

 

 6.チェンジ・エージェントに必要な活動 

 ドラッカーの言う「チェンジ・エージェントへの変身に必要な活動」は、次の4つです。この中で一番難しいのは①の「捨てること」です。

 ①成功していないものを組織的に廃棄する

 ②製品、サービス、プロセスを組織的・継続的に改善する

 ③成功を追求する

 ④体系的にイノベーションを行う

 

 7.廃棄のための会議を開こう

 「組織的に廃棄する」とはどんな意味なのでしょうか。それは「捨てること」をルール化し、企業として継続的に実施していく言うことです。定期的に見直す、3年経ったらやめる、改善を重ねて別物にするなど。

 捨てるべきものとは、成功していないもの、古いもの、陳腐化したもの、生産的でないもの、将来性のない仕事、生産性の低い仕事など。継続を前提に検討するのではなく、いかに手を引くかを考えましょう。

 

 8.ブルー・オーシャン戦略とは         

 競争のない独自のポジションを目指すのが、ブルー・オーシャン戦略です。オンリー・ワンのポジションはブランドを確立します。競争相手がいないため、価格競争に巻き込まれることもありません。

 通常、コストダウンを行うと、顧客側から見た商品価値が下がります。また顧客側から見た商品価値を上げると、コストアップにつながります。これら一方しか成立しないものを「トレード・オフの関係」と言います。

 

 9.バリュー・イノベーションの手順

 ブルー・オーシャン戦略の中の、バリュー・イノベーションという考え方では「コストダウン」と「顧客側から見た価値向上」の両立を目指します。このプロセスに必要なのが、次の4つのアクションです。

 ①今ある要素のうちの「何かを捨てる」

 ②今ある要素のうちの「何かを減らす」

 ③今ある要素のうちの「何かを増やす」

 ④今ある要素に新たな「何かを加える」

 

 10.自ら進んで「昨日」を捨てること

 バリュー・イノベーションにおいても、①の「何かを捨てる」が最も難しいと言われています。以上より、「新たな何か」を得るためには、「昨日」の中から何かを進んで捨てることが、成功の秘訣になると思われます。

 読者の皆さんも、社内を見渡し、不要になった商品・サービス・業務・販売方法・エリアなどを、思い切って捨てられてみてはいかがでしょうか。それが新たな発展への第一歩につながるかもしれません。

  ※参考文献 

変革の哲学6491.jpg
経営の哲学6499.jpg
シャープ6595.jpg
日本のブルーオーシャン戦略6493.jpg

 

 

変 革 の 哲 学 P 56~ 71

 

 

 

 

経 営 の 哲 学 P  200

 

 

 

 

 

シャープ「AQUOS」ブランド戦略 P 18~ 32

 

 

 

 

 

日本のブルー・オーシャン戦略   P 89~111

 

すでに起こった未来を探せ  2010.09.02

 1.予言者ドラッカー

 ドラッカーの予測はよく当たると言われてきました。1996年発行の「インク・マガジン」誌内のインタビューでは、起業家精神ナンバーワンの国について、次のように語っています。

   1位 = 韓国  2位 = 台湾  3位 = 日本? 

 14年後の現在、日本の電機業界の利益を全部合わせても、韓国の一企業サムスンの利益の3分の1に満たないそうです。日本人としては、耳を疑いたくなるような話ですが、これが真実のようです。

 

 2.日本と比べて元気な韓国と台湾

 韓国はスポーツ、芸能分野でも躍進しています。アイドルは1日15時間のレッスンを3〜5年間続けた後、デビューするためレベルが違うそうです。さらに日本進出を目指し、毎日、日本語の勉強も欠かさないとか

 起業家精神2位に挙げられた台湾はどうでしょうか。技術水準は高いが資金力に乏しい日本企業の買収に取りかかっています。中国企業との橋渡し役としても重要な地位を占めるなど、こちらも元気いっぱいです。

 

 3.起業家精神が育まれる環境

 韓国の人口は、日本のおよそ38%にあたる4830万人(2008年度)。日本企業のように国内需要に頼ることができないため、海外進出を前提にしています。台湾も同じような状況にあります。

 両者は価値観も生活習慣も異なる外国人を相手にするため、自分たちが慣れ親しんだものと訣別する必要があります。強力な起業家精神やイノベーション体質は、このような環境から生まれたのかもしれません。

 

 4.1996年時点の日本の評価

 かつて日本も元気な時代がありました。戦後の復興は世界史上、記録に残るものでしょう。前述のインタビューにおいて、ドラッカーは米国より日本を高く評価しています。その違いはイノベーションに対する認識。

 米国は「研究開発(技術)」として捉えているのに対して、日本は「体系」として捉えている。優秀な若者を集め、体系として新事業を開拓していることを評価しています。あくまで1996年時点の話ですが。

 

 5.イノベーションを体系的に捉える?

 「イノベーションを体系的に捉える」。これだけでは意味がよく分かりませんね。「そのために重要なことは何か」について、さらにドラッカーの説明を続けましょう。次の①〜③の手順になります。

 

 ①事業、人口、価値観、科学技術などを広く見渡す

 ②その中で起こった変化を、体系的な作業によって見つけ出す

 ③昨日に属するものを捨てる

 

 6.「すでに起こった未来」を探せ

 話を元に戻すと、ドラッカーの予測はよく当たるようです。しかし、ご本人は「予測」そのものは困難である。それよりも現在をマネジメントし、未来を自ら作り出せと述べています。 

 現在、目前で起きていることの中には、「すでに始まった未来」が紛れていますいち早く気づけば、あらかじめ商品やサービスを準備することによって、消費者ニーズを企業側がリードすることも可能です。

 

 7.人口の変化から何が見えるのか

 「すでに起こった未来」は組織内部ではなく、外部にある社会、知識、文化、産業、経済構造の変化だとトラッカーは述べています。確実性の高いものとしては「すでに起こった人口の変化」。

 人口の増減や年齢構成は、労働力、市場、法律、社会などに大きな影響を及ぼします。例えば、現在の出生率を見れば、6年後の小学校、12年後の中学校、それに関わる業界の事情を占うことができるでしょう。

 

 8.すでに起こった「恐ろしい未来」

 競争戦略の世界的権威であるマイケル・E・ポーターと、ハーバード大学ビジネススクールで、人気を分かち合うクレイトン・クリステンセン教授の理論に、「破壊的イノベーション」というものがあります。

 簡単に言うと、価格も品質も低い商品が、従来の顧客層のさらに下層から支持を拡げ、やがて市場を支配すという内容です。破壊的イノベーションは、どの業界でも起こる危険性がありますので注意が必要です。

 

 9.回転寿司から何を学ぶのか

 例えば「回転寿司」。「あんなものは寿司じゃない」と、当初は多くの人々が非難していました。しかし今や大盛況。従来型の寿司店が、一体どれだけ閉店に追い込まれたことでしょうか。ポイントは以下にあるようです。

 

回転寿司店は従来の顧客層より下からスタートした。従来店は既存の顧客層しか見ていなかったため、回転寿司を別モノとして軽視していた。

 

②回転寿司店は従来店にはない「家族団らん」という新たな価値を提供し、これが社会の方向性とマッチしたため、支持層を増やしていった。

 

回転寿司店は品質を上げ価格帯を拡げ、顧客層をじわじわと上へ拡大していった。同時に従来店は下層から顧客を失っていった。

 

④回転寿司店と従来店の品質の差が縮んだ今、従来店はコストダウンのノウハウを持たないため、コストパフォーマンスの点で太刀打ちできない。

 

⑤多くの従来店が閉店に追い込まれる一方、超高級店と回転寿司店の二極化が進む。回転寿司店の中でも熾烈な競争が繰り広げられる。

 

 10.マネジメントの本質は起業家精神によるイノベーション

 マーケティング戦略は、既存の市場で同業他社と競争するために威力を発揮するものです。しかし、それだけでは組織全体の硬直化を招くと共に、縮小する既存市場の中で衰退していくしかありません。

 

 今、企業にとって必要なものは、「起業家精神によるイノベーション」だと思われます。個人も社会も企業も、過去の一部を切り捨て、新たなものを採り入れていための作業方法を、基本から学ぶべきでしょう。

 

  ※参考文献 

仕事の哲学6597.jpg
変革の哲学6491.jpg
ネクスト・ソサエティ6593.jpg
ドラッカー入門6593.jpg
破壊的イノベーションがわかる本6596.jpg
絶対こうなる日本経済6597.jpg

 

 

仕 事 の 哲 学 P100~102

 

 

 

 

 

変 革 の 哲 学 P 14~ 40

 

 

 

 

ネクスト・ソサエティ P151~153

 

 

 

 

ドラッカー入門 P  75

 

 

 

 

クレイトン・クリステンセンの破壊的イノベーションがわかる本 P 1~108

 

 

 

 

 

絶対こうなる日本経済 P 35~ 36

イノベーションは起業家の道具  2010.08.03

 1.イノベーションの定義       

 イノベーションの定義について、前回は「革新」という簡単な言い方をしましたが、ドラッカーによれば、「人や物などの資源に、今よりも大きな富を生み出すよう、新たな能力を与えること」なのだそうです。平たく言ったつもりですが、わかりにくいですね。

 

 例えば、生ゴミ。以前までは、ただの廃棄物でしたが、今では肥料や燃料として利用されるようになりました。今後は、落雷や津波、台風や地震など天災のエネルギーも、イノベーションによって大きな富に変わる可能性があります。早く実現して欲しいものです。

 

 2.技術的イノベーションだけではない        

 イノベーションと言うと、つい技術的なものを想像しがちですが、最も大きな成果をあげたイノベーション、つまり社会に最も富をもたらしたイノベーションとは、「物流におけるイノベーション」であり、「人材開発におけるイノベーション」だと、ドラッカーは述べています。

 

 物流のイノベーションと言えば、アスクルアマゾン。契約農家から仕入れた産地直送の「新鮮で安全な野菜」など。一方、人材開発のイノベーションと言えば、多くの業界において、かつては熟練した職人にしかできなかった仕事を、今では入社数年でこなせるのが当たり前になりました。

 

 3.イノベーションの機会はどこにあるのか      

 ドラッカーは確率の高い順に、次の7つを挙げています。①〜④は業界や企業の内部の要因。⑤〜⑦は外部の要因です。

 

 ①予期せぬこと  ②ギャップ ③ニーズ ④産業構造の変化

 ⑤人口構造の変化 ⑥認識の変化 ⑦新しい知識の出現

 

 ここで声を大にして申し上げたいのは、「アイデア」は含まれていないということです。イノベーションと言うと、アイデアと結びつけて考えられがちですが、「アイデアはイノベーションの機会としてはリスクが大きい」と、ドラッカーも注意を促しています。

 

 4 .最も成功率が高いのは         

 イノベーションの機会として、最も成功の確率が高いのは、「①予期せぬこと」。これは、さらに「予期せぬ成功」「予期せぬ失敗」「予期せぬ出来事」に分かれます。中でも、予期せぬ成功はリスクが少なく、苦労の少ないイノベーションなのだそうです。

 

 例えば、リアップという発毛促進剤。もともとは手術で別の用途に使われていましたが、発毛効果に気づいて製品化されました。また使い捨てカイロは、乾燥剤の開発途中に発熱することがわかり、これも製品化され、今では多くの人に利用されています。

 

 5 .「予期せぬ成功」が見つからない理由       

 人生にはラッキーな出来事がたくさんあります。予想外の成果を手にすることがあります。この成功が「単なる偶然」なのか、「チャンスの芽」なのかを分析し、後者であれば追求して、より大きな成果へと結びつけていくのが、イノベーションに対する正しい姿勢だと言えます。

 

 ところが、多くの場合、「予期せぬ成功」は無視されます。なぜなら、人はそれまで長く続いたことが正しい。それに反するものは間違いだと考えてしまうからです。このような習慣によって、多くの企業が貴重なチャンスを自ら失っていることでしょう。

 

 6 .事業の目的とは何か      

 ここで原点に戻ってみましょう。企業活動が事業と認められるためには、顧客が商品やサービスと引き換えに、お金を支払わなければいけません。決定権は一方的に顧客にあります。だから、事業の目的は「顧客の創造」。つまり顧客ニーズに応えること。顧客ニーズを創り出すことです。

 

 だから、イレギュラーな注文だったとしても、小さな顧客ニーズを手がかりに、大きなニーズを探り当てる可能性があります。そのために当社の方向性が変わったとしても、何らおかしなことではありません。事業とは企業側が決めるものではなく、顧客側によって決まるものだからです。

 

 7 .「こだわり」を捨てよう

 まず「うちは○○屋」というこだわりを捨てることでしょう。それが通用したのは、物やサービスが不足していた時代。つまり生産者側の力が強く、生産者主体で市場が動いていた時代のことです。今でも、需要に対して供給量がわずかな商売であれば、通用するかもしれません。

 

 しかし、大半の業界は成熟期から衰退期。需要に対して供給量がはるかに上回るため、消費者の要望に沿って商売を進めなければなりません。うちは○○屋」とこだわっても、需要がなければ社会貢献にもなりません。時には、業種転換を迫られることさえあるでしょう。

 

 8 .機能に注目してみる        

 事業を当社の「製品」や「サービス」から考えると、供給する側の視点から抜け出すことができません。そこで「機能」に注目してみましょう。当社の製品やサービスが顧客にもたらしている「機能」に注目すると、顧客側の視点に立つことができます。

 

 たとえば八百屋。顧客に提供する物に注目すると、単なる「野菜小売業」に過ぎません。ところが機能に注目すると、「安全な食品を提供し、健康維持に貢献する企業」になります。野菜以外のものの販売や、料理教室の開催など、様々なビジネスチャンスが拡がります。

 

 9 .用途に注目してみる       

 既存製品の新しい用途の開発もイノベーションの1つだと、ドラッカーは述べています。例として、「冷蔵庫を凍結防止用としてエスキモーに売り込むセールスマン」を挙げています。用途を変えるためには、異なる顧客層を想定してみることです

 

 異なる顧客層とは、現在、顧客ではない人たちのことです。ノン・カスタマーと呼ばれます。前回、お話しした任天堂のWiiは、従来までの顧客であるゲーム少年だけではなく、ノン・カスタマーのお年寄りや大人を想定しました。用途もマニアックなものから、気軽なものに変わりました。

 

 10 .経営者にとって、イノベーションとは何か    

 イノベーションについて、ドラッカーは「起業家に特有の道具であり、変化を機会として利用するための手段だ」と述べています。つまり、社会の様々な変化をチャンスとしてとらえ、これを積極的に利用するための道具がイノベーションだと言うことでしょう。

 

 さらに「変化を利用する者は、激しい競争に直面することがほとんどない。他の者たちが相変わらず昨日の現実にもとづいて仕事をしているからである」。成熟した市場の中で競争に明け暮れ、社会全体が疲弊した今こそ、各企業にイノベーションが求められていることでしょう。

  ※参考文献

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マネジメント6591.jpg
イノベーションと企業家精神6591.jpg
戦略の見える化6494.jpg

 

経 営 の 哲 学 P 60~63

           P 95

 

 

 

 

変 革 の 哲 学 P 91・93

          P127・133

          P136~141

          P174 

 

マネジメント ・ 上  P 82

 

 

 

 

 イノベーションと企業家精神  P 16

 

 

 

 

  戦略の見える化 P 54~ 68

事業の目的は「顧客の創造」  2010.07.02

  1.事業の目的は「利益」ではない

 事業の目的とは何か。このような問いに、多くの人は「利益」と答えられるでしょう。しかしドラッカーは、利益には次の4つの機能があるが、目的ではないと述べています。詳しくは、過去のブログ「コスト削減⑨コスト削減の最終目的 20100126」をご覧ください。

 

 ①成果の判定基準・・・・・・・過去の業績に対する評価 

 ②将来のリスクに対する保険・・「将来の不安」のために使う 

 ③労働環境改善のための原資・・「将来の発展」のために使う 

 ④社会サービスと満足の原資・・社会の充実のために使われる

 

  2.「利益」を目的とする場合の弊害

 企業にとって第一の責任は、存続することです。「利益」はそのために必要なもの。だから「事業の目的は利益」と考えがちですが、その弊害について、ドラッカーは次の点を指摘しています。

 ①従業員の頭の中で「自分の利益」と「企業の利益」が対立する 

 ②目先の利益を求めるあまり、将来の利益を犠牲にする

 

 これらを理由に、利益計画は「最大利益」ではなく、「必要利益」に基づいて作成すべきとも述べています

 

3.なぜ「顧客の創造」が目的なのか

 企業が存続するためには「利益」。その利益を生むのは一体誰なのか。もうおわかりですね。顧客がいない限り「利益」は生まれません。いくら素晴らしい商品でも、人ひとりいない山の中では売れません。だから、事業の目的は「顧客の創造」だとドラッカーは述べています。

 

 「顧客の創造」と言うと、何だか難しそうですが、「顧客のニーズに応える」または「顧客のニーズを新たに作る」と考えることにしましょう。前者は現在の市場、後者は将来の市場をターゲットにしています。ここがポイントになりますので、ぜひ憶えておいてください。

 

  4.「顧客の創造」のために必要な2つの方法

 顧客を創造するためにはどうすればよいのか。ドラッカーは「マーケティング」と「イノベーション」の2つの方法を挙げています。「マーケティング」は現在の市場、「イノベーション」は将来の市場をターゲットにしています。これら2つが先ほどのポイントのつづきになります。

 

 ドラッカーの定義を確認してみると、マーケティングとは、販売を不要にすること。顧客が求める製品やサービスをあらかじめ用意し、おのずから売れるようにすることだと述べています。ここで言う顧客とは、現在、市場にいる顧客のことを指しています。

 

  5.従来型のマーケティング戦略が目指すもの

 世界的な権威であるマイケル・E・ポーターは、「コストリーダー戦略または差別化戦略」に「集中戦略」を加えろと述べています。「コストリーダー戦略」は、徹底した低コストにより、低価格でも利益を上げるトヨタやマクドナルドなど、大型設備投資が可能な大企業向けです。

 

 一方、中小企業は特定の部分にコストをかけて、他社にない特異性をもたせる「差別化戦略」が有効と言われています。さらにターゲットを絞る「集中戦略」を加えて、狭い市場でシェア1位を目指せ、高価格で利益を稼げと、マーケティング型の戦略理論では述べられてきました。

 

  6.マーケティングだけでは行き詰まる

 しかし、今、日本の産業の多くは、成熟期から衰退期に向かっています。競争が激化する一方、市場の収縮も進んでいます。差別化戦略と集中戦略を採用すると、ターゲットとなる市場はさらに縮まりますので、いくらその中でシェア1位を取っても、満足な利益が得られない可能性があります。

 

 また、成熟期以降の市場では、消費者の嗜好が猛スピードで変化します。もしターゲットが当たったとしても、好成績が長くつづくとは思えません。従って、不況時に、既存の市場の中から高額な商売のみに絞る戦略は、リスクが高い思われます。しかも成功する確率は低いでしょう。

 

  7.ゲーム機を例にとると

 自社の属する業界が成熟期へ進むと、同業他社と争っても、十分な利益が得られません。消耗戦の末に、力のない企業から倒産し始めます。マーケティング戦略は、現在の市場をターゲットにしていますが、市場そのものが衰退すると、あまり参考にならないのではないでしょうか。

 

 ゲーム機を例にとると、従来の顧客層の中から、特に上級者のニーズに焦点をあてた「ソニーのPS3」。リアルさやゲームの難易度などを充実させましたが、あえなく敗退しました。これは従来までの競争を前提としたマーケティング戦略だけでは、行き詰まることを意味しています。

 

  8.今、求められるのはイノベーション

 そこで必要なのが、新たな市場を創り出すイノベーション戦略です。ドラッカーの定義は難しいので、単に「革新」として、話を進めていくことにしましょう。イノベーション戦略は、将来を予測して、自ら革新を加えた商品を開発して、新たなニーズを創り出そうというものです。

 

 代表的なイノベーション製品としては、「任天堂のWii」が挙げられます。少子化によるゲーム人口減少が進む中、マーケティング戦略だけでは行き詰まることを予測し、お年寄りや大人と言った、まったく新しい顧客層のニーズを生み出すことに成功しました。

 

  9.将来に目を向けましょう

 今日のような市場の成熟期、衰退期には、現在の市場や過去の市場に囚われないことです。既存の市場をいくら細分化しても、いくらそこで1位を取ったとしても、そこに長期的な繁栄はありません。しかも1位を取ることは、確率的に難しいことを理解しなければなりません。

 

 それよりも、新たな顧客(ニーズ)を創造することです。社会の発展も、本来そこにあります。多くの著書でイノベーションを訴えつづけたドラッカーの真意もそこにあるのではないでしょうか。次回は、身近にたくさんあるイノベーションの成功例について、お話ししたいと思います。

 

  ※今回のまとめ


 ①事業の目的は「顧客の創造」

 ②①に必要な戦略

 マーケティング戦略


=既存の市場で同業他社と争うための戦略

イノベーション戦略


=新たな市場を創り出すための戦略 

 ③ターゲット市場

 現在の市場

 将来の市場

 ④目指すべき方向  現在の市場を細分化し、その中でナンバー1を目指す  将来の市場を自ら創り出し、オンリー1の存在を目指す
 ⑤ゲーム機の例示

 ソニーのPS3

 任天堂のWii

  ※参考文献  

経営の哲学6499.jpg
競争の戦略6593.jpg
日本のブルーオーシャン戦略6493.jpg

 

 

経 営 の 哲 学  P 60~ 63

         P 74~ 76

         P116~124

 

 

 

競 争 の 戦 略   P 55~ 71

          P311~358

 

 

 

日本のブルーオーシャン・戦略   P 20~ 46

                P 77~ 79

                P 83~ 88

 

今の仕事は間違っている   2010.06.09

  1.変化があって当たり前

 ドラッカーには特徴的な考え方がいくつかあります。代表的なものの1つに、「変化を当たり前のもの」としている点が挙げられます。状況は常に変化しているので、それに対応しなければならないという考え方です。 

 

 たとえば商品。最近はライフサイクルがどんどん短くなっています。消費者の嗜好の変化が激しく、大流行したかと思うと、すぐに売れなくなってしまいます。同じように仕入れていると、不良在庫の山を築きます。

 

  2.見極めるタイミングはいつなのか

 ドラッカーは述べています。たとえ順調だったとしても、次の瞬間には、もう古いものになっている。だから、成功のまっただ中にあっても、現在の仕事を否定して、改善点を見い出せということです。

 

 ただし、現実には難しい話でしょう。成功に酔いしれたい人もいれば、忙しくて余裕のない人や、それまでの疲れがどっと出てくる人もいます。そんな時に、次のことなど考えたくもありません。

 

  3.スピード感を身に付けるためには

 ドラッカーのようなスピード感を身に付けるためには、変化に対する考え方を変えることでしょう。私たちは「変化を脅威(悪いもの)」としてとらえがちですが、これが行動にブレーキを掛ける原因になっています。

 

 逆に、「変化をチャンス(良いもの)」としてとらえれば、ピンチを打開するきっかけや、今よりも飛躍する材料を、その中から見つけたくなるものです。これがアクセルの役割を果たすことになるでしょう。

 

 4.チャンスをどう生かすのか 

 変化をチャンスとして利用するためには、イノベーション(革新)によると、ドラッカーは述べています。つまり、①外的な変化が起きる → ②当社はイノベーションを行う → ③チャンスになるという流れです。

 

 たとえば、①現代人は忙しい(時間がない)+不況(お金がない) → ②10分1000円で最低限のサービスを提供する → ③理髪店として支持を得る。QBハウスを分析すると、こんな流れになります。

 

 5.市場からスタートして戦略を考える

 イノベーションを考えるにあたり、当社側から出発してはいけないと、ドラッカーは述べています。当社の製品やサービスに焦点を合わせると、新しくても奇妙なものになりやすく、無惨な結果に終わります。

 

 逆に、先ほどのQBハウスの例でもわかるように、自社の事情ではなく、市場に焦点を合わせれば大きな成果を得られます。この視点の切り換えこそが、成功と失敗の大きな分かれ目になりそうです。 

 

 6.社会問題の中にもチャンスの芽がある     

 社会問題は、企業にとって大きなチャンスになると、ドラッカーは述べています。この場合も、新技術、新製品、新サービスではなく、どうしたら社会問題を解決できるのかに焦点を合わせるべきです。

 

 新しい技術そのものではなく、どうしてその技術が社会でうまく利用されていないのか。人々は何に不便を感じているのか。そのために、当社ができることは何か。ここに注目しなければなりません。

 

 7.今の仕事は間違っている

 絶好調の最中でさえ、「今の仕事は間違っている」。これは決してネガティブな否定ではありません。さらに改善を重ねていく。新しい変化に対応していくための、むしろポジティブな否定だと言えます。

 

 現在うまくいっていなければなおさらのこと。売れない商品やサービスに見切りをつけて、新たな商品やサービスを検討すべきです。社会の変化に注目しましょう。必ずどこかにチャンスが隠れているはずです。

 

 

  ※参考文献 

仕事の哲学6597.jpg
経営の哲学6499.jpg
マネジメント6591.jpg

 

 

仕 事 の 哲 学    P100~102

                       P104~105

 

 

 

 

経 営 の 哲 学    P 33

                       P 95~102

                       P 212    

 

マネジメント・上     P386~390

不況の時こそドラッカー   2010.05.10

 利益は七難を隠す 

 景気がよいときは、経営など知らなくてもうまくいきます。お客さんが、欲しがっている訳ですから、難しいことは何もありません。当社に商品があることを、お客さんに知らせるだけで売れてしまいます。

 

 従業員も同じ。たくさん給料を支払うことができますから、不満も出ません。「色白は七難を隠す」と言いますが、利益は七難を隠します。問題は、経営者の実力不足まで隠してしまうことにあります。

 

 不況時にわかる経営者の実力

 ところが、不況になると逆になります。お客さんは「いらない」と言い出します。売上を見込んで仕入れた商品は、在庫の山として残ります。無理に売りつけると、「二度と来るな」と言われます。

 

 従業員も同じ。最低の給料さえ支払うことが困難になります。しかも世間も不況なので、再就職先もありません。これら八方ふさがりの状況を打開するためには・・・やはり実力をつけるしかありません。 

 

 不況の時こそドラッカー

 昨年末から、「マネジメントの父」と呼ばれた、ピーター.F.ドラッカーの勉強を始めました。実は、これまで何度も挫折したことがあります。正直、ピンと来なかった訳です。

 

 しかし、今回は、機が熟したのか、ドラッカーのすごさが、やっとわかってきました。実は、大変なことが書かれていました。おかげで、他の本を、ほとんど読まなくなってしまいました。

 

 ドラッカーを読み始めてよかったこと

 ドラッカーを読み始めてよかったのは、経営の迷いが吹っ切れたことです。これまで正しいとは思っていたものの、確信するにまで至らなかったものについて、背中を後押ししてくれるようになったことです。
 

 ドラッカーが語るのは、「原則」です。原則を理解すれば、目先の変化に、いちいちブレなくても済みます。激変する社会では、目先のテクニックではなく、原則が大きな真価を発揮することでしょう。

 

 「マネジメントのプロ」を目指そう

 ドラッカーに学んだ経営者は、数知れません。小さな洋服店から世界的な企業に育て上げたユニクロの柳井正さんや、世界トップクラスの企業GEの、元名物社長のジャック・ウェルチもその一人です。

 

 お二人のようなレベルにならなくても、十分、幸せに生きられることでしょう。まずは、ドラッカーの言葉を題材に「マネジメントのプロ」を目指して、皆さんといっしょに勉強をしましょう。

 

 最初から無理をしない 

 ところで、ドラッカーは決して簡単ではありませんので、名著「マネジメント」などの難しい本を、最初から選ばないのがコツです。そこで、初心者の方にお勧めなのが、次の2冊です。

 

 効率よく成果をあげたい人には、「仕事の哲学」。経営方針に迷いがある人には、「経営の哲学」。数多くの名著のエッセンスのみが、掲載されています。読むだけなら、1冊あたり2時間もかかりません。

 

 大不況をしぶとく生き残る

 読書の目標は、読み切ることではありません。良書は繰り返し読むことです。このブログは、先ほどの2冊から言葉を選びます。字数は少ないですが、内容が濃いため、何度も読み返されることをお勧めします。

 

 今後の経済予測は、決して楽観できるものではありませんが、ドラッカーから学び、一社でも多くの企業が生き残られることを、心より願っております。なお、このブログは毎月10日前後に更新する予定です。

 

 

    2010年 5月 吉日          

税理士  今井 睦明          

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税理士法人 今井会計事務所
代表社員 税理士 今井 睦明


1960年生まれ 名古屋市出身 1989〜1993年 税理士試験 法人税法、消費税法、事業税、簿記論、財務諸表論、全5科目合格
 
1994年税理士登録 日本税理士会連合会 登録番号 税理士法人3430 税理士78397 名古屋税理士会名古屋北支部所属

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